褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 ハッド(1963) アメリカを暗喩しています

2019年03月12日 | 映画(は行)
 未だに日本人の中にはアメリカのことを、貧乏人でも金持ちになれる一攫千金の夢のある国として妄信している人が多いようだが、実際にアメリカンドリームを実現して人生を謳歌しているような人間なんてほんの一握り。確率的に言えば宝くじ一等当選する確率より遥かに低い。あの国はコツコツと労働することの尊さを失い、成金になりたがる人間が多すぎる。拝金主義が蔓延り、モラルの低下が著しいアメリカ社会は今に始まったことではない。そんな嘆かわしいアメリカを暗喩しているかのような作品が今回紹介する映画ハッド。本作を観ればポール・ニューマン演じる粗野な男から病めるアメリカの一面がわかる。

 古き良きアメリカの象徴である家族の絆が、脆くも崩れ落ちていく様子が描かれているストーリーの紹介を。
 テキサス州で牧場を構えるバノン一家。父ホーマー(メルヴィン・ダグラス)とその息子であるハッド(ポール・ニューマン)は何かと気が合わないでいた。ハッドは夜になると酒と女を買いに街に繰り出しているダメ息子だ。しかし、そんなハッドを今は亡き彼の兄の息子のロン(ブランドン・デ・ワイルド)は好きでいた。
 ある日のこと、バノン家の牛に病気が発生。政府からの飼牛を全頭殺処分の命令が伝えられる前に、牛を全て売ってしまいたいハッドと父ホーマーは対立する。その対立の中でハッドは自分がなぜ父親から嫌われているのか意外な真相を聞かされてしまう。すっかり自暴自棄になったハッドは家政婦をしていたアルマ(パトリシア・ニール)に襲いかかり・・・

真面目に汗水たらして働く人間よりも、ちょっとアウトローな生き方をしている人間の方が格好良く思われる風潮があるが、本作がまさにソレ。ロン少年のハッドが好きな理由がチョイワルなオジサンが格好良く見えたから。しかし、ロン少年がエラいのは、オジサンの生き方が間違っていることに気付くところ。少年なりに、おじいちゃんが体現している古き良きアメリカ象こそ自分が進む道だということを理解したのだろう。
 今の日本も核家族化してしまって世代間のつながりが無くなってきた。そして、更に親子の仲でさえ気持ちが通じないことが多い結果が生まれてきている。そして、個性が大切な時代だと叫び続けた挙句に多くの利己的な人間がすっかり多くなってしまった。そんな日本の現状を照らし合わせて本作を観ると、非常に意味深なシーンが多いことに気付く。
 本作はテキサスを舞台にしているし、カウボーイハットを被った人がたくさん出てくるように西部劇風の装いに見える。本作以前の西部劇には男は愛する家族を守るんだという美学が貫き通されていた。しかし、本作の主人公であるハッドにはそんな古き良き概念が全くない。彼の愛する者は家族よりもカネだ。まさにハッド自身が病めるアメリカそのものを表しているし、ハッドに訪れる運命もなかなか味わい深いものがあり、現在の日本人も考えさせられるものがある。
 そして本作以前のハリウッド映画の男性主人公と言えばゲイリー・クーパーやジェームズ・スチュワートに代表されるような正義と良心を体現していた。しかし、ハッドを演じたポール・ニューマンだが彼が演じる多くの役柄は反骨心があり、アンチヒーローが多い。まさにアメリカの変化が生み出した俳優だと言えるだろう。
 ポール・ニューマンが好きな人、非常に意味深な映画が観たい人、家族の絆とは何かを改めて確認したい人、すっかり今の日本もアメリカもおかしいぞと思っている人等に今回はハッドを紹介しておこう

ハッド [DVD]
ポール・ニューマン,メルヴィン・ダグラス,パトリシア・ニール
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


 


 
 

 



 



 
 
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