一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

証人尋問(1/2) (模擬裁判体験記10)

2007-11-30 | 裁判員制度

証人尋問は被害者の志村と目撃者の加東の二人です。
ほかに被告人質問(これは証人尋問とは言わないらしい)があります。

最初は志村証人。
手元にレジュメが配られます。

はじめに供述調書の朗読があります。
レジュメのタイトルに「同意部分」とあるので、弁護側と証拠とすることについて争いのない部分ということだと思います。

内容は会社での経歴や自分や被告人の仕事ぶり、二人のつきあいなどについて。
志村は木村とは仲がよかったが、木村は酒を飲むと陰気になる一方で自分も口が悪い。木村を遠ざけていた意図はなかったし被害にあう心当たりもないが、当日の言動などで気分を害してしまったかもしれない、などという背景事情が述べられます。


そして志村証人の登場

想定の年齢(60歳近く)とは全然違う、若い人が一応作業着を着て出てきます。(後で聞いたところによると裁判所の書記官だそうです。)。

最初は検察官からの尋問。

・しばらく被告人と疎遠になったあたりの事情

志村被告にはそういう気持ちはなかったが被告人は気にしているようだった

・事件当日コンビニで酒を飲んでいた相手と被告人に気づかなかった理由

特に仲がいい相手というわけではなかったし、そんなに盛り上がっていたわけではない。

・寮に戻ってからの出来事

TVを見ながら食事の支度をしていた。食事中に被告人が部屋に入ってきた。
被告人は強い口調で「話がある、外に出ろ」と言ったが、志村は時代劇を見ていたので「食事中だしドラマを見ている。話しならここで聞く」と断ったが被告人は目を吊り上げて「ここではだめだ、外に出ろ」と言って部屋を出た。
被告人はそのまま自分の部屋に戻り、それから外に出て行った(志村は部屋から様子をうかがっていた)。

志村は被告人が刃物を持ち出したのではないかと思い、自分も刃物を持っていけば対抗できるので争いにならないだろうと思い、包丁をタオルにくるんでズボンにはさんで出かけた。
今になって思えば出かけなければよかった。

・加東さんの部屋に寄る

包丁だけでは心もとないので加東さんに助けを求めた。加東は横になっていて「木村に呼び出されたけど」「行けば」「何かあったら来てくれ」「ああ、いいよ」とあまり真剣に受け止めてくれなかった。

・現場

被告人はガード下の街灯のところに立っていた。自分も怖かったので「何の話だ?」と強めに言うと、被告人はいきなり刃物を取り出し、タオルを取っていきなり左胸刺された。
被告人の右手をつかんで大声で加東に助けを求めたが、手をふりほどかれて右胸を刺された。
2回目に刺されたあと血が噴き出してきた感じがしてシャツを見ると血で真っ赤だった。そのあとは力が抜けてよく覚えていない。

この部分については、志村証人が検察官の一番若い人を相手に、どういう位置関係でどういう風に刺されたのかを実演しました。
裁判員の人数が多く横に広がっているので、全員が見れる位置を探すのにちょっと手間取りました。

検察官は弁護人からの反対尋問も想定してかいろんな角度から突っ込みます。

(検察官)「なぜ殺されると思ったのか」
(志村)「何も言わずにいきなり刺してきたうえに、2回目はかなり強く刺された」
(検察官)「あなたも包丁を持っていたが」(加東証言でも、タオルを巻いたままだが包丁を持っていた)
(志村)「いつ抜いたかは覚えていない」

最後は被害者の心情を聞きます。

入院を余儀なくされ、仕事もやめてしまった(もともと腰を痛めていたので廃品回収業はつらかったのもあるが)。今は生活保護を受けている。
自分は刺されるようなことはしていない。
どうか適正な処罰をして欲しい。


つぎに弁護側の反対尋問。
これもメモが配られます。

・過去に被告人が包丁を持ち出したようなことはなかったのに、今回相思った理由は何か。実は貴方も急に呼び出されて怒ったから包丁を持ち出したのでは?

このへん、かなり誘導的に尋問します。そして

・志村さんは3年前に包丁で人を刺して傷害罪で罰金30万円に処せられていますね。(これはメモになし)

ここで検察官から異議。裁判官が質問の趣旨を確認すると、弁護人は証人の証言の信憑性に対する疑義のため、といい、裁判官は「あまり長くならないように」と許可しました。
このへん、一瞬だけ映画やドラマの法廷物風でした。
弁護人は続けます。

・志村さんは今度は罰金ではすまないと思い、自分が包丁を持ち出したことを警察に言えなかったのではないか?

これらに対し、志村さんは「そんなことはない」と答えます。実際にそうでもそうでなくてもそれしか答えられないだろうな、という感じではあります。
ここでは、弁護人は自分の依頼者を守るためなら前科のある人への偏見を利用するような主張をするんだなぁ、とちょいと複雑な心境になりました。

・外に出る前に加東さんに声をかけたのはなぜか。殺意を感じたのならなぜ外についていったのか。被告人が包丁を出したのに逃げなかったのはなぜか。
・事件当日の警察官の調書では最初右胸を刺されて次に左胸ということだったのが、検察官の調書では左、右の順番になっているのはなぜか。
(←事件当日は動転していたが考え直してみると左→右だった)
・志村さんは包丁をいつ取り出したのか。
(←覚えていない)


弁護人は、志村さんも対決する意図があって包丁を持ち出して、もみ合っているうちに刺さったのではないか、という自分たちの主張を裏付けるべく反対尋問をしています。
また、少なくとも志村証言は細かくつめると矛盾があり、実はあまり覚えていないのではないか、自ら包丁を持ち出したことに焦点が当たると自分も困るので、ストーリーを作っているのではないか、というトーンで反対尋問をしました。


つぎに裁判官・裁判員の尋問

裁判官からは、志村さんの当日の飲酒量と普段の飲酒量について
(←普段とそんなに変わらない)

つぎに裁判員からも質問は?といわれて、皆ためらいました。
その中で「志村さんの利き腕は?」という質問が。
答えは右、だったのですが、これは私も疑問に思っていたところです。
証人尋問で実演したところで右手で右の尻のところに包丁を隠していた一方で、加東証言ではかけつけたときに包丁は左手にありました。さらに、実演では1回目に刺された後に被告人の右手を押さえたのは自分の右手でした。そうすると、いつどうやって左手に包丁を持つことができたのだろう、という疑問が浮かんだのです。

でも実際酔っていた上に興奮もあるので、皆正確には覚えていないでしょうし、志村さんも刃物で対抗した、という証拠もない(被告人は傷を負っていないし、包丁にはタオルが巻いたままだった)ので、被告人が志村を刺した(刺さったのではない)というのが事実に近いようにも思えます。
この辺「名探偵コナン」の謎解きじゃないんだからあまり細部のつじつまにこだわってもいけないのかなあ、などとも考えました。

その他2、3の質問があって、最初の証人尋問は終了しました。

(つづく)

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地位は人の上に人を作る

2007-11-30 | よしなしごと

裁判員制度の話を始めたはいいもののなかなか進まず、書いている本人もちょいと中だるみ気味です。
かといってほうっておくと記憶が薄れていくので、一気に書かないといけないとも思っており、しばしお付き合いをいただければと思います。

息抜きにちょっと別の話を。


守屋容疑者逮捕 妻、接待おねだり「ふぐ食べたい」「高級化粧品ほしい」
(2007年11月29日(木)08:22 産経新聞)

前防衛事務次官、守屋武昌容疑者とともに逮捕された妻、幸子容疑者(56)。山田洋行元専務、宮崎元伸容疑者への“おねだり”は常軌を逸していた。「防衛省の天皇」と呼ばれた夫を尻に敷き、求め続けた接待漬け。実態は「逆・夫唱婦随」だった。

「将を射んとすれば、まず馬を射よ」ではないですが、旦那を尻に敷いているうえに贅沢好きな奥さん、という存在は、接待する側からすれば格好のターゲットだったのでしょう。


もっとも旦那が偉くなると(旦那以上に)勘違いして傍若無人に振舞う夫人方もけっこういらっしゃるようです。

もうかなり昔、15年位前に聞いた話ですが、JALの国際線では「スーパーVIP」扱いの顧客が何人かいて、中でも某(超)大企業の創業者の奥様は、常にファーストクラスの座席番号1番でないと承知しない、という方だそうです。

