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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 831 週間リポート・近鉄バファローズ

2024年02月14日 | 1977 年 



こうして決まった太田の球宴出場
夢の球宴も終わり、いささか古い話で申し訳ないが太田幸司投手にまつわる裏話をしてみよう。パ・リーグ投手部門のファン投票では村田投手(ロッテ)、山田投手(阪急)に次ぐ3位で得票数は6万1999票。普通の場合はこの順位なら監督推薦で出場は問題ない。ところが人気先行の太田投手だけに全パを率いる上田監督は太田投手の推薦には慎重だった。太田投手は過去7回ファン投票1位で出場しているが監督推薦は一度もない。そして13日の近鉄対阪急戦の後期シーズン3回戦に太田投手が先発に起用された。

メンバー表を見た上田監督は「太田君はまだ6勝しかしていないが相変わらず人気があるねぇ。ファン投票であれだけの得票を得ているのだから監督推薦で選んでも問題はないけど、判断するのは今日のピッチングを見てからにしよう」と決めた。太田投手も「監督推薦で選んでもらえたら僕の実力を認めてもらったことになる。この試合で好投すれば上田監督の印象も良くなるかも」と密かに思っていたのは想像に難くない。選ぶ人と選ばれる人の様々な思いが絡み合い太田投手は勇んでマウンドに上がった。

しかし太田投手の立ち上がりは悪かった。初回いきなり3連打を浴び1失点。ところがこの失点で肩の力が抜けて以降は立ち直った。「僕にとってはリードされて勝利投手を意識せず楽な気分で投げられた」と太田投手は2回から4安打散発の好投を見せて対阪急戦2勝目を上げた。阪急戦で勝ったのは前期シーズン5月8日以来だった。「両サイドに球を散らしたのが良かった。阪急相手にはこうした投球が通用するんですよ」とエースの鈴木啓投手でも勝てない阪急相手に2勝した太田投手は安堵の表情を見せた。

一昨年のプレーオフでは出番さえ無かった太田投手だがその成長ぶりが今シーズンの対阪急戦の成績でよく分かる。「チームにとっても自分自身にとっても大きな勝ち星です。これで上昇気流に乗れそうです」といかにも嬉しそう。確かに大きな勝利だった。オールスター戦出場につながる1勝だからだ。敗戦後に移動のバスに乗る間際に上田監督は「太田君の投球は見事だった。今日の投球内容を見て監督推薦を決めました」と兜を脱いだ。こうして太田投手にとって初めてとなる監督推薦によるオールスター戦出場が決まった。


いい薬です?チョンボ石渡
成長著しい石渡選手がオールスター戦初出場でハツラツプレーを披露するかと思われたが第3戦で大チョンボをやらかした。オールスター戦が始まる前は「僕の出番はそんなに多くないと思うので先輩のプレーを見て勉強します」と控え目だったが、意外と出番は多く大忙しだった。第1・2戦は無難に終えたが第3戦の7回、二死三塁で打者ブリーデン選手(阪神)が打った打球は高く舞い上がった遊飛。落下地点で石渡選手はゆっくり捕球態勢に入ったがポロリと落球してしまった。照明の光が目に入ったのか石渡選手は黙して語らないが、この大失態を薬にして今後に生かしてもらいたいものである。

売りモノ
好投した鈴木啓投手、チョンボの石渡選手など今年のオールスター戦で話題をまいた近鉄勢だったが、玄人筋の拍手を浴びたのがもう一人の " コーちゃん " こと島本選手だ。強肩といわれる外野手は年々少なくなっているが、元投手の島本選手が矢のような見事な返球を見せ称賛された。評論家諸氏も「あの強肩は売りモノになる」と異口同音。当の島本選手は「大した成績を残していない僕を選んでくれたファンの皆さんに何かいいところを見せたかった。肩でも足でも何でもいいのでファンの皆さんが喜んで下されば」とニンマリ。

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