そのうちにTLで大河ドラマ「真田丸」の時代考証をしている丸島和洋氏の本が紹介されていたので、早速購入。
『真田太平記』と「真田丸」を並行していると、出来事の順序や人物の描き方、関係がかなり異なっていることに気づく。
気付く、というよりも、異なる史実を描いていると思えるくらい違うところがある。
『真田太平記』では高く評価されている信幸が、「真田丸」ではいつも割を食っている感じに描かれている。
タイトルからも、真田家の物語(『真田太平記』)信繁(幸村)の物語(「真田丸」)との違いもあるのだろうし、ドラマは毎回山場を作る必要があるので、三谷幸喜としては大泉洋のキャスティングと併せていじられ役として上手く使っているのだろう。
本書を読むと「真田丸」では最近の研究成果である「国衆」という概念を反映させていること、「国衆」と「大名」との違いなどがよくわかる。
一方で「真田丸」でもかなり史実を取捨選択したり脚色しており、『真田太平記』だけがフィクションに基づく娯楽小説というわけでもないこともわかる。
『真田太平記』は真田昌幸、信幸、信繁の武将の物語に「草の者」(=忍び)の活躍が縦横に絡んでくる。
一方で、「真田丸」は女性の存在感が大きい。
この辺は、双方のエンターテインメントとしての重きの置き所の違いだろう。
また、TVドラマはわかりやすい決め台詞が毎回の盛り上がりには大事だし時間の節約にもなるので必要なのだろうが、逆にちょっと鼻につくところもある。
その分小説は長さの制約がないので、登場人物の気持ちの揺れなどを細かく描写することが可能だし、背景の解説や余談の余地も大きいが、その分創作度が高くなる。
しかしいずれも、100年以上続いた戦国時代が終局にさしかかっているという時代背景の中でのそれぞれの戦国武将の生き様を描いているという点は共通している。
そして二つの物語の間の補助線(本来は史実をベースにしたこちらの方が中心軸なんですが)として、『真田四代と信繁』はとても興味深く読むことができた。