テレビで観ると、岡田幹事長は遊説焼けというよりは顔色が悪そうなので、戦線を広げすぎて過負荷になっているのではとちょっと気になりますが
自民公約「達成度20点」、民主・岡田氏が批判
(2009年7月30日(木)22:09 読売新聞)
民主党の岡田幹事長は30日、静岡市で記者会見し、2005年衆院選で自民党が掲げた政権公約(マニフェスト)の検証結果を発表した。
与党が民主党の政権公約を「財源があいまいで無責任だ」と批判を強めていることから、自民党が31日に政権公約を発表するのに先立ち、政権にありながら公約実現が不十分だったと印象づける狙いがある。
まあ、それはそうなんでしょうが、あまり相手の失点を細かくつっこむと、いざ政権をとったときに自分のマニフェストに自縄自縛になってしまう可能性もあります。 特に今回優勢が伝えられ、政権交代が現実的なものになっている状況では、主要な政策や考え方を中心にして、あまり細かい(十分には練れていない)政策は言わないほうが得策だと思うのですが。
マニフェストも若干総花的と感じる部分もあるのですが、民主党政策集になると、ほとんど陳情を受けた国会議員の役所に対するコメント並の細かいことまで書いてあります。
たとえば
[登記所の地図整備を推進]
明治初期に作成された地図をいまだに登記所の公図として用いていたりするために、登記所の地図に記された境界(筆界)と現況が著しく異なってしまっている地域が少なくありません。こうした状況を改善するため、地図整備についての国の責任を明確にし、筆界特定手続きの職権開始制度の導入など正確な登記所備付地図の整備を加速します。
こんなことまで政策に書くのかよ、というレベルですし、登記制度上の筆界と所有権の対象である境界は根拠法令も違うのでそう簡単にはいかないと思います。
(司法書士協会とかから陳情があったのでしょうか?)
細かいことは置いといて、主要な政策についても、ちょっと踏み込みすぎていて逆につっこみどころを増やしているように思います。
[地域主権の確立]
当面の5~10年間は地域主権国家の礎を築く期間とします。地域主権国家の母体は基礎的自治体(現在の市町村)とし、基礎的自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、広域自治体が担えない事務事業は国が担う、という「補完性の原理」に基づいて改革を進めます。 基礎的自治体については、その能力や規模に応じて、生活に関わる行政サービスをはじめ、対応可能なすべての事務事業の権限と財源を、国および都道府県から大幅に移譲します。例えば、人口30万人程度の基礎的自治体に対しては、現在の政令指定都市と同等レベルの事務権限を移譲します。
小規模な基礎的自治体が対応しきれない事務事業については、近隣の基礎的自治体が共同で担う仕組みをつくるか、都道府県が担うこととします。
自治体間格差を是正し、地方財政を充実させるため、地方交付税制度と一括交付金の統合も含めた検討を行い、現行の地方交付税制度よりも財政調整と財源保障の機能を一層強化した新たな制度を創設します。
話題になっている道州制よりも小さい基礎的自治体を単位とするようですが(いわゆる「道州」は「広域自治体」に当たるのでしょうか)、そこまで権限をおろしたときに現状と照らすと税収の問題や自治体職員・議会の能力とのギャップが大きいと思います。人口30万人程度と言えば、区役所や区議会に権限と事務を委譲しろということですが、現実的でないような。
また「対応可能な」という部分を言い訳として多用するようになっては困ります。
[サービサーの強引な取り立て行為への規制]
サービサーによる強引な債権回収が社会問題化していることから、サービサー法を改正し、禁止される取り立て行為を明示するとともに罰則を全般的に強化します。具体的には、①債権回収にあたって債務者の事業の継続・再建、生活の維持、保証人の資力等に留意②保証人に対する債権譲渡等の通知義務を明定③貸金業法に準じ取り立て行為に関する規制内容を明示し罰則を全体的に引き上げる――等の法改正を行います。
②はいいと思うのですが、①については一方でこんなことも
中小企業向け金融検査マニュアルの弾力化 中小企業金融の円滑化を図るために、担保に偏らずキャッシュ・フローに重点を置いた融資を推奨するとともに中小企業向け検査マニュアルの弾力化措置(利払いが行われている限りにおいては不良債権に分類しないようにする等)等を講じ、貸し渋り、貸しはがしを解消させます。
普通は事業の継続がかかっているから融資を受けるわけで、そういう企業に一旦融資してしまうと債権回収に制限が加えられるとなると、よしんば「不良債権に分類しない」としても融資自体に慎重になると思うんですけど。
また、国際会計基準(IFRS)とこの「弾力化措置」の関係も気になります。
それに上の③は、裁判所の強制執行などにも適用があるとすると、債権者側のリスクは相当高くなってしまうような。
それぞれの側面で問題があるのは分かりますが、バランスを考えたほうがいいと思います。
現時点であまり細かい政策に言及することは、政権を取ったとした場合、重要と言われる最初の半年間の「成功/不成功」のハードルを自ら高く(そして近く)してしまうので得策でないように思います。
民主党はそのへんをガチンコでやりたいのかもしれませんが、政策の選択肢は状況に合わせて選べるようにしておいたほうが国民のためにもなると思います。
そうはいっても自民党は相変わらず中でゴタゴタしているようで。
駆け込みで世襲申請 青森1区 公募経て津島氏長男
(2009年7月30日 東京新聞)
自民党青森県連は二十九日、津島雄二元厚相の引退に伴い公募していた衆院青森1区の後継候補に、津島氏の長男の淳氏(42)を擁立することを決め、党本部に公認申請した。
県連によると、応募した二十人の中から論文などの書類審査で六人に絞り、スピーチや面接による審査の結果、津島氏の長男を選んだ。
しかし、自民党は衆院選マニフェストで次々回衆院選から、配偶者や三親等内の親族が同一選挙区から立候補しても公認、推薦しない世襲制限を盛り込む方針。公募手続きを踏んだとはいえ、世襲制限導入前の“駆け込み”となる。
津島雄二氏の引退はこういう背景があったんですね。
次の選挙を待つには遠いし、世襲制限がかかる前に世襲してしまえ、ということでしょう。
なんだか自民党の方も一致団結よりも個々人の生き残りに走っているようです。