そういう「1番限定」という顧客は若干名いるらしく、ある日同じ便でもう一人の「1番限定」顧客(忘れてしまいましたがこちらも財界人か有名人の奥様)とダブルブッキングしてしまいました。

どちらも「2番」で納得するとは思えず、また、万が一納得したとしても1番に座っている人を見たら「あの人の方を優先したのね!!!」と激怒されるのが目に見えていたので、営業担当は理由をつけて平身低頭、便をずらしてもらったとか。

プライド(わがまま)もここまでくれば大したものかもしれませんが・・・


上であげたほどではないですが組織でも妙に勘違いをして威張っている人を時折見かけることがあります。
「地位が人を作る」と言いますが、もともと人と人の関係を規定するのが地位なので「地位が人を作り間違える」ということもあるということでしょう。


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昼休み (模擬裁判体験記9)

2007-11-29 | 裁判員制度

やっと昼休みです。

エレベーターに乗って刑事第○部の階の会議室へ。

それにしても裁判所のエレベーターはなかなかきません。
ぱっと見築30年くらいの建物なので、エレベーターが群管理されていないのでしょう。
実は朝裁判官も「エレベーターが混んでいて」とちょっと遅れて登場しました。
裁判官は専用のエレベーター(それと被告人の移送にも使うらしい)があるようですが、やはり法廷が一斉に始まるので混むようです。


会議室には仕出し弁当が用意されています。

会議室は建物の北側で、皇居が一望できるとてもいいロケーションです。



手前の煉瓦造りの建物が法務省です。

お弁当もなかなか豪華(推定1500円くらい?)です。

言い忘れましたが、今回の裁判員モニターは日当が1日あたり5000円、計10,000円出ます。

裁判所のHPのQ&Aによると実際の裁判員は以下のとおりです。

● 裁判員(候補者)になったら,日当や交通費はもらえますか。もらえるとしたら,いくらですか。

裁判所に来ていただく日の日当や交通費のほか,裁判所から家が遠いなどの理由で宿泊しなければならない場合は宿泊費が支払われます。日当の具体的な金額は,裁判員候補者の方は,1日あたり8000円以内,裁判員及び補充裁判員の方は,1日あたり1万円以内となります。また,宿泊費については,宿泊する地域によって,7800円又は8700円になります。

裁判所のHPには、お弁当が出るかどうかまでは書いてありませんでした。
裁判所のある霞ヶ関界隈は官庁街なので外で食べるところはあまりなさそうなので、お弁当は出るんじゃないでしょうか。

裁判員と裁判官で一緒にお弁当を食べます。
さすがに事件の話は出ず、裁判員制度導入にあたっての工夫とか、刑事裁判の話とかいろいろ。

刑事部は逮捕状の請求などがあり、裁判官も当直があるそうです。
東京地裁は裁判官の数が多いので年に1回くらいしか回ってこないのですが、当直の日は都内中(正確には23区内。都下は八王子支部の管轄。)の刑事事件が全部来るので、週末に当たると、たまにテレビの特番でやる「警視庁24時」状態で、息つく暇もないそうです。

また最近刑事裁判の傍聴がブームで、ブログもけっこうあるという話になって、ああいうブログは裁判官もたまに見ているようで、訴訟指揮や判決の内容へのコメントはともかく、某裁判官は自分のことを「初老の裁判官」と書かれたのがショックだったとか。

そんなこんなで和やかに昼食を終え、午後からは証人尋問になります。

(つづく)

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守屋前事務次官の妻の逮捕と刑法65条1項

2007-11-28 | 乱読日記

守屋前次官と妻逮捕=ゴルフ旅行わいろと認定-収賄容疑、12回で390万円
(2007年11月28日(水)20:14 時事通信)

防衛装備品の調達をめぐり、ゴルフ旅行の接待を受けたとして、東京地検特捜部は28日、収賄容疑で前防衛事務次官守屋武昌(63)と妻幸子(56)両容疑者を逮捕、自宅を家宅捜索した。守屋容疑者は接待について、わいろだったと認めているとみられる。  

(中略)

幸子容疑者はすべての接待旅行に同行。特捜部は、次官の妻として接待を受けているとの認識があることから、収賄容疑の「身分なき共犯」に問えると判断した。

公務員でない妻がなぜ収賄罪で逮捕?と一瞬思ったのですが、ちょうど裁判員モニターの予習用に買った大谷 實『刑事法入門 第6版』を読み返してみると

刑法65条は、その解決方法として、第1に、1項で「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする」と規定し、真正身分犯(注:行為者の一定の身分が犯罪の構成要素となっている場合)に関与したときは、身分がない者についても身分のある者と同様の犯罪が成立するとした。それゆえ、非公務員Aが公務員Bと共同して収賄を収受したときは、共同正犯としてAにも収賄罪が成立するのである。

設例がずばりそのものですね。
守屋前次官のケースでは妻の方がゴルフ好きだったようなので、共犯になりうると判断したのでしょう。

「身分犯の共犯」という、そういえば20年以上前に刑法総論とかで出てきたなぁという話ですが、刑事裁判づいているところにはちょうどいい錆落としになりました。


この本、コンパクトなのですが非常によくまとまっていると改めて感心しました。
 






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証拠調べ (模擬裁判体験記8)

2007-11-28 | 裁判員制度
双方の冒頭陳述が終わった時点で休廷し、評議室へ。


評議室に戻ってしばし休憩。
「さすがに緊張しますね~」などと談笑。
トイレに行くと、さっき傍聴していた人々も廊下に出てきています。
こっちの顔などは覚えていないでしょうが、隣で用を足すのもちょいと照れくさい感じがします(そういえば裁判官用のトイレって別にあるんでしょうか?聞き忘れてしまった^^;)。


休憩が終わると裁判官から、今後の審理予定のスケジュール表が配られます。
このあとは検察側の甲号証の証拠調べがあって、昼休み。
午後は検察側証人(被害者志村、目撃者加東)の証人尋問、弁護側証拠調べと検察側乙号証、被告人質問と続きます。


つぎに、冒頭陳述の議論の整理のために争点についての主張を整理した資料が配られました。
「争点1:殺意の有無」「争点2:責任能力」について双方の主張を対比した表になっていて、3枚目以降は明日使う「殺意とは」「心神耗弱とは」を説明した資料。
証拠調べや評議のときに参考にしてください、とのこと。


それともうひとつ「証拠等関係カード」という字の小さい表が配られました。
請求者、番号、標目、立証趣旨、意見、結果、などという欄があるのですが、「標目」とは証拠の種類のことだと思うのですが「包丁」「・・・報告書」はいいとして「実(抄)」「電話」(電話での聞き取り?)「検(抄)」などの符合はよくわかりません。
「意見」欄には「同意」とか「不同意一部撤回」とか書いてあり、「結果」欄には「決定」とか「同意部分決定」などとあります。

おそらく公判前準備手続きの中で、双方がお互いの証拠の採否について議論した結果をまとめた表なのでしょうが、最後まで読み方がわかりませんでした。
裁判官も細かく解説してくれませんでしたし、この後この資料が活躍する場もありませんでした。

ところで民事訴訟では原告側の提出する証拠を「甲号証」被告側の証拠を「乙号証」というのですが、「証拠等関係カード」では検察官が請求者の証拠に(甲)(人)(乙)という符号がついてます。なので「乙号証」というと反射的に弁護側の証拠かと思っていたら違うようです。弁護側の証拠は「弁号証」と読んでました。
(生兵法は怪我の元ですね・・・)


あっという間に時間が来て、また法廷に。
検察側の甲号証の証拠調べです。

犯行現場の説明と現場見取図の映写+配布、包丁の写真と現物(実際は模型でしたが、検察官が手につまんで掲げるところは唯一テレビドラマで見た光景でした)、被告人らが住んでいた寮状況の説明と現場見取図の映写+配布、かけつけた警察官による被告人のアルコール呼気検査記録、救急隊の活動報告の説明、医師からの聞き取り・診断書の説明、被害者の刺創の場所を図示したものとTシャツに開いた穴の位置を示す図の映写+配布などがなされました。

