一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『賢者の戦略 生き残るためのインテリジェンス』

2015-01-31 | 乱読日記
こちらも対談本。これは手嶋龍一氏と佐藤優氏が外交と安全保障を中心にウクライナ問題、イスラム国問題、集団的自衛権などについて語っている。
前二者については『新・戦争論』と併せて読むと切り口が違っているのでちょっと立体的に読める。

興味深かったのが、集団的自衛権に関する閣議決定について。

閣議決定で「集団的自衛権」と呼んでいるものは実は個別的自衛権と集団的自衛権が重複する領域にある事例で、実際は従来の個別的自衛権の範囲を越えるものではないものを「集団的自衛権と言っているだけである、という学者の指摘。
そして同時に安倍内閣安全保障担当補佐官の磯崎参議院議員が、今回は国連の集団安全保障(に自衛隊を派遣することは行わないと決めたと報道された。

今回安倍総理の「トラウマ」に乗っかって集団的自衛権を一歩進めようと考えた取り巻きがいたのだろうが、結果的には旧来の憲法解釈に小さく開けたはずの風穴が広がるのでなく逆に狭まりつつあるのではないか。
たとえば国連の集団安全保障は「集団的自衛権」とは別物の国連加盟国としての責務であり、従来から日本国憲法の効力は及ばないとされてきたものである。
また、ホルムズ海峡の国際航路帯はオマーンの領海を通っており、領海内の機雷設置は戦争行為であるためその除去への自衛隊の参加は今回の閣議決定ではできない。


このへん個人的にはもう少し勉強が必要。




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『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』

2015-01-30 | 乱読日記

話題のトピックスについて旬な二人の対談を新書にする、というのはここ数年来定番になりつつあるようで、まえがきとあとがきをそれぞれが分担する、というあたりも皆同じ。

この本は佐藤優・池上彰という多作の二人が民族問題・宗教問題を中心にイスラム国、欧州、朝鮮半島問題を中心に話題にしている。

池上氏の解説は相変わらずわかりやすいし、佐藤氏のエピソードと系統的な解説も面白い。
短時間で読めるうえ、知識の乏しいイスラム国・中東諸国の関係などは参考になるところが多い(決して皮肉でなく)。

印象に残ったのが情報源に関するくだり

(佐藤)
・・・何かを分析するときは、信用できそうだと思う人の書いたものを読んで、基本的にその上に乗っかること。その上で、「これは違う」と思ったら乗っかる先を変える。
 信用できる人の数は、英語の世界でも、ロシア語の世界でも限られています。私なら、日本語文献で乗っかれる人は、10人もいない。だからその10人をきちんと自分のなかにリストアップしておいて、この分野だったらこの人が強い、というのを心得ておくことです。

(池上)
その10人を選ぶときには、時間の経過が必要です。たとえば、予測や分析ということで、いろんな人がいろんなことを言っている発言をスクラップの形などで取っておいて、時間が経ってから、その人が何を言っていたかなと振り返るのです。
 ときに、とんでもない間違いをしていたりすることがある。もちろん、人間ですから過ちはある。しかし、自分の過去の失敗に口を拭っていたりする人は、やはり信用できない。それに対し、たとえ間違っても、「私はこう言っていたけれど大きく見通しが外れました。申し訳ない」と正直に言う人は、かなり信用できますね。


自分たちが生き残っていくための心得、とも読める。

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『日本の血脈』

2015-01-28 | 乱読日記

取り上げる人物によって当たり外れが大きい。

宣伝文句は以下の通り大仰だが、元が文藝春秋の連載いうこともあり、手間暇かけて調べた以上形にしないと、と玉石混交になっている。

血の継承にこそ存在意義のある皇室はいうに及ばず、政財界から芸能界まで、この世は二世、三世で溢れかえっている。日本人を惹きつけてやまない血のロマンー。しかし、その裏には、末裔のみぞ知る、いや、末裔ですら知りえない先人たちの波瀾万丈があった。注目の人士の家系をたどり、日本人の血脈意識に斬り込んだ意欲作。 話のネタとしてはけっこうおもしろい発見がある。

