健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

冬山と体温

2009-12-20 16:00:09 | 研究
冬の山。雪景色を遠くから眺めるときれいです。が、いざ、その雪の中にはいると、そこには死の危険が待っています。「冬山で凍死」などという悲しいニュースが報道されました。ヒトは恒温動物で、体温は環境温に影響されずにほぼ一定に保たれています。しかし、この一定保つという機能は、我々のからだを構成する生きた細胞によって生み出されているので、細胞の働きが悪くなると、体温は変化してしまいます。たとえば、寒冷環境に曝されると、体温を一定に保つために、からだの中で様々なことが起こります。まず、熱をたくさん作るという反応です。熱は高い方から低い方へ移動しますので、寒冷環境下では体の熱、つまり体温は外気に奪われてしまいます。どこまで奪われるかといえば、外気温と体温が等しくなるまでです。ですので、奪われる分だけ、熱をたくさん作らなければなりません。では熱は何から作られるのでしょうか。それは、グルコース(糖)をはじめとする栄養素を燃焼させて作ります。ですので、十分な栄養がなくなると体温を維持できなくなります。もちろん、この熱は熱を目的に作るというより、エネルギーを作る過程で熱という副産物ができるのです。したがいまして、栄養素が少なくなってくると、細胞エネルギー自体が十分作れなくなるので、約60兆個の細胞の集合体であるヒトの体の機能も維持できなくなります。そのため、できだけ体温を外気に奪われないようにして、栄養素を節約する必要があります。その反応は鳥肌や皮膚が青ざめる現象になります。鳥肌が立つというのは、体毛を立たせる立毛筋が収縮することでできたでこぼこです。毛穴に一致した膨らみです。いわゆる小さな力こぶです。皮膚をでこぼこにして、かつ体毛を立たせることで、皮膚表面の風の流れを抑制させるのです。皮膚がつるつるだと、風通しがよくなり体温を奪われやすいということです。この時、筋肉が収縮するので、エネルギーが発生して熱も生まれます。また、皮膚が青ざめます。これは、表皮に近いところの毛細血管に血液が十分に流れていないことが原因です。毛細血管が収縮しているのです。血液はからだの中心を通過します。そして全身を約1分間で一周します。つまり、からだの中心から熱を体の隅々まで運ぶ役割もあるのです。外気温が低い場合、皮膚に近い血管に流す血液量を減少させることで、熱が外気に奪われるのを抑制しているのです。ですので、寒い場合には青ざめるということになります。通常は、手のひらに顕著にsy仏げんしますね。顔が青ざめると、かなり状態が悪い可能性があります。さらに、からだががたがた震えることもありますね。これも寒さ対策の1つです。筋肉を収縮させて熱を作っているのです。ですので、寒い時にはからだがふるえるのです。でもそのうちふるえなくなります。これは、筋収縮には莫大なエネルギーが必要になるのですが、そのエネルギーが不足してくると震えることもできなくなってくるのです。だんだんエネルギーが少なくなってくると体温が徐々に低下し始めます。すると、細胞の働きが低下してきます。もちろん脳の働きも低下します。脳の働きが低下すると眠くなってきます。起きているより寝ている方がエネルギーを節約できるという利点もあります。ただ、逆に考えるとエネルギーを節約するということは副産物である熱産生も少なくなるということです。ですので、寝てしまうと、体温はますます下がってしまいます。すると、細胞の働きが低下し、体温が低下し、という悪循環が進行します。そうしていくうちに、脳の機能が停止してしまうことになります。ですので、できるだけ寝ないようにすることが必要です。また、熱を奪われないように工夫するということも必要になります。登山の際にはチョコレートなどの高カロリーで携帯に便利な食品を非常食として持ち歩くのはそのためでもあるのです。私たちの細胞は活動に最適な温度があります。その温度を保つことも健康を維持する第一歩になります。空調や衣服で体温調節をこまめにするべきと考えます。
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スタチンと筋肉痛

2009-12-20 06:28:43 | 研究
脂質異常症。以前は高脂血症と呼ばれていた病態です。この治療薬として一般によく利用されているものに「スタチン」製剤があります。この「スタチン」は肝臓でのコレステロール合成を抑制する薬物です。したがいまして、血液中のコレステロール濃度が下がるという効果をもたらすことになります。脂質異常症の患者は世界的に見ても非常に多く、そのため「スタチン」は世界で最も売られている薬であるそうです。しかし、このスタチンですが、わずかですが副作用が見られる場合があるそうです。1~3%ぐらいの割合で、筋肉痛が見られるというのです。この筋肉痛は、骨格筋細胞の崩壊によるものらしいのです。どうして「スタチン」が骨格筋を壊してしまうのでしょうか。その原因については様々なことが言われいるようですが、その1つに小胞体ストレスという現象がかかわっているということです。小胞体ストレスというのは、細胞内で新しいたんぱく質を合成する時に、上手く正しい正確なたんぱく質が作れないといういわゆる「品質管理」が上手くいかない状態を指します。難しくなりますので、詳細についてはまた別の機会に述べることにしますが、「スタチン」はコレステロール合成を抑制するのですが、その結果最低限し必要なコレステロールの合成にも支障をきたしていいる状態と考えられるそうです。コレステロールといっても、様々な種類があり、それぞれ役割があります。「スタチン」はこうしたコレステロール合成に影響をもたらしますが、たんぱく質の合成にコレステロールの一種が関係しているので、「品質管理」が上手くいかなくなるということです。でも、こうした副作用が出現するのは100人に1人から3人ということですので、多くの患者さんにとっては問題ないとのことです。
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