これは「はいないなるほど」と聞いていればよいので楽でした。

ただ、遺体の写真や被害者の傷の写真を見せられたりすると、インパクトは大きいだろうなと思います(今回は模擬裁判だったので当然図でした^^;)。
特に今回のように昼食の直前だと・・・


以上で午前中の予定は順調に終了し、昼休みです。

(つづく)
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冒頭陳述 (模擬裁判体験記7)

2007-11-27 | 裁判員制度
検察官の冒頭陳述が始まります。

やおらノートパソコンを開いて、スクリーンにパワーポイントで作った資料が写しだされます。
あわせて、裁判官・裁判員にスライドをプリントアウトしたものが配られます。

内容は①当日起きた事実関係②法律上の争点の2つに関する検察側の主張です。

困ったのが、パワ-ポイントのスライドを映写しながら検察官が説明する一方で、手元には3スライド/1枚にプリントアウトされた資料があるので、スクリーンに集中すればいいのか、説明に集中すればいいのか、詳細にメモを取った方がいいのかがわからなかったことです。
パワーポイントでのプレゼンテーションでは、説明に集中してもらうためにスライドだけで説明を行い、あとで資料を配るという方法をよくとります。そうしないと資料だけをパパッと見て早合点されたり注意が散漫になったりするからです。

それに、資料が目の前にあるとかえって検察官の話す内容とのギャップが気になり、スライドに書かれていないことをひとことも聞き漏らすまいとしてしまいます。
特に、冒頭陳述の全体像がわからないのでペース配分がつかめず、何メートル走かもわからないレースを最初から全力疾走するので、必要以上の集中力を使ってしまった感じがあります。

この点で私にとって象徴的だったのは「志村さんの自転車問題」です。
当日の出来事として被害者の志村さんがコンビニに行って被告人と会ったという場面で、検察官は「・・・志村さんは寮を出て自転車で公園に向かい、その足でコンビニに行きました」と説明し、わたしはご丁寧にも
 <寮-(自転車)→公園→コンビニ>
とメモしました。

しかし志村さんが自転車に乗っていたことと公園に立ち寄ったことは、その後検察側からも弁護側からも二度と話題にものぼりませんでした。

冒頭陳述では何をどういう順番で説明するかを最初に説明してもらい、さらにあまり関係のない細かいことは言わないほうがわかりやすいと思いました。
それから、検察官や弁護士がパワーポイントの技術ばかり磨いてもどうかとは思うのですが、図で紫色に塗りつぶした楕円に黒い文字を入れるのはスライドでも見にくく、白黒コピーでは判読不能だったので若干の工夫は必要かと思います。


それで、肝心の内容
<事実関係>
①被告人(木村)と被害者(志村)は同じ寮で数年来廃品回収業に従事し、従来は仲良く酒を飲む間柄だったが、ここ数ヶ月志村は被告人と酒を飲まなくなった。また。最近稼ぎが悪いせいかと被告人(稼ぎはよかった)が酒を差し入れても志村は礼も言わなかった。これは後に事件の目撃者になる同じ寮に住む加東が証言している。
②事件当日被告人は16時過ぎに酒屋で飲酒し、一旦寮に戻ったあと加東に豆腐の差し入れなどをしてからコンビニに行き酒を買って駐車場で飲んでいたところ、同じ駐車場で志村が自分以外の人間と仲良く酒を飲んでいるのを見て話しかけたが無視されたので腹をたてた。
③志村が寮に戻っていると、しばらくして被告人が帰宅し、志村に向かって「話がある、外に出ろ」といい、一旦部屋に戻って包丁をタオルに巻いてズボンにつっこみ外に出た。
④志村は加東の部屋に行き「被告人に呼び出された。喧嘩したくないのでなにかあったら止めてくれ」と言って一旦部屋に戻り、自らも包丁をタオルに巻いてズボンに隠し持って後を追った。
⑤高架下にいる被告人を見つけ志村が「何の用だ」と言うと、被告人はおもむろに包丁を取り出し志村の左胸を刺した。
⑥志村は被告人の手を押さえると「加東さん、助けてくれ」と叫んだが、被告人は手をふりほどき、更に志村の右胸を刺した。
⑦加東が駆けつけると、志村は胸から血を流し、被告人は包丁を持っており加東に向かって「止めないでくれ、志村を殺す。俺はどうなってもかまわない」と言った。
⑧加東は「だめだ、包丁をよこせ」と被告人に言い、包丁から指を引きはがして取り上げると、志村を助けようとした。そのとき志村も左手に包丁をタオルにくるんだまま持っていることに気がついた。
⑨志村は救急搬送されたが当初呼吸反応がなく、出血多量で死亡する恐れもあったが命はとりとめ、加療3週間を要した。

<争点>
①殺意があったこと
刃渡り17cmの鋭利な包丁で胸部を2度突き刺した。
しかも「志村を殺す」などと発言している。
2つの傷は胸腔にはたっしていなかったものの深く、2度目の傷は動脈に達しており死亡の危険があった。
志村に不満を抱いており動機がある。
②責任能力はあること
被告人の飲酒量は普段と変わらなかった。
犯行後約40分の時点での警察官によるアルコール呼気検査では0.45mlと高くなく、正常歩行が可能だった。
包丁を隠し持つ等計画的。
犯行前後の記憶はある。


***********


次は弁護側の冒頭陳述です。

こちらはパワーポイントは使わずに口頭説明。
ところが手元に「冒頭陳述書」と「冒頭陳述要旨」という2つの資料が配られたところから混乱が始まりました。

「要旨」の方は主張の大項目とその概要が1行程度書かれていて行間がメモ書きスペース風にあいているレジュメです。
おそらく弁護側の算段では「要旨」の項目を見ながら話を聞くことで裁判員の集中度と理解度を上げようということだと思います。
しかしそれなら「冒頭陳述書」は後で配ったほうがいいと思います。

私も最初は「要旨」の余白にメモを取りながら聞いていたのですが、「冒頭陳述書」に内容が全部書いてあると気づいてからは、それを読みながら話を聞いていました。
しかも弁護人は「冒頭陳述書」の表現に言い換えや補足を早口で少し付け足すものですから、「要旨」を基に例の「全力疾走モード」でメモを取りながら聞いていたら、かなり疲弊したと思います。

この書面のスタイルもプレゼンテーションの仕方に工夫の余地があると思います。
逆に要旨の1行コメントだけを順番に映写し、手元には何も持たせずに話をしたほうが効果的だったかもしれません。

またそもそも弁護側の冒頭陳述は、最初に殺人未遂の構成要件である「殺意」の説明をしたかと思ったらなし崩しに事実関係の説明になり、それが殺意を抱く動機がなかったことの説明なのか、死に至らしめる積極的な行為をしていないことを説明したいのかいまひとつわかりにくかったという部分もあります。


弁護側の主張はつぎの通り

①被告人と志村は10年来の友人であり、腹を立てることはあっても殺意まで抱くというのは不自然。
②包丁を持ち出そうとしたのは脅そうとしたから。
③呼び出された志村が「何の用だ」と横柄な態度を取ったので、脅してやろうと包丁を取り出したところ、もみ合いになって刺さってしまっただけ。
④加東が駆けつけたとき被告人は攻撃をしてはおらず、加東に対しても抵抗しなかった。
⑤傷も刃渡り17cmの包丁にしては浅く、被告人に強く刺す意思はなかった。
⑥被告人は興奮していて加害行為の瞬間の記憶はないが、一方で志村証言も信用できない(証人尋問で明らかにする)
⑦被告人は事件当日炎天下で昼食も取らずに仕事をし、疲労と空腹で酔いが回りやすい状態になっており、通常の判断能力を欠いていた。
⑧志村の怪我は後遺症もなく、一方被告人は深く反省をしている。被告人は廃品回収業を十数年まじめにやっているが刑務所に入れられたら解雇され、出所後も生活の見込みが立たない。

ところで⑧は冒頭陳述で言うようなものなのでしょうか。情状などは最終弁論で出てきそうな話です。
もしそうだとしても、本当に殺人未遂なら職を失っても仕方ないよなぁ、などとこちらも結論前倒し的な考えになってしまいます。
素人としては、まずは犯罪行為をやったかやってないかの議論をしたあとで言ってほしい感じです。


*******


ということで、個人的には冒頭陳述を終わった時点で、説明のしかただけをとってみれば検察側の方に好印象を持ちました。


ここで休憩し、一旦評議室に戻ります。


(つづく)。
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冒頭手続き (模擬裁判体験記6)