とはいうものの、現代の日本人は何代か遡ればだいたい戦争体験とか明治維新を経験しているわけで、「先祖Aは同じ時期に満州にいたXと親交があったに違いない」という憶測とか「幕末○○の攻防で現在の盟友の先祖同士が敵味方に分かれて戦っていた」という順列組み合わせの結果論などの茶飲み話になりがちだったり、取り上げられている本人以上に目立つ人に焦点があたりすぎなものがあるのは残念なところ。
 ドキュメンタリーでは自分の発見を過大評価するのはいたしかたないのだろうか(たとえばこちら)。

取り上げられた記事について個人的に○×をつけるとこんな感じ。

女系家族-小泉進次郎
 △ 小泉家のつながりは面白いが進次郎の話がほとんどない
癒されぬ子ども-香川照之
 ○
哀しき父への鎮魂歌-中島みゆき
  △ 生い立ちをたどっているが本人につなげるところがこじつけっぽい
土地の亡者と五人の女-堤康次郎
  × 本人の女性関係(=そこから下の「血脈」)が中心
ひとりぼっちの豪邸-小沢一郎  ○
影を背負って-谷垣禎一
 × 父親のこと中心
流血が産んだアートーオノ・ヨーコ
 ○ 
遅れてきた指揮者-小澤征爾
 ○
皇室で掴んだ幸せ-秋篠宮紀子妃
 × 家系と生い立ちを辿りました、以上終わり
母が授けた改革精神-美智子皇后
 △ 婚約までの逸話が中心。


PS
最終章を読むと、美智子皇后ご成婚のときもバッシングがあったらしいが、それを今と比較する試みを別のところでやってもらいたいと思った。

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『安倍官邸の正体』

2015-01-25 | 乱読日記

政治記者は、総理や側近と親しくないと情報がとれないが、近くなりすぎると御用記者として取り込まれてしまう反面、外から批判ばかりしているだけだと情報が入りにくいという因果な商売であると思う。

あとがきで著者は  

 政治記者の最大の仕事は国家権力の構造を解明することだと思っている。国や党の方針を誰がどこで決めたか、理由は何かを取材し、読者、視聴者に届けるのが自分の努め・・・約35年間、政治取材を続けているうちに、次第にこう確信するようになった。

 この本を読んで、安倍首相に寄りすぎている、批判が足りないと思われる方も多いかもしれない。しかし、それでも権力構造を解明し、伝えることがわれわれの最大の使命であるという私の確信は揺るがない。目の前で起こったことの真相をわかりやすく伝えていく--。それが最も大事で、批判するにも肯定するにも、まず真相を知ろうというのが本書の趣旨である。

と書いている。

似たようなタイトルの本によくある単なる内幕暴露や自分がインサイダーであることの自慢に堕ちずに、安倍政権の構造を官邸の意思決定の仕組みや「政高党低」をもたらしたメカニズムなどを選挙制度の変遷や過去の政権との比較も含めてわかりやすく説明しているという点で、著者の意図は成功しているように思われる。

たとえば本書では政策の決定や実現過程については詳しく触れているが、その是非については言及していない。


気になったのは、本書で安倍政権の「弱み」についての指摘が少ない点だが、それだけ現在の官邸が強いのかインサイダーのバイアスなのかは興味があるところだ。


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『その女アレックス』

2015-01-18 | 乱読日記
「このミステリーがすごい」第1位になるだけのものはある。


ミステリーであるから、犯罪が舞台になる。

ただ、その犯罪行為が何を意味するものかという読みは、ページを進むたびにことごとくはずされる。


そして最後になって実際のところ何が起きていたのかがわかる。


圧倒的な構成力と筆力。




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新年のご挨拶

2015-01-01 | よしなしごと

 

A Happy New Year 2015

 



今年はもう少し更新するようがんばります。

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