牡蠣船しっとるけ。
いきなりワイルドな物言いだが、水都大阪には川が多く、
主要な橋のたもとには、牡蠣船なるものが舫いであった。
秀吉の頃だったか、大坂で海難事故が起こりそうになり、
その時、救ってくれたのが広島の漁師たちだったとかで、
それから大坂で牡蠣の営業を官許とし、季節になると広島から牡蠣を積んだ
船が来て、暖かくなる時分に帰って行った。
淀屋橋南詰東側にある、「かき広」はその名残である。
池田市の「かき峰」、尼崎「かき金」などもさかのぼると牡蠣船になるのだろう。
池田まで食いに行ったり、冬になると伊勢的矢の「いかだ荘」や「橘」、
佐藤養蠣場などに行き、社長に焼き牡蠣でシャブリ抜いてもらったりした。
あの頃がささやかな我がバブル期だったのかもしれん。
岡山日生の牡蠣、ぷっくりと大粒の身。味も濃い。
生牡蠣2個、580円とかそれぐらい。
ここは阿倍野の裏街道にある、「牡蠣ヤマト」という牡蠣料理専門店。
もう暖かくなると雰囲気ではなくなるので、(でもここん家は年中食べられる!)
今のうちに書いておきたい。
牡蠣はおとなのものであって、ガキはすっこんでいてもらいたい。
それもそのはずで、気をつけても少しずつ雑菌を持っているので、元より子供は苦手にできている。
免疫力のある大人ならばいいが、個人差や体調によっても“過ぎると当たる”こともあらぁ。
でも、美味いのだから仕方ない。覚悟して食べよう。
牡蠣ステーキ うめぇなぁ~。
ここんちはワインも日本酒もいいものを揃えている。
場所は阿倍野筋と飛田遊郭の間にある、あべのポンテ。
少し前までは、よちよちと車を押す老人と猫しか通らないような、
寒風吹きすさず場所だったが、あべのQ'sモールができて、人の流れが変わったという。
世の中、何が福となるかわからない。
牡蠣のチャンジャ春巻き これもなかなかの名作。
文字通りの牡蠣とチャンジャ。パリパリ&ピリ辛でビールなどによろしい。
なぜかおっさんは牡蠣フライ好きである。
タルタルとウスター、両方つくのが、さすが解っている、どちらか一方では寂しい。
独身の頃、ワンパック買って、みんなフライにして食った。
それぐらい好き。
甘辛くたいた、オリジナルの牡蠣の佃煮。
こいつを炊き上がったご飯にまぶして蒸らせば、牡蠣めしになる。
酒にもむろん良。バーにある牡蠣の燻製の缶詰を思い出す。
あれもウイスキーの合いの手に、バカに美味い。
極め付きはこれ。
日生名物 牡蠣お好み焼き 通称かきおこ。
日生はかきおこで町おこしをし、B級グランプリにもこれで出場した。
かきがゴロゴロ入り、天カスがサクサク感を出し、いい仕事をする。
岩塩で味が付いているのでこのままでもよし。
ポン酢、ピリ辛マヨネーズ、ソースが添えられる。
あたしゃ、ソースかな。
暖かくなるってえと、南の方から桜だよりが聞こえ出し、
それにつれて、牡蠣・ふぐ・かになど、冬のうまいものが姿を消す。
旅立ちのとき、別れと出会いの季節は、食べ物にとっても同様にやってくる。
当たり前のようだが、少しせつなくもあり、
しかし季節に耐えて、また晩秋を迎えられると、にこやかに再会できるというわけだ。