2007-11-26 | 裁判員制度
起訴状には被告人の特定と公訴事実(何をしたか)、罪名及び罰条(刑法第何条に規定する何罪に問われるのか)ということが書いてあります。
今回は簡単にするためなのかA4用紙1枚に納まっています。

内容はこんな感じ

--------------

<被告人>
本籍(略)
住所(略)
職業 廃品回収業
氏名 木村 功(生年月日*****)

<公訴事実>
第1
被告人はx年y月z日v時w分頃、***所在**線高架下路上で志村喬に対し、殺意を持ってその胸部を包丁(刃渡り**cm)で2回突き刺したが、救助に駆けつけた加東大介に包丁を取り上げられたため、志村に加療3週間を要する傷害を負わせたにとどまり、目的を達することができなかった。
第2
被告人は正当な理由なく上記包丁を携帯した

<罪名及び罰条>
第1 殺人未遂  刑法第203条、第199条
第2 銃砲刀剣類所持等取締法違反  第**条

--------------

実際の事案を基にしたのかどうかはわかりませんが、登場人物は映画『七人の侍』からとったようです(実はそのことが後々ちょっと影響してきます。)。


裁判官から「これはあくまでも検察側の主張で、これが事実かどうかを双方の主張を聞いて判断することになります。」と説明を受けます。


「それでは法廷に行きましょう」との掛け声でいよいよ模擬裁判の始まりです。

裁判官は法衣を上から被ります。
裁判員はそのまま。
ネクタイ着用などの服装規定はないそうなのですが、金髪・ピアスに派手なTシャツなどという裁判員が登場したら、傍聴にきた被告人の親族からクレームがつきそうです。


そして法廷で整然とできるように着席順に並んで部屋を出ます(この辺は芸が細かい)。

評議室に使っている法廷と模擬裁判に使う大きな法廷は裏の通路でつながっているのですぐです。
通路には予備の椅子や机などが置かれていたりして、けっこう雑然としています。
そして、法廷の入り口には着席する壇の高さ分3段くらいの階段があってバリアフリーではないので裁判員制度導入までには改修予定だそうです。


法廷に入ると、検察官、弁護人、傍聴人が全員起立をします。傍聴席は見学者で満員でちょっとびびります。
一礼して着席。

もともと裁判官3名用の壇上に9人分の席を並べたので、端は壁際ぎりぎり、検察官や弁護士を背中から見るくらいの位置に座ることになります。
双方の席の脇にはスクリーンがあり(どちらの端からも見えるように)、PCでのプレゼンテーションを予感させます。


裁判長が被告人に前に来るようにいい、氏名、生年月日、本籍、住所、職業などを確認します(「人定質問」)。

被告人役は浅黒く日焼けした細身で髪をそりあげた男性。廃品回収業でリヤカーを引いている、という役にぴったりです(あとで聞いたところ、弁護士会の職員の方で、日焼けはジョギングのせいだったとか。被告人役は随所にいい味を出していました。)。


その後検察官が起訴状朗読。
そして裁判長が被告人に黙秘権の告知をします。

そのあと被告人側の認否。
弁護人が「殺人未遂でなく傷害である。また被告人は事件当時泥酔しており心神耗弱による刑の減軽を求める。銃刀法違反は認める。」と主張します。

要するに殺意はなかった、しかも泥酔していて善悪の判断能力がなかったので完全な責任は問えない、という主張です。


そして双方の冒頭陳述が始まります。

(つづく)
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そういえばミシュラン

2007-11-25 | 飲んだり食べたり
ばたばたしている最中に発表されていたので、本自体も買っていないのですが、新聞記事で☆のお店はわかってしまったので、多分買わないと思います。
考えてみれば『地球の歩き方(日本版)』を買うようなもんですから。
(もっとつっこむと、本家フランスなのですから本来「ミシュラン・ガイド」ではなく「ミシュラン・ギデ」と言うべきですよね。そうでなければ「ミシュラン案内」とか。)


私ごときは☆を獲得したようなお店にそうそう顔を出すような身分ではないので、雑誌やWebの記事や知り合いの話を聞くばかりなのですが、ざっと見た限りでは、ミシュランの調査員は寿司とふぐと鉄板焼きがお好きのようです。
そのかわりすき焼き(とかしゃぶしゃぶ)の店がないのも興味深いです。

また、濱田屋とか福田家(昔からある接待向け高級料亭)がはいっているところは、接客もポイントになっていると思われます。
福田家は元は料亭旅館でビルに建替わった以降も政治家御用達の店。
濱田屋は日本橋浜町にあり、明治座の経営です(濱田屋のある日本橋浜町は山県有朋が浜町に払い下げを受けて(別邸を自分でした?)柳橋(を活動拠点にしていた伊藤博文)に対抗すべく料亭「常磐」を作った以降料亭が集まりだしたそうなので、明治座より濱田屋の方が本家なのかもしれません)。
ガイジンにはそういうエピソードもアピールするのかもしれませんね。小笠原伯爵邸も入っていますし。

それから日本人が海外で日本食を食べたくなるのと同様、フランス人は日本でもポール・ボキューズやジョエル・ロブションの店で食事をしたいようです。

また、マンダリンのシグネチャーとか帝国のレ・セゾン、ニューオータニのなだ万、リッツカールトン東京のひのきざかなど、ホテル内のレストランも外国人にはアクセスがよかったのかもしれません。


個人的には、今度行ってみようと思っていた神楽坂の石かわが☆2つを獲得してしまったので、当分予約は取れなそうなのが残念です。


ところで、麻布のかどわきが審査を拒否したというのも記事になってましたが、拒否したことも言わなきゃもっとかっこよかったのにと思います(かどわきの「トリュフかけご飯」など斬新(見方によってはけれんみたっぷり)な料理をフランス人がどう評価するかにも興味があったのですが・・・)。


ちなみに私の今年下半期に食べたもので一番美味しかったのは、外房で釣った(普段釣りはしないのですが付き合いで行きました)剣先イカとうるめ鰯をその晩自分で刺身にしたものです。
酒は獺祭の生酒とくれば文句のつけようがありません^^

食べ物なんて、そんなもんですよね。



PS
リンク切れ防止と備忘のため記事にあった☆を獲得したお店をコピペしました(まあ、行くことはほとんどないと思いますが。)。

○三つ星に選ばれたレストラン(8軒)
・神田(日本料理)
・カンテサンス(現代風フランス料理)
・小十(日本料理)
・ジョエル・ロブション(現代風フランス料理)
・すきや橋 次郎(日本料理 寿司)
・鮨 水谷(日本料理 寿司)
・濱田家(日本料理)
・ロオジエ(フランス料理)

○二つ星に選ばれたレストラン(25軒)
・石かわ(日本料理)
・一文字(日本料理)
・臼杵ふぐ山田屋(日本料理 ふぐ)
・えさき(日本料理)
・エメ・ヴィベール(フランス料理)
・菊の井(日本料理)
・キュイジーヌ[S] ミッシェル トロワグロ(現代風フランス料理)
・湖月(日本料理)
・さわ田(日本料理 寿司)
・サンパウ(現代風スペイン料理)
・鮨 かねさか(日本料理 寿司)
・醍醐(日本料理)
・拓(日本料理 寿司)
・つきじ 植むら(日本料理)
・つきじ やまもと(日本料理 ふぐ)
・トゥエンティ ワン(フランス料理)
・ピエール・ガニェール(現代風フランス料理)
・菱沼(日本料理)
・福田家(日本料理)
・ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション(現代風フランス料理)
・リストランテ ASO(現代風イタリア料理)
・龍吟(現代風日本料理)
・ル・マンジュ・トゥー(現代風フランス料理)
・●家菜(●は厂がんだれに萬)(中華料理)
・和幸(日本料理)

