焼き鳥好きには甚だ申し訳ないが、正直、焼き鳥で
感動したことがまだ…ない…。
食べ物番組を書いてた頃、それを恥じて、ひとつ固めて食ってみようと京阪神でそれなりに名のあるところへ11軒行き、真面目に向き合ってみることにした。 福島では勉強家永沼さんの「あやむ屋」「囲炉裏」「一本松」、京橋では元フレンチ宮本女史の「うずら屋」、ミナミ千年町で親爺の鬼気迫る「かつらぎ」、寛美さんも来た法善寺「おか輪」「二和鳥」、新梅田食道街で商売人でもある「とり平」、千里中央で皮好きを唸らせる「たきち」、新地の立ち食い「鳥銀」、東京京橋の「伊勢廣」でも食った。
それで分ったことは、なるほど旨い店は言うだけのことはある。だが、割と焼き鳥とは感動の揺れ幅の小さい食べ物ではないか…ということである。酒のアテであって、メシのおかずにはならない。思い切り空腹時に「焼き鳥食いてぇ」とはなりにくい。
それよか「死ぬほど久兵衛の鮨を食ってみてぇ」だったり、「上ハラミをタレでめし!」「カラッと揚がったどでかいトンカツにソースをドボドボかけて、かぶりつきたい!」そのダイナミズムにはどうあがいても勝てやしねえ。「今夜は一杯いくかぁ、じゃあ焼き鳥行っとく?」みたいな、真剣にやってる関係者にゃ悪いが、そういう運命なのかも知れぬ。だから、ちょっと粋だったりもするのであるが・・・。
鶴橋へ行く時は、焼肉やコリアンモードなのだが、先日思い出して入った『鳥幸』。元都ホテル広報N女史も地元っ子も推薦してた店だ。よく勉強もしてる。一番人気はここの「つくね」。その辺の女子供相手のつくねとは分けが違うぜ。
串に刺さないハンバーグ状態で、卵の黄身をグチュッとつぶして、付けて食べる。初めて出会った時にゃ唸ったなぁ~。仮に美人と行ったとしなさい、唇にうっすらと脂と黄身があふれ、そいつを紅い舌がチロリと舐める姿を貴方は目撃するだろう。官能的な食い物だ。野郎は食うな。
鳥幸 天王寺区下味原町4-12