大学入試たけなわ。我が " プロ野球学園 " の生徒たちもキャンプという名の共通一次試験に懸命に取り組んでいる。その中で徐々にハッキリしてきたのが各球団の問題児たち。このまま開幕に突入すれば彼らのいるクラスは苦戦を余儀なくされるだろう。「 プロ野球12学級 」の問題児たちの危険度を探ってみる
キャンプイン早々、広島・古葉監督は山本浩、衣笠の両選手に報道陣を通じてこう注文をつけた。「2人とも昨年以上に働いてくれるのに越したことはないが最低ノルマは打率3割・30本塁打・90打点だよ」と。これを伝え聞いた山本浩は「目標としてその数字は低すぎる。俺は40発・100打点が最低目標だ」と敢然と反発した。古葉監督は昨年とは逆のやり方でベテラン選手のやる気を誘い出す事に成功したようだ。昨年8月に起きた横浜スタジアムでの " 3試合欠場事件 " は山本浩にプロ入り最大のショックと屈辱を味わせた。「どこも故障していないのにベンチに座らされたのはショックだったよ。でもあの経験が自分を救うのは自分しかいない、と教えてくれた。昨シーズン、最終的に30発・90打点をクリア出来たのはあの経験があったからだと思っている(山本浩)」と振り返る。
トレーニング担当の迫丸コーチは「衰えは下半身から来る。ヒザの強化運動とランニング量を分からないように増やしてます」と明かす。迫丸コーチの「走れ、走れ!」の掛け声に昨年までは「ちょっとタンマ」と泣きを入れていたが今キャンプでは一度も口にしていない。「ランニングなんてただ苦しいだけ。でもこれが体力作りの基礎になっているんだから手を抜きたくても抜けんのじゃ」と怒ったように言う山本浩。今の所、古葉監督の作戦は成功している。「開幕から如何にコージを有効に使い、休ませるか。これがウチのポイント」と古葉監督は言う。しかし休ませる事は昨シーズンの例でも分かるように難しい。プライドの高いベテラン選手の場合は非常にデリケートな問題であるのだ。少しでも扱い方を間違えるとチーム自体が空中分解しかねない。
山本浩より慎重を期す必要があるのが福本(阪急)だ。古葉監督と違い鉄拳制裁も辞さない一本気な上田監督だけに一度こじれると修復は厄介だ。今の所は非常に良い関係を保っている2人。福本は1100㌘の重いバットを軽々と扱い、居残り特訓も率先して参加する姿に上田監督も「今年のフクはエエで。気合が入っている」と得意の " エエで節 " を連発している。しかし、やがて2人の前にある問題がやって来るのは間違いない。それは衰えが見え始めた選手をどう対処するか、である。福本は今年で38歳になる。昨シーズン前半は打率2割そこそこに低迷し、実現こそしなかったが上田監督は先発メンバーから外す事を検討していた。長年守り続け愛着があったセンターから移動させられ落ち込んでいた福本が更に自分にとって聖域とも言える一番打者も奪われていたら抜き差しならない事態になっていたかもしれない。
「新人の熊野に使える目途がついた。エエ選手や。福本や蓑田もウカウカしていたらポジションを奪われてしまうで(上田監督)」・・となると福本は二番、もしくはベンチ。「ベテラン選手というのは田淵や山崎(共に元西武)のようにある時を境にガクッと衰える。昨シーズンの福本が西宮球場で『引っ込め、ポンコツ!』と野次られたがウチの看板選手が傷つくのは耐えられん。だからこそ(引き際を)考えてやらんと」と上田監督は語る。だが問題は福本個人だけの話で済まなくなる。チームの功労者をぞんざいに扱っていると誤解されるとチームワークにヒビが入りかねない。山本浩も福本も不調に陥った場合は監督との我慢比べになるわけだが、2人は打てなくても守備は一流なので監督としても我慢出来るかもしれないが守備に不安のある有藤(ロッテ)の場合は命取りになりかねない。
有藤は今シーズン、パ・リーグでは初の大学卒選手で2千本安打達成まで38安打まで迫っている。「チームは優勝、個人では2千本といきたいね(有藤)」と燃えている。だが右翼守備は相変わらず不安がいっぱい。本人が「思い出すのも嫌」という西武戦の平凡な飛球をバンザイして石毛の満塁本塁打を浴びてチームが大敗した " 事件 " の影響は大きく、投手陣に声には出さないが「右方向へは打たれないよう苦心している」との不満が溜まっていたのも事実。悪い事は重なるもので有藤の守備範囲までカバーしてくれた高沢選手が右膝骨折で開幕に間に合わない。「ウ~ン、やっぱり内野の方が良いんだけど守るとしたら一塁。でも一塁には山本功がいるし…」と稲尾監督も困惑顔。一度外野へコンバートして、直ぐに内野に戻したら有藤のプライドを傷つける事になる。球団としては有藤の2千本安打達成をチームの勢いに結びつけたい。「張本の3千本安打の時もチームが波に乗れた(醍醐コーチ)」と。だが外野でエラー連発して負けが増えればチームは崩壊してしまう。