○一つ星に選ばれたレストラン(117軒)
・あさぎ(日本料理 天ぷら)
・味満ん(日本料理 ふぐ)
・阿部(日本料理)
・あら井(日本料理)
・●皮(●は鹿を三つ重ねた字)(ステーキハウス)
・アルジェント ASO(現代風イタリア料理)
・アルバス(フランス料理)
・アロマフレスカ(現代風イタリア料理)
・うを徳(日本料理)
・うかい亭(日本料理 鉄板焼)
・うち山(日本料理)
・海味(日本料理 寿司)
・恵比寿(日本料理 鉄板焼)
・大野(日本料理)
・オオハラ・エ・シーアイイー(フランス料理)
・小笠原伯爵邸(現代風スペイン料理)
・翁(日本料理 そば会席)
・オーグドゥジュール ヌーヴェルエール(フランス料理)
・おざき(日本料理)
・おはらス(フランス料理)
・ガストロノミー フランセーズ タテルヨシノ(現代風フランス料理)
・きくみ(日本料理)
・キャーヴ ひらまつ(フランス料理)
・久兵衛(日本料理 寿司)
・銀座寿司幸本店(日本料理 寿司)
・銀座ラ・トゥール(フランス料理)
・クーカーニョ(現代風フランス料理)
・クチーナ・ヒラタ(イタリア料理)
・クレッセント(フランス料理)
・けやき坂(日本料理 鉄板焼)
・コジト(フランス料理)
・古拙(日本料理 そば会席)
・小室(日本料理)
・近藤(日本料理 天ぷら)
・桜ヶ丘(日本料理)
・櫻川(日本料理)
・笹田(日本料理)
・さざんか(日本料理 鉄板焼き)
・ザ・ジョージアン・クラブ(フランス料理)
・三亀(日本料理)
・シェ・イノ(フランス料理)
・シェ トモ(現代風フランス料理)
・シェ・松尾(フランス料理)
・シグネチャー(現代風フランス料理)
・重よし(日本料理)
・シュマン(現代風フランス料理)
・招福楼(日本料理)
・真(日本料理 寿司)
・すがわら(日本料理)
・すし おおの(日本料理 寿司)
・鮨 さいとう(日本料理 寿司)
・すし匠 齋藤(日本料理 寿司)
・鮨 なかむら(日本料理 寿司)
・すずき(日本料理)
・赤芳亭(日本料理)
・竹やぶ(日本料理 そば会席)
・たつむら(日本料理)
・タテル ヨシノ(現代風フランス料理)
・田はら(日本料理)
・竹葉亭(日本料理 うなぎ)
・チャイナブルー(中華料理)
・中国飯店 富麗華(中華料理)
・トゥールダルジャン(フランス料理)
・とうふ屋うかい(日本料理)
・と村(日本料理)
・とよだ(日本料理)
・ドン・ナチュール(ステーキハウス)
・中嶋(日本料理)
・なだ万 山茶花荘(日本料理)
・なだ万 ホテルニューオータニ店(日本料理)
・ナルカミ(フランス料理)
・花山椒(日本料理)
・青空(日本料理 寿司)
・万歴龍呼堂(日本料理)
・ピアット スズキ(イタリア料理)
・樋口(日本料理)
・ひのきざか(日本料理)
・ひらまつ(フランス料理)
・ひろ作(日本料理)
・深町(日本料理 天ぷら)
・福樹(日本料理)
・ブノワ(現代風フランス料理)
・ベージュ(現代風フランス料理)
・まき村(日本料理)
・未能一(日本料理)
・ミラヴィル(フランス料理)
・六雁(現代風日本料理)
・室井(日本料理)
・メゾン・ド・ウメモト 上海(中華料理)
・メゾン ポール ボキューズ(フランス料理)
・モナリザ(フランス料理)
・桃の木(中華料理)
・森本 XEX(日本料理 鉄板焼き)
・山さき(日本料理)
・やま祢(日本料理 ふぐ)
・有季銚(日本料理)
・ゆう田(日本料理 寿司)
・幸村(日本料理)
・よこ田(日本料理 天ぷら)
・与太呂(日本料理 天ぷら)
・よねむら(現代風日本料理)
・よねやま(日本料理)
・ラ・ターブル・ドゥ・ジョエル・ロブション(現代風フランス料理)
・ラ・トゥーエル(フランス料理)
・ラノー・ドール(フランス料理)
・ラ プリムラ(現代風イタリア料理)
・ラ・ボンバンス(現代風日本料理)
・ラリアンス(現代風フランス料理)
・ランベリー(現代風フランス料理)
・リストランテ濱崎(現代風イタリア料理)
・リストランテ ホンダ(現代風イタリア料理)
・ル・シズィエム・サンス(現代風フランス料理)
・ル・ジュー・ドゥ・ラシエット(現代風フランス料理)
・レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ(現代風フランス料理)
・レザンファン ギャテ(フランス料理)
・レ セゾン(フランス料理)
・分とく山(日本料理)
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さあ、裁判所 (模擬裁判体験記5)

2007-11-24 | 裁判員制度

さて、模擬裁判の当日を迎えました。

朝九時に東京地方裁判所刑事第○部に来てください、という普通ならあまりもらいたくない呼び出しを受けて霞ヶ関の東京地裁に向かいました。

東京地裁(ちさい)というものの、実際はかなり大きな建物です。
(↑一度言ってみたかったオヤジギャグ(^^;)

実は東京高裁も同じ建物です(簡易裁判所と家庭裁判所は別の建物にあります。)。

 


これが入り口 。
職員と弁護士・検察官など法曹関係者の入り口と傍聴者などの一般人の入り口が分れていて、一般人側は手荷物検査と金属探知機のゲートをくぐらないといけません。

 

裁判は10時からなので9時の時点では出入りするのは裁判所の職員ぐらいでまだほとんど人がいません。
門の外では労働事件の裁判への抗議のビラまきをやっていました。
(2日目は9時半集合だったので、その時間になるとけっこう人がいました。特に、最近裁判傍聴ブームらしく、ロビーにある今日どういう裁判が何号法廷であるかが書いてある台帳の閲覧場所には人だかりができていました(なぜかその日は20代の女性ばっかりでした。)。 )


エレベーターで刑事第○部に。
刑事部といっても事務スペースなので、カウンターの奥に普通の机が並んでいて区役所などと同じつくりです。

部屋に入ると、書記官の方が待ち構えていて丁寧にご挨拶いただき(こちらこそ恐縮です)、奥の小部屋に通されました。
既に裁判員モニターが何名か到着済み。
ただ6畳くらいのスペースなのでここで2日カンヅメはつらいなぁと思っていたらここは待合室。
全員そろったところで別の階の評議室に移動します。

評議室は軽罪など裁判官1名で裁判する用の小さな法廷の証人席などを取っ払って丸テーブルを置いて使います。
テーブルにはマイクがあり、ビデオカメラなどもセットされていて、何だかこちらが取り調べられるような感じです。

席次表がテーブルの上にあり、それにそって着席。
しばらく待つと裁判官3名が登場。50代半ばの裁判長、40歳前後の右陪席の裁判官(裁判官の右側に座る人。普段は裁判長をやっているとか)、それに20代の若い左陪席の裁判官です。

最初に簡単な自己紹介。
裁判員6名のうち会社員が4名(うち女性1人)、年輩の方が2名(男女各1名)。会社員は経団連などを経由して企業から選ばれた(とか希望した)人なので人事や法務関係の人が多い。
年輩の方は、消費者センター経由の元居酒屋経営の女性と、知人の法曹関係者の紹介で来た元教師の男性。

ところで本番でもこういう自己紹介をするのでしょうか。身元が明らかになると被告人からの報復を受けるリスクが高まることを心配する人もいると思うのですが、一方で評議にあたっては名前がないと面倒です(「Aさん」「Bさん」では議論に身が入りそうにないですね。)。

裁判所HPのQ&A自分が裁判員になったことを家族や親しい人にも話してはいけないのですか。 では

法律上,何人も,氏名,住所その他裁判員であることを特定するに足りる情報を公にしてはならないとされ,裁判員自身が,自分が裁判員であることを公にする場合も含みます。これは,裁判員への接触や働き掛けを防ぎ,裁判員自身の平穏を保護するとともに,裁判員裁判の公正さを確保する目的もあるからです。そこで,例えばインターネットで自分が裁判員になったことを公表することは許されませんが,日常生活の中で,家族や親しい人に話すことまでは禁止されません。なお,裁判員でなくなった後に,自分が裁判員であったことを公にすることは禁止されていません。

また、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(今後面倒なので「裁判員法」といいます。)では

(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)
第百一条  何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

