酒造メーカーのH女史に伺っていた小料理屋へ。
以前から店前に貼られた「燗あがり極上十選」の中に、
神亀ひこ孫の名前が目に留まり、気になる店ではあった。
中へ入ったら、スナックっぽい設えで、ちょいと身構える。
カウンターの中には女将が一人。カウンターには先客の熟年3人組。
並んだ一升瓶のラベルを眺めつつ、まずはビールでのどを潤す。
お通しに何処か(聞きもらした)の枝豆。
今日できるものは、ツラツラ・・・と立て板に水の女将。
こっちは必死に耳をそば立てる。女将はなかなか存在感ありな方。
まず、蛸のやわらか煮を。
大阪の庶民は夏になると、蛸の刺身、胡瓜のざくざくと鱧皮の酢の物
で一杯やるのが定番だった。
蛸のキュッと押し戻す歯ざわりにビール、結構なもんだ。
春雨のチャプチェ風炒め物。
利酒師でもある女将の勧めで、神亀ひこ孫でなく「真穂人」を。お初だ。
大阪で埼玉の酒を置く店は珍しい。ここでは燗酒を所望したい。
右は熱湯を入れる燗付け器。客は錫製のちろりを自分のタイミングで
引き上げる。冷酒のいきったところのない、穏やかで優しい酒だ。
白海老の掻き揚げ エリンギはおまけ。
女将はなかなかセンスのある一品を出してくれる。
そのどれもが酒に合う。
生節と蕗のたいたん
こんなんめったに食えなくなってしまったなぁ。
「日置桜~山装うひやおろし」に切り替える。
こちらは僅かに個性の強い酒。
気がつけば、まわりも燗酒の客ばかり。
近所で日本酒飲むなんてこたぁ、まぁなかったのだが、
初夏の燗酒、おつなもんである。
扉の足元には蚊取り線香が。夏の香りぞ。
『海鮮 築山』 高槻市芥川町1丁目