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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 376 逆指名

2015年05月27日 | 1983 年 



大物選手の逆指名。投の高野・水野は巨人熱望、打の小早川・藤王はナシ! 有力選手は在京セ・リーグが大流行。ドラフト戦線を有利に展開しようとする選手にとって逆指名は今や当たり前。動向が注目される選手たちが熱望している球団は?


今年は例年になく逸材が多く豊作の年と言えそうだ。特に在京セ・リーグは逆指名を受ける程の人気ぶりだ。横浜大洋はその筆頭で大洋・湊谷スカウト部長も「本当に嬉しい事です。ウチに来たいと言ってくれる選手は全て欲しいのですがそうはいきません」とニンマリ笑顔を見せる。それとは逆に川崎球場に対する悪印象と例年球団内部がゴタゴタを起こすロッテは気の毒なくらいアマチュア選手に敬遠されている。在京セ・リーグを最も強く希望しているのは高野(東海大)と水野(池田)の剛腕投手。高野は147㌔の速球が評価され全12球団がマークする逸材だが本人は巨人と大洋を希望している。巨人には大学の先輩である原がおり公私ともに親しく巨人側も受け入れ態勢は整っている。また大洋にも先輩の遠藤がいて負けていない。この2球団の指名ならスンナリ入団となりそうだ。

一方の " 阿波の金太郎 " こと水野の場合は高野ほどではないがこちらも巨人・大洋・ヤクルトを希望している。更にここにきて池田高の先輩・畠山がいる南海も水野指名に参入する動きを見せている。水野本人は「王監督は僕のお手本の人。指名されたら嬉しい」と巨人希望を隠さない。また父親・正雄さんは在京セ以外なら長男のいる駒大進学を勧めるという。甲子園で評価を上げた小野(創価)も同様に在京セ・リーグ希望だ。ただ何が何でもセ・リーグに拘っている訳ではなく西武や日ハムでも入団の可能性は有る。即戦力の青木(東芝)の場合は大洋一本の姿勢を崩さない。鶴見工時代は西武を始め2~3球団から誘われるも「自信が無い」とプロ入りを拒否し社会人入りした。その後3年間、東芝で鍛えられ今度はプロ入りに支障はない。大洋以外は会社に残ると宣言し大洋入りを熱望している。東芝のもう一人の即戦力投手である鳴門高出身の川端は在阪球団を希望している。

打者では小早川(法大)は地元の広島がガッチリ囲い込み、本人も就職活動は一切せずプロ一本に絞り込んでいる為、広島入りがほぼ確実な状況。同じ法大の銚子は一応在京球団を希望しているものの上位指名ならどこでもOKとしている。高校球界のスーパースター藤王は巨人と西武を希望しているが地元の中日も黙っておらず巻き返しに懸命だ。中日は槙原(巨人)や工藤(西武)ら地元スターを逃し批判を浴びた経験から「藤王だけは絶対に他球団に渡すな」の至上命令が親会社から下されている。ただ藤王の父親・知十六さんは「私の実家は秋田で周りは巨人ファンが多い。巨人か西武なら万々歳」と中日サイドには不安な発言をしているが救いは藤王が「逆指名は嫌」と12球団OK宣言している点か。

藤王のライバル野中(中京)は少し状況が複雑だ。甲子園大会後の日米高校野球で渡米した際も国体出場の時もヒジ痛を理由に殆ど投げなかった。野中と親しい高校の友人が「肘が痛いと言って投げるな、と言われているみたいです。誰が?中日関係者らしいですよ」と耳打ちしてくれた。三浦(横浜商)もプロ入りを宣言しているがやはり希望は地元の大洋だが最近になって大洋のチーム事情でどうやら投手から野手に方向転換した模様で銚子の1位指名が漏れ伝わるようになると三浦も大洋一辺倒からセ・リーグ球団に範囲を広げ、パ・リーグ球団に指名されたら日本石油に就職すると宣言した。

同じく日本石油とプロ入りを両天秤にかけているのが高校球界でもトップクラスの球速を誇りながら甲子園出場は1年生の時のみで真の実力はベールに包まれたままの渡辺(前橋工)だ。中央球界では無名だがその速球は大府高時代の槙原(巨人)を凌ぐとさえ言われており「外れ1位で消える選手。競合を避けて1位入札をする球団があるかもしれない(近鉄・梶本スカウト部長)」位の逸材だ。また高鍋高卒業時に阪神に4位指名されたが拒否し法大へ進学した池田(日産)は今年が社会人2年目でプロ解禁。今回も阪神が熱心で本人も「上位指名なら」と前向き。こうして多くの有望選手がプロ入りする腹づもりだがセ・リーグ志向が強いだけにパ・リーグ球団がどう巻き返すか注目である。
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