とあります。  
つまり評議の席は「公」ではないのでいいけど、どういう人が裁判員だったか、ということも外では話してはいけない、ということのようです。 

でも、休暇や休業の理由を説明するには言わないといけないと思うのですが、そのへんはどうなんでしょう。


自己紹介が終わると、簡単な今後のスケジュールの説明。

1日目は検察官と弁護人双方の主張を聞くのが主。
2日目は夕方までほぼ1日評議をするそうです。

法廷では裁判所、検察庁、弁護士会などの関係者が傍聴し、評議の様子もビデオカメラで法廷で中継されるそうです。
ただ、休憩時間などは写されないので、カメラを入れるときには合図します、とのこと。
記録のためと思っていたらライブ映像が流れるとあって、お茶やチョコ・アメなどが用意されていたのですが、あまりパクついてもいられなそうです。


簡単な説明が終わると、やおら「起訴状」という1枚の紙が配られました。

(つづく)

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英連邦(正しくはCommonwealth of Nations)

2007-11-23 | よしなしごと

閑話休題、裁判員モニターの話はひと休み。

英連邦、パキスタンの加盟資格を停止=非常事態宣言を非難
(2007年11月23日(金)11:25 時事通信)

 英連邦の閣僚行動グループ(CMAG)は22日、ウガンダの首都カンパラで会合を開き、非常事態が宣言されているパキスタンの同連邦への加盟資格を停止することを決めた。
 CMAGは会合後、声明を出し、民主主義が回復し、法の支配が戻るまでパキスタンの英連邦への加盟資格を停止すると述べた。声明は、「会合では、前回の会合以来、事態はいくらか前進しているものの、パキスタンでは依然として英連邦の原則に深刻に違反する状況が続いているとの認識で一致した」としている。
 ムシャラフ・パキスタン大統領は11月3日に非常事態を宣言し、憲法を停止して法律関係者や人権活動家、反政府勢力メンバーらを多数を拘束し、報道の自由を抑圧した。
 これに対してCMAGは10日前に開いた前回会合で、ムシャラフ大統領が非常事態を解除し、陸軍参謀長を辞任し、自由で公正な選挙の実施を保証しなければ、パキスタンの加盟資格を停止すると警告していた。〔AFP=時事〕

テレビでこのニュースを聞いて、そもそもパキスタンって英連邦だったんだということ。そして英連邦というのはそもそも加盟資格を云々するような現に活動している団体だったんだとはじめて知りました。
今まではオーストラリアとかニュージーランドのような国旗にユニオンジャックが入ってる国のことを言うのかと思ってました。
Wikipediaによると、

1971年に「民族の共通の利益の中で、また国際的な理解と世界平和の促進の中で、協議し、協力する自発的な独立の主権国の組織である(コモンウェルス原則の宣言前文)」と再定義され、ゆるやかな独立主権国家の連合となった(連合国家ではない)。

ということで、名称も1949年に"the British Commonwealth"から"Commonwealth of Nations"となり、加盟国も以下の53カ国にのぼっています。

<ヨーロッパ>
イギリス、キプロス、マルタ
<北アメリカ>
アンティグア・バーブーダ、 カナダ、グレナダ、ジャマイカ、 セントクリストファー・ネービス、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、
<南アメリカ>
ガイアナ
<アフリカ>
ウガンダ、ガーナ、カメルーン、ガンビア、ケニア、ザンビア、シエラレオネ、スワジランド、セーシェル、タンザニア、ナイジェリア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、レソト、南アフリカ
<アジア>
インド、シンガポール、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブルネイ、マレーシア、モルディブ
<オセアニア>
オーストラリア、キリバス、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニュージーランド、バヌアツ、パプアニューギニア、フィジー

BBC News Pakistan barred from Commonwealth によると、パキスタンは1999年にムシャラフ大統領がクーデターによって政権を取ったときにも一度資格停止になって2004年に再加盟したばかりのようです。



写真はBBCの記事にあったもの。
テレビでは間抜けなおじさん顔に見えがちなムシャラフ大統領ですが、もともとクーデターで政権をとったり、最近の強権発動など、やること同様強面の表情を見せることもあるんだな、と。 

今回の英連邦の決定はアジアの加盟国からの反対もあったりしたなかで、投票でなく議論の末に加盟国が合意に至ったそうです。

でもシエラレオネとかナイジェリアは大丈夫なんでしょうかね? 

 

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裁判官の問題意識(下) (模擬裁判体験記4)

2007-11-22 | 裁判員制度
前回の続きです。
同じく判例時報の記事からの一部引用です。

話題は裁判員を交えての評議の進め方に移ります。


******************************

【N元裁判官】
・・・これまで評議の主宰というのは、どうしても裁判官の人柄とか、あるいは経験、先輩の伝統の継承というようなことでされ、その手法について客観的に議論されるということはほとんどなかったわけですけれども、実際の手法が果たして適切なのかということについて、裁判官以外の立場から議論が行なわれる状況がもたらされたわけで、それを受けて、私たちも、DVDを素材としてコミュニケーション論の分野の研究者の人たちと議論をすることにしたのです。
 そこで問題となったのは、やはり、裁判長が一人一人の裁判員の意見を引き出すという意欲は持っているにしても、どうしても裁判長対個々の裁判員という意見交換になってしまいがちであるということですね。裁判員同士の議論というのがなかなか盛り上がってこない。極端な形で言うと、教師と生徒という関係の会話になってしまうということが象徴的なこととして指摘されています。 
(中略)
確かに、捜査の可視化も不十分なままで、これまでの残りかすを持ったまま制度が突っ走ろうとしているわけですけれども、そういう中で、裁判員の人に、事実認定についてきちんと議論できる雰囲気を作っていく、本当に疑わしければ疑わしいと言って構わないし、捜査段階が不透明のような立証では有罪の認定ができないというような訴訟指揮を裁判長がするならば、あるいは調書に依存した運用も変わってくるかもしれないわけです。 (以下略)


【R裁判官】
・・・どうも最初の弁護士会あたりの批判が非常に強かったせいか、裁判官が意見を押し付けてはいかんと、やっぱり自由に裁判員の意見をはつげんできるようにしなきゃいけないということが聞きすぎている傾向がありまして、それはそれなりに正しいわけですけれども、裁判長以外の裁判官があんまり発言しない、しにくいというような傾向が模擬裁判ではかなり多いような気がしています。そういう意味で、やっぱり陪席裁判官の役割はかなり重要で、その人の個性というのもかなり生かすような形で発言してもらう。裁判官の場合に、意見を押しつける形の発言はできるだけ避けなきゃいけないと思います。けれども、ひとつの偏った方向に議論が行っているとか、デッドロックに乗り上げているというようなこともあります。そのときに、こういう視点、こういう間接事実について皆さんどう評価しますかという形で議論を戻していくとか、そういう押しつけと感じさせないような形の発言の仕方は十分あると思うんですね。そのような形で工夫は十分できるんではないかという感じを受けました。


【K裁判官】
・・・裁判員制度の課題の中で残された一番大きいものが評議の問題ではないかと思います。供述調書の問題ももちろん大きいんですけれども、当事者に対して公判前整理手続きで争点整理を的確にしなさい、証拠開示もできるだけしなさい、供述調書は使わない審理を目指しますというような訴訟指揮をすることによって、ある意味で当事者に非常に負担を強いることになります。ところが評議の段階になると、途端に裁判所に任せなさい、裁判官と裁判員が自由に議論しますというのは、評議を完全なブラックボックスの中に閉じ込めてしまうことになります。しかし、私は、このような考え方は、わかりやすく納得できる裁判を目指す裁判員制度の趣旨とは整合しないと考えます。前の懇話会で紹介したと思いますが、評議シートというような、検察官、弁護人と合意した論点集をもとに評議するというようなルールを確立しないと、幾ら当事者が整理手続きと公判で一生懸命頑張っても、最後の評議はブラックボックスでどうなるか全くわからないというのでは、裁判員制度の趣旨に合わないんじゃないかと思います。今年の五月ぐらいに判例タイムズに載りましたカナダ・オンタリオ州の陪審員に対する裁判官の説示という、若い判事補の方が書かれた文章がありまして、非常に啓発されました(判例タイムズ1205号60頁以下参照)。カナダ・オンタリオ州は陪審制度ですけれども、裁判官の説示がイギリス、アメリカと違って、いわゆる評議シート、それから樹形図と言うんでしょうか、幹と枝を分けて、こういう論点をこういう順番で議論していくとこういう結論に繋がっていくというような論点と順番を決めた評議シート、樹形図などを、起訴状、冒頭陳述、争点集、証拠一覧なども一緒にして綴じたファイルを陪審員に渡すんだそうです。しかもその内容について事前に検察官と弁護人とで検討することが法的に義務付けられているようです。勿論裁判員制度とは違いますけれど、当事者と合意した争点集を評議に活用するというのは非常に参考になる例ではないかと思って、今後是非そういうものをルール化していただきたいというふうに考えております。


