何をかくそう私には、4分の1ほど名古屋人の血が流れている。
家で一切名古屋風の料理が出ることはなかったが、なんとなく、名古屋風味は性に合う。
ひと昔前、誰もが眉をひそめた名古屋の味噌カツなんてのも、大好き。
垢抜けない田舎料理なのであるが、それがなんかことごとく昔風で悪くない。
さてそんな名古屋勢が、このところ関西圏にも大攻勢をかけているのは知ってるか。
シロノワールの「コメダ珈琲」に、ここへきて「世界の山ちゃん」が堂々大阪上陸。
ミナミ千日前に、キタ東通り、そしてとうとう高槻なんて中途半端な街にまで押し寄せた。
これは看過できない、というわけで偵察に行った…。
名古屋でいろいろ食べたいが、ハシゴしてるヒマもないし、っていう時に行ってしまう「世界の山ちゃん」。
世界のナベアツの芸名も案外この辺から付いたんぢゃないか。
このすっとぼけた味わいの、野田秀樹のようなマスコットもすっかりなじみに。
まずは看板料理、手羽から揚げ。
ここのは元祖「風来坊」などに比べて、スパイシーで味がでら濃い。
(名古屋では、どえらい美味いのことを、でらうま・・・などと言う)
ちょいと大き目だが、一人で10本ぐらいは固い。
バキバキ骨を折って食べるのがコツっちゃコツ。
ワインがジョッキで出てくる。
腰が悪いんで、このくらいにしといてやらぁ・・・。
串カツはソースもあるが、ここではもちろん味噌である。
意固地にソースを主張するつもりはないが、10本食べるなら6:4で両方食いたい。
豚肉(大阪は牛だけど)と油の合わさった甘味には、赤味噌が一層甘さを引き立てる。
名駅の「のんき屋」などでは、大きな揚げ鍋の横に、グツグツどての鍋があり、
客が勝手に突っ込んで食っていいという不文律がある。あれには驚いた。
平然とあれができるようにならなきゃ、名古屋のほんまもんの飲み助にはなれない。
納豆オムレツ
東京時代、喜多見の居酒屋で梅さんが焼く、納豆オムレツを食い、開眼した。
ありゃあ美味かったなぁ・・・
なぜこれがあるのかよく分からない、えびせん。
名古屋人の海老好きを逆手にとって出しているのかな。
揚げたての熱々が出てくるのはいいが、不思議でたまらん。
どて味噌
関西では牛スジ煮込みだが、こっちでは豚モツ。
濃厚に見えるがそこまで濃くない。
信長、秀吉、家康・・・み~んな、こんな味噌味食って大きくなった。
ご飯を頼むと、田舎めしを盛り上げるかのように、二切れのたくわん。
少し残したご飯は、どての皿の中に投入してみた。
よ~く混ぜて、ハヤシライスのようにして食ってまった。
むっふっふっふ…見た目は汚いが美味い。
全体に味が濃いのは、ジャンキーな若者向けなので仕方ないのかもしれぬ。
あとは温度帯の問題。ことごとくアツアツ感がないのが残念。
大阪人は特に温度にゃうるさい。 熱いものは死ぬほど熱く、冷たいものは死ぬほど冷たくね。
今も時間が空いたら、名古屋に行って飲み歩きたい衝動に駆られる。
大須の縁日で見たまんが焼き。それに、今どき泥つきのこんにゃく芋が売っているのにも目を向いた。
名古屋人ってのは自分家でこんにゃくをイチから作るというのだろうか。
昔の暮らしが、まだかろうじて残っているのが名古屋だ。
ひとの好みも顧みず、毎年のように常滑焼きの干支の置物を送ってくれたり、
母が死に、哀しみでごった返しているのに、我が家の二階に泊り込んだり、
なかなか結婚しなかったボクに、「何で結婚しないの~」と聞きにくいことをハッキリ聴いたり、
そういう親戚たちがいるのだけど、やっぱりそこらも昔風、大いなる田舎なのだろうと推察する。
しょっちゅうは会いたいとは思わない。でも、忘れた頃にちょっと会ってみてもいいかなと思わせる。
名古屋風味とは、ボクにとって遠い親戚そのものである。