地方の人間にうまいお好み焼きを聞かれたら、大阪人は苦慮するのである。
それほど生活に根差していて、たいがい幼小時から食べ付けたものが一番うまい。
しかし、強く求められた時、悩んで出すのがココ。 ま、場所がわかりやすい。
新大阪駅構内にお好み焼き屋は数あれど、駅外で、ホームの北スグ。
ホームから一番近いお好み焼き店。 それが…「登美子」。
とん平焼きは独特である。
分厚い豚バラを2枚、S字状に合わせて焼く。
焼けるまで、おかあさんの手作りキムチをアテに
ビールでも飲んでおとなしく待とう。
ここのとんぺいに小麦粉の生地は使わない。
鶏卵1個をつなぎとする。
豚肉の質がモロに出るから、なまじの豚肉ではいけない。 脂がよくないと。
仕上げに辛口のタレとネギをドチャッと載せる。
このネギを一欠けらでも残すと、おかあさん途端に機嫌が悪くなる。
ネギ好きの自分には、まったくそんな心配は当たらない。
「ホルモンも焼いて~」
たまにはこの手のジャンクがよろしいようで。
妙なチャンネルというか、気合いが入るというか…。
この日は息子不在のため、おかあちゃんの登板。
キライなもんはキライ、アカンもんはアカン…の名物おばちゃんである。
かつて阪神ファンだったが、店に来た村田修一がツボにはまり、横浜ベイスターズ贔屓になった。
とたんに村田はお母ちゃんが大嫌いな巨人入りを果たした。
すじ玉。
今もDenaファン続けているが、村田だけは別。
巨人勝つな、村田打て~! という微妙な声援を送る。
もう一枚はツレが頼んだイカ玉。
座る場所も決められる。 ときにビールも勝手に出してと言われる。 カチンと来ることもあろう。
なかなか客の自由にはならんけど、世の中とは、そういったもんである。
暗黙のルールに従っていれば何にも言われないので、ラクなもんである。
こんな所でまで、自分流を押し通そうと思わず、流れに任せる。
それがもっとも快適に美味いものにありつく方法だという気がする。