******************************

なるほど、評議の方法はまだ試行錯誤の段階で、その「試行」の一環が今回の模擬裁判ということなわけですね。


ということで、次回はいよいよ模擬裁判です。
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裁判官の問題意識(上) (模擬裁判体験記3)

2007-11-21 | 裁判員制度

前回の素人なりの問題意識と別に、専門家はどう考えているんだろうとネットなどを調べてみましたが、特に手続き的な部分に言及してピンとくるもの(今までマスコミで言われていた以外の切り口のもの)が見つからなかったのですが、雑誌「判例時報」の1977号(2007.10.21)に「裁判する心(司法改革の流れの中で-第20回全国裁判官懇話会報告-)Ⅱ 」という記事がありました。

裁判官がどういうことを考えているのか、というのは普段ほとんど表に出ないこともあり、また、対談形式のためもあってか裁判官によってかなりスタンスの違いがあることもわかり、興味深く読みました。

以下面白かったところを一部引用します。(「A裁判官」とあるのは原文もそのような匿名表記になっています。でも、イニシャル風なのでわかる人にはわかるのでしょう。)

※ 内容が濃く、ちょっと長いので2回に分けます。なかなか模擬裁判に入らなくてすみません。

*********************************

【O元裁判官】
・・・裁判員制度の導入によって、必然的に争点中心のわかりやすい迅速で充実した審理が実現し、捜査中心から公判中心の刑事司法になるというような楽観的な見方を取ることは到底できません。 (中略) 今の刑事司法の最大の欠陥は精密司法ではありません。それは精密司法ではなくて、精密捜査です。捜査が不当に肥大化し、捜査が完了したときには、実質的に見て、一審の裁判は、捜査すなわち密室における証拠調べによって終了しているということdす。すなわち、一審の有罪判決が言い渡されていると言ってよい状態になっている点にあります。いわゆる調書裁判も、このような密室裁判と結びついてはじめて大きな問題となるのです。
 第二次世界大戦前の日本の刑事一審の裁判は、予審終結決定と同時に実質的に終わっていました。先後の刑事訴訟法の改正により、検察官と警察官とは旧法のもとで捜査官と予審判事が持っていた権限のほぼすべてを掌握しました。これを制約するものは、裁判官の令状捜査と刑事訴訟法319条1項及び320条1項による制約だけだといってよいでしょう。ところが、裁判官の令状審査も、刑事訴訟法319条1項及び320条1項、321条1項2号による制約に対する判断が有名無実となっていることは、ご承知のとおりであります。だとすると、公訴提起と同時に実質的に一審の裁判が終わっている事態になることは、当然のことと言えるのでありましょう。そのような状態のところに、早急に一審の審理を簡明化すれば、その結果がどうなるかはおのずから明らかではないでしょうか。 (中略) 

 (参考)
第三百十九条  強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
第三百二十条  第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
第三百二十一条  被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 (省略)
二  検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。

 公判手続きを簡明化しながら、無罪の発見という刑事裁判の最大の目的を達成しようとすれば、全取調べ過程の完全な可視化、必要性の判断をも含めた厳格な令状審査、特に罪証隠滅についての厳格な審査、伝聞法則の例外についての厳格な解釈、自白法則の厳格な適用が必要不可欠であると思われます。ところが、現在せいぜい公判後の保釈の判断がやや緩やかになったということぐらいで、このようなことが早期に実現される見込みはまったくないというのが私の見方であります。 (中略) 
 たとえば、当初否認していた被疑者を100時間取り調べて(それは通常の状態です)自白させ、最後の数時間分だけの自白調書がつくられ、被害者その他の重要参考人も何回も呼び出されて取り調べられ、最終的に被告人の自白調書と整合する供述だけが調書に録取され、被告人についても、参考人についても、供述の変遷過程はメモか何かに残されるだけで、被告人側には開示されない、公判での被告人質問はどんなに長くやっても数時間しかできない、証人についても同様、と言うような事態は容易に想定されます。従来無罪判決の多くが、供述の不合理な変遷をとらえて無罪判決への突破口としていたこととの関係をどう考えたらよいのでしょうか。 (以下略)


【K裁判官】
・・・ただO元裁判官は供述調書に引っ張られたままの今の刑事事件の状態で裁判員制度を導入したらひどいことになると言われましたが、本来、刑事訴訟法は供述調書は例外的にしか使わないシステムとしてできております。それを実際上変えて運営しているのは実は裁判官なんです。その裁判官の意識を、すなわち裁判主体そのものを変えるということが、裁判員制度のひとつの大きな眼目だと思っています。つまり、先ほど言いましたように、市民感覚、柔軟な感覚を取り入れた裁判をすることのできる裁判体が生まれるわけです。六人の市民裁判官が加わるわけですね。そういうこれまでとまったく異なる裁判体に対して、今までのように刑事訴訟法に書いていないような運用はまったく通用しないのではないでしょうか。 (以下略)


【丙裁判官】
・・・一番大事なことは、やっぱり直接その人から話を聞くと言うことなんだろうと思います。口頭主義・直接主義って簡単に言いうとそういうことじゃないかと思います。
 今も否認事件だと一応証拠調べで証人呼んでますけれども、正直言って肝心なことが聞けてないというか、余計なことばっかり聞いている。それはなぜかというと、その人の体験事実を公判で聞くのではなくて、先ほどO元裁判官のほうからご意見があったように、調書が取られているということが前提となって、その調書を法廷で再現しようと検察官は尋問しているし、それから弁護人も調書を見てますので、その調書の細かいところを前提にして聞くという尋問をやっていると思うんですね。だからその意味では、形の上で証人を調べていても、本当の意味での口頭主義、直接主義になっていないんじゃないかと僕は思うんです。それを理念的に言いますと、やっぱりその場で証人に、被告人にももちろんですけど、あなたはどういう体験をしたのかというのを直接聞けるような実務をつくるというのが大事じゃないかなと、この点では考えています。


【司会・丁裁判官】
この点については、例えば検察官なんかは今どういう動きなんですか。


【丙裁判官】
検察官の動きは具体的にはちょっとわかりませんけれども、公刊されているものを見ると、検察は今のところ捜査をあんまり変えるという意識は持ってないと思われます。いかに適切な起訴、適切な公訴提起をするかというのは維持すべきだということもちゃんと書かれていますし、それから捜査の問題については、基本的に変えるつもりがない。典型的なのは自白の任意性に関して、東京地検で可視化を試行しているのですが、あれはあくまで検察官が任意性立証のために有益である、必要であるという事件を選んで立証方法として有益だというものについて録画をするということのようですので、一般的に可視化するという、いわゆる可視化の議論とは全く異なる考え方というか、試行方法でしか今のところはないというふうに理解してます。 


【P弁護士】
・・・今の裁判をどのくらい変えなければならないかですが、丙裁判官やK裁判官がおっしゃったように、要するに、刑事訴訟法の原則に戻ればいい、ということだと私は思います。つまり弁護人は、書証は原則全部不同意にするということですね。その上で、証人を呼ぶことが訴訟経済に著しく反するとか、証人ではかえってわかりづらくなるとすれば、検察官と合意書面をつくって、わかりやすく争いのない事実を裁判員に提示する。
 そして調書が使われなくなると、捜査の側もあんなに厚いものはつくらなくなるのではないかと考えます。また例によって楽観主義なんですけど・・・。
 (中略)
 弁護士会ですが、ここはまだ議論があるところだと思います。私が申し上げた意見はかなり極端な意見かもしれませんが、ただそれに賛同してくれる人も多い。しかし弁護士も、骨の髄まで調書裁判主義がしみついております。ですから、この準備の二年半の間に、いろいろな実験をしてみたらいいと思います。ゆまり調書を今までどおり使う、あるいは簡単にして使ってみる。あるいは、私が申し上げたように、原則全部使わずにやってみる等。そして、その実験の場には必ず一般の人に入ってもらう。我々プロがそういった試行錯誤を続けて、失敗をして恥をかいていけば、結局行き着くところは、丙裁判官のおっしゃるように、人から直接話しを聞く、そういうところに収斂していくのではないかと思います。 (以下略)


