板前割烹の老舗、三条『河繁』のお昼の定番「満月弁当」。上から時計回りに…
向付(鱧落し、鯛、よこわ)・八寸(鯛の子、小芋、蛸煮、さつま芋煮、鶏つくね、鰯煮、大徳寺麩)・焚き合せ(南瓜、わらび、海老、里芋、莢隠元、茄子)・焼き物(鰆西京焼、出汁巻、蚕豆、青とう、酢蓮)・強肴(左…浅蜊ぬた、右…隠元胡麻和え)が、ご飯のぐるりを取り囲み、いい加減迷い箸しまくり。これに、お椀(山の芋摺り流し・青柚子)、温小鉢(生麩揚げだし)が付く。
ご飯はおかずの味が混同せぬように、ニュートラルに戻すためにちょっと口にするものだともいうが、こちとら、おかず一口でご飯の一山ぐらいは嚥下してしまいそうなので、そのペース配分は悩ましい。
一度っきりしかないが、先斗町でお茶屋に上がった際に、ここの半月弁当が仕出しで届き嬉しかった。弁当は懐石の予告編みたいなものだが、アタシなんざ本編を見ず、予告編だけでも十二分に楽しめてしまう。どれ一つとっても料理屋の味で手抜きなし、ちょっと濃い目の味付けも、これで酒を飲みたいアタシなんぞにゃピッタリである。
一間ある座敷との境界に丸窓があったり、網代壁や磨きこまれたヒノキのカウンターや、清潔な俎板が一種、舞台の道具立てのようだ。
この小さな空間で、箱庭のように詰まったとりどりの料理に箸を伸ばす。よくぞ日本人に生まれけり…や。ささやかなるが日本人、町人国家と笑わば笑え、世界杯もあそこまで。もとより大きなことなんぞできないのである。
これで¥5500はお値打ち。予約さえすれば夜でも食べられる。京都でネタに詰まったら、お勧めである。