人間の体には腸管内だけで100兆個4000種類の微生物が存在し、人体は栄養の吸収、免疫の発動などを微生物にアウトソーシングしながら共生している。
著者は、マレーシアでのフィールドワーク中にダニに咬まれ原因不明の熱帯病に感染した。そして治療のために大量の抗生物質を投与された結果、感染症は治癒したものの、胃腸障害、免疫力の低下などにその後長期間苦しめられることとなった。これをきっかけに、共生微生物(マイクロバイオータ)に興味を持つようになる。
共生微生物の研究はここ15年(本書は2015年刊行)で飛躍的に発展した分野。
現在では、共生微生物のアンバランスが胃腸疾患、アレルギー、自己免疫疾患、肥満、さらには鬱病、自閉症にも影響を与えていることが明らかになっている。
本書は最新の研究事例を紹介しつつ、現代人が共生微生物といかにうまく共生するべきかについて語っている。
本書が「腸内細菌が何でも解決!」のようなトンデモ本、礼賛本になっていないのは、相関関係と因果関係を峻別しており(当たり前なんだけどこれをあやふやにして煽る本が多い)、また、科学的に解明されていない部分はきちんとその旨を書いているところ。
抗生物質についても否定しているわけではなく、過剰な使用(「クモを殺すのにクラスター爆弾を使う」)をするなと言っているだけ。
具体的な日常生活への心掛けにつながることや、なるほど、という部分(たとえば共生微生物が出産を通じて母親から子供に受け継がれる仕組みなど)が多く、非常に勉強になる。
★5