*********************************

現在の調書中心の裁判の進め方の方が実は刑事訴訟法の本来の「口答主義・直接主義」と乖離しているんですね。
そこに「本則どおり」の裁判員制度が導入されるのは正常化へのいい契機かもしれませんし、逆にプロの裁判官だけなら方針転換も力技でできるのでしょうが、素人の裁判員にもわかるようなレベルで進める、そのために公判前整理手続でいかに効率的かつ公平に証拠や論点を整理するかが重要になってくるということなのでしょう。


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予習 (模擬裁判体験記2)

2007-11-20 | 裁判員制度
モニターをやる以上は制度について知ってなければいけないのですが、春先にエントリした際にもらったパンフレットやDVD(確か永島敏行とかが出ていたやつ)はどこかに行ってしまったので裁判所のHPにある裁判員制度のページなどでおさらいをしてみました。

ちなみに広報用映画はいくつかバージョンがあるようで、モニターが終わったときのお土産に長門裕之などが出ているもの(観た人によるとけっこう面白いらしい)と「総務課山口六平太」が主人公のアニメ物をもらいました。
(オークションに出品している不届者がいるらしいですが、こういうのこそYouTubeにアップしたらいいんじゃないでしょうか)


前回、裁判員制度について「どうやったら逃れられるか」「面倒くさい」「責任が重過ぎる」という入り口の議論が中心になっていることに疑問を呈したのですが、個人的には「殺人・放火・傷害致死のような重大な事件を、素人の裁判員と裁判官が短期集中で審理し量刑まで行う」というのが果たして機能するのだろうか、という疑問があります。


① 短期集中審理は機能するか
公判前整理手続を導入して集中審理するとはいえ、最高刑が死刑もある犯罪の審理として十分なのだろうか、という疑問があります。

② 裁判員は量刑まですることが可能か
たとえば殺人事件などでも目の前の被告人に死刑の量刑ができるのでしょうか(法務大臣ですら執行をいやがっているのに)。逆に「社会の敵」風な見方をされている被告人に対しては必要以上の厳罰に振れてしまうことはないでしょうか。
また法定刑がとても広い(たとえば殺人罪の法定刑は死刑・無期または5年以上の懲役)うえに酌量減軽や執行猶予の有無まである幅の広い判断をできるのか。逆に現在の量刑の「相場」を示してしまうとそこに誘導されてしまい、「国民の意見を反映する」という裁判員制度の趣旨に反することになってしまうし・・・。

(たとえばアメリカの陪審制度では陪審員は有罪・無罪の判断のみをし、量刑は裁判官がすることになっていますので、国民参加型の刑事訴訟制度でも量刑までやるのが一般的というわけではありません。これは制度の導入の際にも議論になったのではないかと思うのですが、その頃の議論の中身は残念ながら知りません。)


それともう一方で、刑法とか刑事訴訟法なんてのは学生の頃にちょっとかじったことしかなかったので、改めておさらいのために概説書を買って読んでみました。
刑法と刑事訴訟法が一冊にコンパクトにまとまっていて章立てもわかりやすそう(いきなり「行為無価値と結果無価値」などと言い出したりしない)でしかも新しい大谷 實『刑事法入門 第6版』を購入。








まえがきにもあるように、元は法学部生向けの入門書だったものを、ロースクールの法学未修者向けや裁判院制度導入にあたっての一般人への刑事司法の教養書としての意味合いを持たせるように改訂したそうで、脳味噌の奥の方に眠っていた記憶の虫干しにはちょうどよかったです。


これを読んで更に問題意識が浮かんできました

③ 判例をどのように説明するのか
たとえば法律上明文はないものの判例では定着している共謀共同正犯などは、裁判官は誘導的にならずにどうやって説明するのでしょうか。
また、説明しても「それっておかしい」と裁判員全員が言えばそちらが多数決で優先します。その結果控訴されたときに、高裁は単に「判例違反」として覆すのでしょうか。それとも「国民の意識を反映」させるために一度差戻してみたりするのでしょうか。


それやこれやでいろいろな問題意識を持ちながら模擬裁判に臨むことになったわけですが、ホント「模擬」裁判でよかったと思いました。

いきなり呼び出されたりしたら、相当悩むと思います。


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裁判員のモニターをしてきました (模擬裁判体験記1)

2007-11-19 | 裁判員制度
マスコミにも取り上げられていますが、平成21年5月の裁判員制度導入に向け、各地で模擬裁判が行われています。

模擬裁判は春頃にも開催され僕も勤務先経由でエントリーして(されて)いたのですが、そのときは裁判員の抽選から実際どおりにおこなったため、僕は最初のくじ引きにはずれたらしく、声がかかりませんでした。
もっとも前回は実際の裁判員6名に対して候補者は14名選んでいたので、くじに当たって裁判所までいったものの、「ごくろうさまでした」とそのまま帰らされた人も半分以上いたそうです。
これは裁判官による欠格事由の審査以外にも、検察官及び被告人によるそれぞれ4人までの不選任請求(これは理由を示さずにできる。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律36条)の制度があるので、最低でも8人の余裕が必要なことによるものです。

今回は公判と評議に重点をおくため、裁判員のモニター自体は最初から指名する「空クジなし」です。

今まで裁判員制度についてのマスコミの取り上げられ方が、「選ばれたら場合、どういう理由なら断れるのか」「負担が大きすぎる」という国民への義務付けの是非をめぐる議論を中心だったのですが、個人的には裁判員がきちんと評議ができるのだろうか、素人にもちゃんと判断できるような材料が提供されるのだろうか、目の前の被告人に厳罰を下すのに躊躇したり、逆に人民裁判風になってしまったりしないだろうかというあたりのほうが心配だと思うので、今回もエントリしてみました。

ちなみに今回裁判員モニターでご一緒したのは、私同様企業経由のサラリーマンが4人、知人の法曹関係者に頼まれた人1人、地元の消費者センターでの講演を聞きに行ってアンケートの中にあった裁判員モニターへの参加意向欄に印をつけたら声がかかった人1人という顔ぶれでした。

私もそうなのですが、会社員は2,3ヶ月前にわかっていれば2,3日会社を休むことは十分可能です(「自分がいなければ」と思っている人ほどその人が休んでいるときの方が仕事が円滑に進んだりするものです^^;)。一方で、開業医とか居酒屋などで個人でやっているところは実際に営業を止めないといけないので確かにつらいかもしれません。
だからといって裁判員が会社員と赤ん坊のいない主婦とリタイヤした年配者に偏ってしまうというのも問題ではあります。



実際の裁判員になったら、評議の内容は守秘義務を負うのでブログなどには書けないでしょうから、折角の機会なので模擬裁判を実際にやってみたらどんなものだったかを数回に分けてご報告しようと思います。
モニター裁判所の方も周りの方にもPRしてください、とおっしゃっていたので(でも、ブログに書いてくださいとも言われなかったけど^^;)。

もっとも今回も配布された資料は回収されてしまった(実際の事例をベースにしているから?でもそもそも裁判は公開の法定で行われるのだから考えてみればそれも変ですね。返さなきゃよかったかもw)ため、手元のメモと記憶を基にしていますので、一部実際と違うところがあるかもしれませんのであらかじめご承知おきください。



というところで次回はまずは模擬裁判前に考えたことなどを書きます(もったいつけているわけではないのですがしばらくお付き合いください)。


※ ちょっと長めのシリーズものになりそうなので、カテゴリを別に作りました。

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家業 その3

2007-11-18 | 余計なひとこと
三田佳子・二男、3度目の逮捕…涙の会見「ダメな親でした」(サンケイスポーツ)

家族ぐるみでネタにされてしまうと、この道の先達である清水健太郎もおちおちしていられないでしょう。

逮捕回数もあと1つに迫られてるし。


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