Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 448 キャンプ人間模様 ②

2016年10月12日 | 1985 年 



小早川毅彦(広島):打法改造進まずライバルの追い上げ急 ! 2年目のジンクスがジワジワ
新人王に輝いた小早川が早くも2年目のジンクスに見舞われている。1月15日からの沖縄自主トレに参加していたが、26日に右足大腿部を痛めて周囲を慌てさせた。幸いにも2日間の静養で復帰できたものの肝心の打法改造の方は遅々として進んでいない。昨シーズンは112試合に出場して打率.280 ・16本塁打・59打点を記録し新人王を獲得した。しかし陰りはシーズン後半に見えていた。他球団のマークが厳しくなり右肩が開き豪快な打撃は消え、阪急との日本シリーズでも第3戦以降はスタメンから外された。不振の原因となった右肩の開きの矯正を秋季キャンプで試みたが上手く行かなかった。内田打撃コーチは「昨シーズンの後半から話し合って改造を始めましたが、まだ本人も少し混乱しています。頭では理解出来ても長年の癖は簡単には直せないのは仕方ない」と時間がかかる事を認めている。

サイン会、テレビ出演、ハワイV旅行など多忙を極めたオフだったが、年明け1月8日に始動した。お餅が大好きで学生時代は腹いっぱい食べていたが、さすがに今年は控え目に1日2個までと決めてウエイトコントロールに努めた。「休むと太る体質ですが今年は上手く過ごせました。食べる暇が無かったと言うのが本当の所ですが。これで体調は万全です。2年目のジンクスだと言われないようにやっていきます」と自主トレ開始の会見で語った。 " フル出場・打率3割・20本塁打 " を目標に掲げ年俸アップを目指す。昨年は初めての更改で倍増の九百六十万円を手にしたが今年の目標をクリア出来れば一気に二千万円プレーヤーの仲間入りも夢ではない。「プロになった以上、年俸は選手のバロメーター。1億円プレーヤーを目指します」と高らかに宣言した。

ライバルと目される長内や斎藤も共に1月15日からの沖縄自主トレに参加。長内が「奪われたポジションを奪回あるのみ。僕の長所はバッティング、打って打って使って貰えるよう頑張る」と言えば斎藤も「僕は右打ちですし左打ちの彼らと違うアピールが出来る。飛距離も伸びたしガンガンとアピールしたい」と2年連続ウエスタン・リーグの本塁打王も負けていない。対する小早川は「彼らを意識しない、と言ったら嘘になります。ただ他の人の事より先ずは自分がしっかりとした気持ちを持つ事です。 " 雑草のように " を忘れないよう頑張りますよ」と話す。お年玉と称して妹に10万円をあげたら父親に「高校生にはやり過ぎだ」と叱られた大らかな性格は並みのルーキーでなかった証明だが、2年目のジンクスを自分の力で葬り去る事が一流プレーヤーへの道でもある。



荘 勝雄(ロッテ):郭(西武)には絶対負けない。何だか目立ちそうなロッテの新戦力
「彼(郭)が5勝するなら僕は6勝。10勝するなら僕は11勝するよ」荘は西武入りした台湾の速球王・郭泰源の事を聞かれると甘いマスクをキリリと引き締めてきっぱりと語った。郭とは同じ台南市出身という事もありライバル意識は相当なものだ。バッテリーキャンプを行う為に台湾入りした稲尾監督は荘と初めて顔を合わせた時の印象を聞かれると「いい面構えをしておる。ライバル意識は大いに結構。台湾のONといった感じ」と言って細い目を更に細めた。日本国内では150km投手として郭の方が知名度は高いが台湾では2人の人気は双璧。昭和58年の世界選手権(ベルギー大会)では荘は5勝0敗で最優秀投手賞に輝いている。昨年のキューバ大会では郭にエースの座を譲ったが荘人気は健在である。

1974年に台湾が世界リトルリーグ大会で優勝した時の監督で荘や郭をよく知る蕭長浪が2人を「郭の方が球は速いが安定感では荘が上。郭は好不調の波があり1年間トータルすると荘の方が勝てるのではないか」と評しているが、この意見が台湾の野球関係者の間では総じて一致している。実際に荘の投球を見た稲尾監督も「フォームに大きな欠点は無い。下半身もしっかりしているし腕はムチのようにしなり、踏み出した足がクロスするから右打者には威圧感を与える。素材として一級品なのは間違いなし」と評価した。何より稲尾監督が魅かれたのは荘の真面目で陽気な性格だった。チームに合流した日から球場での荷物運びを手伝い、昼食時には現地スタッフと選手との通訳を買って出てチームにいち早く溶け込んだ。

荘は1959年2月1日生まれの26歳。バッテリーキャンプ中に誕生日を迎えチームメイトからバースデーケーキをプレゼントされ大喜びしていた。実家は幼稚園を経営しているが、荘のお蔭で入園希望者が増えて父親の登復さんも喜んでいる。5人兄弟の長男で妹の雅恵さん、雅文さん(共に実家の幼稚園の先生)から「日本で活躍して私たちを日本に招待して」とせがまれている。妹思いの荘は「約束するよ。今度台湾に帰って来る時はお土産を沢山買って来るから」と言うくらい仲の良い兄妹だ。台湾棒球界関係者の誰もが「荘は真面目でグラウンドマナーも良い」と口にするくらい誰からも好かれる好青年。酒は嗜む程度でタバコは吸わずギャンブルもやらない男だが最近、恋人と別れたそうで「日本へ行ったら恋人を見つけたい」と気になる発言も。西武入りした郭泰源との台湾対戦は今シーズンの熱っパの目玉対決になるかもしれない。
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