消費税法案と同時に「社会保障と税の一体改革」(以前は「社会保障・税・財政の一体改革」だったような・・・)関連法案のひとつとして、高齢者雇用安定法の改正案があります。
厚生労働省のサイト
~「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」~
によるとポイントは次のとおり。
【法律案要綱のポイント】
1.継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
継続雇用制度の対象となる高年齢者を、事業主が労使協定で定める基準によって限定できる仕組みを廃止する。
2.継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大
継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される企業の範囲を、グループ企業にまで拡大する仕組みを設ける。
3.義務違反の企業に対する公表規定の導入
高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設ける。
4.「高年齢者等職業安定対策基本方針」の見直し
雇用機会の増大の目標の対象となる高年齢者を65歳以上にまで拡大する。
マスコミ的には65歳まで雇用 企業難色というような取り上げられ方をしています。
実際、直感的には雇用延長の義務化が若年層の雇用の縮小につながるのではないかと思います。
ただこの辺は労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(長っ!)でも議論されていて、ここの関係資料(p10)では
なお、高年齢者と若年者とでは労働力として質的に異なるという意見や、新卒採用の数は高年齢者の雇用とのバランスではなく、景気の変動による事業の拡大・縮小等の見通しにより決定しているという意見があった( 「今後の高年齢者雇用に関する研究会」の企業ヒアリング) 。 また、若年労働者は単純には高齢労働者の代替にはならず、高齢者の早期退職は若者の 社会保障負担・租税負担を増やすといったILO・OECDの報告*がある。
(* ILO「Employment and social protection in the new demographic context」(2010)/OECD「Off to a Good Start? Jobs for Youth」(2010))
などと理論武装?がされています。
この点はいろいろなところで議論されていますし、私がそれに付け加える知見もないのですが、個人的に一番違和感を持ったのが上の2.の部分
これは具体的には、現行の高年齢者雇用安定法では、定年まで高年齢者が雇用されていた企業での継続雇 用制度の導入を求めている(運用により一部例外あり)ものを、今回の改正で、一定の要 件を満たす子会社及び関連会社(20%以上出資)を継続雇用制度による雇用先の特例として認めることになりました。
でも、この恩恵を受けるのは、子会社などを多数持つ大企業の労働者に限られ、継続雇用を受け入れる子会社の従業員にとっては雇用や給与原資の圧迫要因にしかなりません。
この結果、高齢者と若年層の格差だけでなく、大企業の労働者ととその子会社や子会社を持たない中小企業の労働者の間の格差が広がることにならるように思います。
このへん、格差是正を課題としてあげている民主党の政策にも合わないように思いますが、主要な支持母体の連合の意向などが反映しているのでしょうか。
それから、細かい突っ込みをすると、
50%未満出資の会社に対して継続的に高齢者従業員の継続雇用を求めた場合に、「意思決定機関を支配していることが推測される事実がある」として支配力基準から連結対象にされるんじゃなかろうか。
とか
会社法改正で議論されている親子会社間の利益相反取引にあたるんじゃないか(形式的には子会社と労働者との雇用契約なので「親子会社間の取引」にはなりませんが、だからといって野放図に子会社に人件費の負担を押し付けるのはまずいのではないか)
という議論に波及するんじゃないかと思います。
年金支給年齢の引き上げや高齢者雇用という時代の流れにへの対応としては、ちょっとオールドスタイルのような気がします。