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北海道美術ネット別館

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訂正あり■高橋靖子・八子直子・會田千夏 (2020年9月12~22日、札幌)

2020年10月16日 11時43分30秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 全道展会員で、その中では異色の絵画を精力的に制作している、世代の異なる3人によるグループ展。

 最年長は高橋さん(江別在住)で、1932年(昭和7年)生まれ。
 一貫して抽象絵画を制作しており、90年代には細く短い線で画面をオールオーバーに覆い尽くす画風になりました。21世紀に入ったころから、その線の合間にときどき、その日その日の所感や空模様の文字(日本語)が交じるようになっています。
 いわば日記をつづるように描かれた絵といえますが、それでも個々の文字は、単に文章として意味を伝達しているのではなく、画面を構成する要素として配されているのです。いいかえれば、文字列そのものに意味があることよりも、線や文字が日々少しずつ加わっていくその営為自体が、わたしたちの<生>の暗喩であるのだといえましょう。



 高橋さんが近年さかんに取り組んでいるのは刺繍 し しゅうです。
 ひと針ひと針、糸を布にさし続けていく行為は、彼女がつくり出してきた絵画の画面と共通するものがあると思います。




 「日々の営みの集積」ということでは、會田さんにも共通する性質があります。
 彼女の絵の題には多くの場合、描き上げた日付が記されているからです。

 抽象画で、一見すると、世界から隔絶した絵の世界を築き上げているようにも見えますが、実際には、現実世界と作家の内面との亀裂やへだたりのようなものが、画面に静かな刻印を残しているようでもあるのです。

 ちなみに今回は「2020.9.11」という日付が添えられている作が3点ありました。
 ご本人によれば、搬入の日付であり、筆を置いた日とのことです。

 3人のなかでいちばん多く作品を並べていたのが八子さんです。
 振り返ってみれば、八子さんの作品の特徴として一貫しているのは次の2点かもしれません。

 ひとつは、平面・矩形という絵画の旧来の慣習にまったくこだわりがないこと。
 これは、厳密な理論にしたがって取り組んでいる前衛的な絵画というよりも、自然と、あっけらかんと描いているうちに、従来の枠を飛び出てしまっているということなんだろうと思います。

 もうひとつは、きわめて個人的でローカルな事物や心境を描いていて、そのこと自体がどこかで広い世界とつながっていること。
 お子さんの成長ぶりだったり、札幌市南区の山々のけわしい姿だったり、そういう舞台裏を聞けばなるほどと感じるところはあるのですが、それで彼女の作品世界への理解が飛躍的に深まるのかといわれれば、ちょっとわかりません。
 ただ、個人的な事情を知らなくても、見る側に伝わるものはたしかにあると思うのです。

 4枚目と5枚目の画像は、ギャラリーの中二階にある小部屋のインスタレーション。
 いろいろなモノが置いてあります。




 ギャラリーの中央には、舟のかたちをした大きな立体が設置されていました。

「山を描いているうちに、壁にそぐわなくなってしまった。じゃあ、山の舟でもいいなあ、と」
ということで、側面には、南区らしい急斜面の山が描かれているようです。


 最後の画像は、透明なケースに入った小品です。


 以前と変わりない世界を繰り広げているように見える3人ですが、新型コロナウイルスの感染拡大と「STAY HOME」の日々を通して、微妙な波紋が画面に広がっているのをそこに見て取れるかもしれないと思いました。

※11月追記・訂正。八子さんの作品は、上の部屋全体で一つ、舟を含めた部屋で一つで、全体で2点という数え方が正しいそうです。


2020年9月12日(土)~22日(火)午前11時~午後6時、18・19日休み
ギャラリー門馬(札幌市中央区旭ケ丘2)


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