困ったもんで、洋食大好き、揚げもん大好きな訳ですよ。
堂島辺りでお昼に差し掛かるので、絶対ここと決めていた。
1963年創業の「レストラン・インペリアル」。
55年にわたって、周辺のビジネスマンの午後の英気を養ってきた一軒。
インペリアル…帝国ですよ、帝国。 初代は帝国ホテルで修業したのかどうか、それは知らない。
たぶん15年ぐらいは来ていない気がする。
某放送局へ向かうために、前は通っていたんだけどね。
使い込んだ感のあるファサード。そりゃ人間だって55年生きてくりゃあ…。
久々に来たんだから、スペシャル感の響きにやられ、スペシャルランチを所望。
昼を少し過ぎて来たから、客はまばら。
店内もいい感じに時を経ているが、よく掃除されていて油っ気は感じない。
カウンターの調味料も正しい配置。これぞ、洋食店だ。
バカでかいフライパンは、デミグラスソースを作る際に、肉や野菜くずを炒めたり
するのだろうか。 調子づいて振り回してたら、確実に腱鞘炎になるな。
注文と共に、ストーブ前の職人が油にカツを投入。
もう一人が皿に野菜の付け合せをセットする。
揚がったカツをパスされて、この人が盛り付けて仕上がる。
ほどなく、スペシャルランチ、一口とんかつが登場。
端正なルックス。
形がいろいろなのが5枚。
そこへデミグラス系のソースがかかる。
思わず笑みがこぼれるほど旨し。
肉は柔らかすぎず、固過ぎず。
ごはんも結構な具合。
洋食はごはんに合わねばいけない。
極論すれば、ごはんを美味しく食べさせるのが洋食ではなかろうか。
丁寧な付け合わせ。
きちんと巻かれて鎮座するカレー味のパスタに、思わず涙が出そうになる。
こんな世の中だが、老舗洋食店のプライドというのか、
良心を見せられたような気がして、じんときた。
旧弊だか時代遅れだか言う奴はいるだろう。 だが洋食屋はこうでなくてはならない。
ひょっとすると、建て替えやなんかの話もこれまで出ただろう。
だが、それを跳ね返して頑固にここを守ってきた風に見える。
いつまで続くかわからないが、いつまでもあってほしい。
ささやかな城ではあるが、類を見ない威厳のある帝国がここにある。