小さい体でデッカイプレー。金森永時は球界の宝
2年ぶりにV奪還したレオ軍団。今季は数多くのプレーにファンは熱狂しただろうが、違う意味で最もファンが熱くなったのは金森選手のあのプレー??だったのでは?とレオ番記者が印象度ナンバーワンに推すのが金森だ。昭和57年に金森がプリンスホテルから西武に入団した時に当時の広岡監督は「ウチのスカウトの能力を疑うよ。あの選手がプロで通用すると本気で思っているのだろうか?」と嘆いた。更に身長173cm(自称)のチビっ子で足も短く " ドンガメ " の愛称だった金森を見てこうも囁いた。「(足が短いから)捕手ならパスボールは少ないかな」と。とにかく広岡監督の金森評は散々だった。
過去3年間で143試合・打率.272・43打点・5本塁打の男が今季は129試合に出場し、打率.312・55打点・12本塁打と一気に開花した。打率は打撃10傑の8位にランクイン。今季は中日から田尾選手が移籍して外野の定位置争いは激化し、それを勝ち抜いての活躍に広岡監督も脱帽だ。そんな金森を有名にしたのが某スポーツニュースの " 珍プレー特集 " 。死球を喰らって『ワォ~』と絶叫し、悶絶する様を見たファンは大笑い。一種の死球パフォーマンスですっかり有名人になってしまった。「最近はあの番組のお蔭でファンレターも増えちゃって(笑)『痛いでしょうけどもっと当たってください』だって。本当に痛いんですから。笑えないっスよ!(金森)」と名前が売れるのも痛し痒し。
今季15死球のうち負けた試合は1試合のみ。「ドンちゃんが当たれば勝てる」とチーム内には新たな伝説も生まれた。昨季は65試合で12死球と2年連続で死球王だが勿論、打撃の方もチームに貢献している。4月25日のロッテ5回戦では延長10回裏に深沢投手からサヨナラ1号。5月5日の阪急5回戦では10対11とリードされた9回裏に山沖投手から逆転サヨナラ3号3ランを放つなど、打って当たってファンを熱狂させた今季だった。12月6日の契約更改では今季の九百万円から二千六百万円に大幅アップを勝ち取った。更改交渉では観客へのアピール度も球団に認められ「来季も僕に出来る野球をやるだけです」と決意を新たにした。もうスター不足なんて言わせない!
周囲に笑いを巻き起こしたカツオくん。あんたが " 大賞 " です
台湾時代からライバルだった西武・郭投手と共に来日して台湾旋風を巻き起こし、見事に2桁勝利した荘投手。陽気で茶目っ気たっぷりの荘は覚えたての日本語で♪きた~の、さかばど~りに~は~♪と細川たかしの『北酒場』を歌ったり、カムバック賞を受賞した村田投手や仁科投手の投球フォームを真似してナインの爆笑を誘ったり今やすっかりチーム内の人気者だ。春季キャンプで同室だった袴田選手は「めちゃめちゃ明るい性格だよ。日本語を教えてくれと言われて俺が教えると直ぐに覚えて、今度は歌を教えてくれと言ってくる。とにかく歌が好きで風呂の中でも何曲も歌ってた。まぁ上手いかどうかは別にして(笑)」と証言する。
面白いだけではなく野球の方もしっかり結果を残した。4月13日の西武戦(川崎)では同点で迎えた9回表から土屋投手の後を受けて登板し、11回まで無失点に抑えた。試合は芦岡選手のサヨナラ安打で勝利し荘が来日初勝利を飾った。3日後の近鉄戦(日生)では初先発して得意のシュート、ナックル、大小のカーブを駆使し猛牛打線を抑えて1失点・8奪三振の好投で完投勝利を挙げた。試合後のインタビューで「郭(西武)には負けたくないし、リリーフは嫌いだからこれからも先発で頑張りたい」と来日当時から世間で騒がれていた郭に対してライバル意識を剥き出しにし、自らの存在を大々的にアピールした。
自信を持って投げた球を「ボール」と判定されると右手で帽子のツバをちょいと持ち上げて天を仰ぐポーズをよくするが、このアクションがロッテファンの間で大流行。そして三振を奪った時は白い歯をこぼしながら笑顔でガッツポーズして喝采を浴びた。「投手陣では兆治(村田)の次に目立った。平和台での近鉄戦みたいな印象に残る投球をしたね。とにかく明るくハツラツとしているからマウンドでも映える」と稲尾監督の評価も高い。投手陣のリーダー村田投手も「カツオはよくやったよ。表情が豊か?ああいうユーモラスな仕草は日本人には出来ないね。来年も今年以上に頑張って欲しいね」とエールを送る。ファンを楽しませた荘は「郭より多く勝ててよかった。俺の勝ちね」とウインクして台湾へ帰って行った。
失敗を恐れず GOING MY WAY こいつはタダモノじゃない
勝負強い打撃と派手なファインプレー。かと思えば何でもないゴロをポロリ。近鉄の内野陣に大石選手とはまた別タイプのニュースターの誕生である。「ボク、自分では皆さんが言うほど守備が下手だとは思っていませんよ」と口を尖らす村上選手。だが今季35失策は2位の石毛選手(西武)の10失策を大きく離して断トツの " エラー王 " だ。しかし村上は屁とも思っていない。9月18日の南海戦は4対25という歴史に残る大敗だった。この試合で村上は3失策を喫したが臆することなく4打数4安打と打ちまくって気を吐いた。これには相手ベンチの穴吹監督も「奴はエエ選手になるで」と思わず呟いた。
契約更改交渉でも「彼はエラーのマイナス査定も多いけどチームへの貢献度は高い(フロント幹部)」と来季は3倍増の九百八十万円に跳ね上がった。また岡本監督は村上と大石との共通点を指摘する。「あの2人はエラーをしたり三振してベンチに帰って来ても一言『スンマセン』と言うと後は他人事のようにふんぞり返ってる。こっちも呆れて何も言う気になれんのよ。あの度胸は大したもんや」と。近鉄には栗橋選手や仲根選手のように考え過ぎて落ち込んでしまう選手がこれまでは多かった。そこに登場したのが " 長嶋タイプ " の陽気で切り替えの早いタイプの2人。村上が順調に成長すれば来季以降の近鉄には大石・村上の陽気で明るい楽しみな金看板が誕生する。
私生活での目立ち方も相当なもので20歳になりたての食べ盛り・育ち盛りだけに人一倍食べて " 寝る子は育つ " の格言通り豪放磊落に生活していた。今オフに合宿所を卒業した先輩の佐々木選手は「デーゲームの時なんか村上の部屋のドアをドンドン叩いて起こすのが僕の役目でした。来年からはその役目から解放されてホッとしています」と胸を撫で下ろしたくらいだ。先輩を目覚まし時計代わりにする神経も並みではない。またシーズン中からマスコミを賑わせてきた外野コンバート説について「せっかくここまでショートを守ってきたんですから絶対に嫌です(村上)」と自分の意見を臆することなくハッキリと言える骨っぽさも持ち合わせている。実質 " 2年目のジンクス " となる来年こそ真価が問われる年になる。