極めて高いレベルの放射線を浴びたマウスに注射するだけで生存率を向上させ、放射線障害の予防や治療にも効果がある新しい細胞増殖因子が発見されたそうです(Science Portal)。放射線障害の治療薬としてはこれまで、甲状腺への放射性ヨウ素の蓄積を阻害するヨウ化カリウムや、白血球数の低下を防止して合併症を防ぐ「顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)」が知られているそうです。米国では放射線療法に伴う口腔粘膜炎の治療薬として、「繊維芽細胞増殖因子」(FGF)ファミリーの一員である「パリフェルミン」(組み換えヒト角化細胞増殖因子〈FGF7〉)が承認されているそうですが(日本では未承認)、上皮細胞だけに作用するなど用途が限定的で、因子そのものが不安定なために複数回の投与が必要なことから、より安定的で適用範囲の広い放射線障害の予防・治療薬の開発が求められているそうです。今回、FGFファミリーのうち、真皮細胞に特異的に作用する「塩基性繊維芽細胞増殖因子」(FGF2)と、広範な細胞に作用する「酸性繊維芽細胞増殖因子」(FGF1)に着目し、遺伝子操作によってFGF1の一部のアミノ酸配列をFGF2のアミノ酸配列に置き換えた新しい細胞増殖因子「FGFC」を作製したそうです。FGFCは広範な細胞に作用し、増殖のためにヘパリン(血液の抗凝固作用を持つ多糖類)を必要とせず、耐酸性やタンパク質分解酵素に対する抵抗性など、従来のFGFにはない特性をもつそうです。FGFCは放射線障害に対する治療効果と予防効果の両方が確認されたそうです。放射線被ばくによって腸管や骨髄などの細胞は障害を受けるが、FGFCはこれらの細胞の生存や増殖を積極的に促す作用をもつとみられ、重大な放射線被ばく事故だけでなく、がんの放射線療法による副作用の予防や治療などにも役立つものと期待されるということです。
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