褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 硫黄島からの手紙(2006) 硫黄島の戦いを日本側の視点から描く

2016年08月19日 | 映画(あ行)
ラストサムライにしろ終戦のエンペラーにしろ、たまに日本を描いた映画で良いな~、なんて思っていたら日本人じゃなくて外国人が監督をしていたなんてことがあったりするが、今回紹介する映画硫黄島からの手紙も見た目はまるで日本映画のように思えるが、これまた監督は日本人じゃなくてアメリカ人の名匠クリント・イーストウッドだ。前回アップした父親たちの星条旗(こちらも監督はクリント・イーストウッド))に引き続き、硫黄島ニ部作における硫黄島の戦いを日本側からの視点で描いた戦争ドラマだ。

 硫黄島の戦いといえば大東亜戦争で、日米が最も激しい戦いを繰り広げた戦いであり、栗林中将の知力、指揮力によって、日本軍よりも圧倒的な軍事力を率いる米軍に大打撃を与えた戦いとして今日では知られている。俺はてっきり本作の内容は栗林中将の英雄的かつ超人的な活躍、または逆に栗林中将の悪口を散々に描いているのかと思っていたのだが、流石はクリント・イーストウッドと言うべきか、そんな俺の予想をはるかに覆す奥深い内容。現在のある一部の日本人が戦争、軍隊に対して、絶対的に悪者と決めつけてしまい脳ミソの思考回路がストップしている状態に陥ってしまっているのを時々見かけるが、柔軟な思考を持っているクリント・イーストウッドが凄いのはあらゆる思想の人々に受け容れられる戦争映画を撮り上げってしまったこと。

 前作の父親たちの星条旗でも込められた反戦メッセージは日本軍を描いた本作においても継続されている。とんでもない体罰兵士が登場するし、日本の本国における残された家族に対する日本の憲兵の描き方はかなり辛辣。しかし、一方で日本の兵士に対してかなり好感的な描き方もされていたりする。真っ当な考え方をしている外国人が日本の軍人を描いたら、これぐらいの良心を持った日本の軍人が登場して当たり前だし、戦争の真っ最中といえどもこれぐらいの美談があるのも当然のことだ。

 さて、硫黄島の戦いから61年後。あの戦場で発掘された手紙で明かされる日本人兵士たちの想いは如何なるものだったのか!簡単にストーリーの紹介を。
1944年の6月、大東亜戦争において日本の戦況は悪化する一方。そんな折に、日本本土の最後の防衛地である硫黄島に栗林中将(渡辺謙)が指揮官としてやってくる。彼は到着早々に旧態依然としたやり方を目の当たりにしてビックリ。彼は古参者の兵士達から反発、驚きの目を向けられながらも合理性を重視した防御策をバロン西伊原剛)の力を借りて実行していくのだが、ついにその時がやってくる・・・

 ラストサムライで見せたような最後の鬼気迫るような渡辺謙を、本作の栗林中将に期待するのは的外れ。他の戦争映画やアクション映画で見かけるような、たった一人で多数の敵をやっつけるなんてシーンは本作においては全く見られない。それは他の日本兵も同様。むしろ栗林中将、バロン西の人格者としての一面が描かれている部分が強いので、戦う前から圧倒的に劣勢だった日本兵が、アメリカ兵に一矢を報いるといった展開を期待してはいけない。この辺りの描き方はクリント・イーストウッド監督の前作父親たちの星条旗から一貫している姿勢であり、戦争から英雄を完全に排除して見せた。
 しかし、クリント・イーストウッド監督が凄いのは単に戦争を否定するだけでなく、保守な日本人ですら堂々と言えない一言を本作で言わしていること。『天皇陛下、万歳!』、『靖国で会おう』。この視野の広い描き方のおかげで、観終えた後に余韻が残り、あの戦争は一体何だったのかを考えさせる。
 日本人とアメリカ人の友情を交わすシーンもあり、そんな両国がなぜ戦ったのか?今、なぜ日本は平和を享受できているのか?なぜ、現在アメリカと日本はあれほどの戦いをしたのに同盟国として結ばれているのか?硫黄島から見つかった手紙は、当時の彼らの本土に残している家族だけでなく、今の我々日本人に対して何を遺したのか?他にも色々考えさせられることがあるだろう。
 外国映画に出てくる日本は変な描き方がされていることが多々あるが、本作においてはそんな心配も無用。毎年8月になれば観たくなる映画として今回は硫黄島からの手紙を挙げておこう

硫黄島からの手紙 [DVD]
渡辺謙,二宮和也,伊原剛志,加瀬亮,中村獅童
ワーナー・ホーム・ビデオ


硫黄島からの手紙 [Blu-ray]
渡辺謙,二宮和也,伊原剛志,加瀬亮,中村獅童
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 監督は前述しているようにクリント・イーストウッド。彼の作品はお勧めが多数。父親たちの星条旗、彼の広い視野は人間の死後の世界まで描いてみせたヒアアフターも今回はあげておこう。




 
 
 
 

 
 

 

 
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