
札幌生まれで、札幌を拠点に活動した異色の少女漫画家、三原順(1952~95)の原画やグッズを紹介する、故郷では初の展示。
代表作「はみだしっ子」シリーズを主軸に、彼女の世界が手際よくまとめられています。
いま「手際よく」と書きましたが、これは決して、要領よくサクッと、というような意味合いではありません。
長い年月、三原順さんの世界に分け入り、愛し、読み込んできた主催のムーンライティングのお二人だからこそできたことなのでしょう。
あの複雑な「はみだしっ子」のあらすじを見事にまとめていて、しかも、これから読もうとする人にもネタバレにならないように(読んだ時点で新たな衝撃を受けるように、というべきか)なっています。
しかも、入場無料で、会場の99%は撮影自由です。
三原さんのふるさとの方々に気軽に来てもらうことで、原画が新たに見つかったり、新しい情報が得られたりといったことに期待しているそうです。

小学1年生時の冬休みの絵日記もあるなど、とにかく、よくぞここまで集めたものだと思います。
1950~60年代の札幌っ子らしく、双子山にスキーに行った話などがかかれています。
あの時代はまだリフトに乗ることが一般的ではなく、札幌の人たちは、現在の中央区のいくつかの斜面を、人力で登っては滑り降りてくる―というやり方でスキーを楽しんでいたのでした。
冒頭画像にもあるように、粘り強いペンによる原画のもつ力(昨今のパソコンによる出力とは違うのです)をじっくり堪能できることは、いうまでもありません。
もうひとつ、彼女の漫画にあまりなじみのなさそうな人も楽しめそうなのが「札幌の部屋から」のコーナーでしょう。

書斎やアトリエの復元というよりは、彼女の書棚にあった本、愛聴していたレコードやカセットテープ、付録や愛読者プレゼントなどさまざまな形で頒布された「はみだしっ子」グッズ、さらに色紙やスケッチなどが、ところ狭しと並んでいます。
海外文学のみならず、思想や心理、絵本など、幅広い分野の本を読んでいたことが分かり、作品からもその片鱗がのぞかせていた作者の教養の幅広さにあらためて驚かされます。
高校時代に筆者がクラスメイトから指摘されて気づいたことなんですが、「はみだしっ子」の元ネタって、みすず書房の本が多いんですよね。
旧来の精神医療に過激な一石を投じたR.D. レインや、ナチスの強制収容所について書いて世界に衝撃を与えたフランクル「夜と霧」、自閉症児と親の関係を論じたベッテルハイム(後年は批判され、今は顧みられなくなっていますが)などです。
みすず書房は、おそらく日本でも最も良心的なラインナップの書籍を出し続けてきた出版社ですが、その分価格も高めで、当時背伸びして岩波文庫などを読んでいた私たちにとって、あの白い装丁の一群の書物は、あこがれでした。

あと、若い世代にひとこと言っておきたいのですが、壁に並んだレコードや会場で流れていた愛聴曲は、ジェフ・ベック(下段左から2枚目)やビートルズ(右下)、ピンク・フロイド(下段中央)、レッド・ツェッペリン(右列中央)など英米のロックやポップスが大半です。
このブログでも何回か書いてきたはずですが、1970年代、とくに半ば以降は、メジャーレーベルで活動している国内のバンドというのがほぼ皆無で(四人囃子、ダウンタウンブギウギバンドなど、ごく少数)、音楽が好きな若者の多くが英米のロックを聴いていたのです。
当時の任意のFM雑誌やオリコンに載っていたアルバムチャートを見ればわかります。上位20傑とか、ベスト50とかを見れば、半数は欧米の音楽でした。
80年代に入るとYMOとか山下達郎とかRCサクセションなどが出てきて状況はだいぶ変わるのですが、70年代というのは、英米のロックが黄金期で、日本のロックはまだ勃興前という時代だったのです。
「告知」の記事にも書きましたが、筆者は高校時代が「はみだしっ子」の完結と重なっているリアルタイム世代で、とうていこの展示について客観的に書くことはできそうにありません。
ひとついえることは、かつて「はみだしっ子」などを愛読し、札幌にいる人は、絶対に見に行った方が良い、ということです。
書きたいことはほかにも山ほどありますが、このへんで。
2021年7月22日(木)~8月15日(日)午前10時~午後7時、7月28日と8月12日休み
SCARTS スタジオ (札幌市中央区北1西1 札幌芸術文化交流プラザ : onちゃんの挟まっているビル内。地下街オーロラタウン、地下鉄東豊線大通駅から直結)
入場無料
□公式サイト http://moonlighting.jp/sekaiten/
代表作「はみだしっ子」シリーズを主軸に、彼女の世界が手際よくまとめられています。
いま「手際よく」と書きましたが、これは決して、要領よくサクッと、というような意味合いではありません。
長い年月、三原順さんの世界に分け入り、愛し、読み込んできた主催のムーンライティングのお二人だからこそできたことなのでしょう。
あの複雑な「はみだしっ子」のあらすじを見事にまとめていて、しかも、これから読もうとする人にもネタバレにならないように(読んだ時点で新たな衝撃を受けるように、というべきか)なっています。
しかも、入場無料で、会場の99%は撮影自由です。
三原さんのふるさとの方々に気軽に来てもらうことで、原画が新たに見つかったり、新しい情報が得られたりといったことに期待しているそうです。

小学1年生時の冬休みの絵日記もあるなど、とにかく、よくぞここまで集めたものだと思います。
1950~60年代の札幌っ子らしく、双子山にスキーに行った話などがかかれています。
あの時代はまだリフトに乗ることが一般的ではなく、札幌の人たちは、現在の中央区のいくつかの斜面を、人力で登っては滑り降りてくる―というやり方でスキーを楽しんでいたのでした。
冒頭画像にもあるように、粘り強いペンによる原画のもつ力(昨今のパソコンによる出力とは違うのです)をじっくり堪能できることは、いうまでもありません。
もうひとつ、彼女の漫画にあまりなじみのなさそうな人も楽しめそうなのが「札幌の部屋から」のコーナーでしょう。

書斎やアトリエの復元というよりは、彼女の書棚にあった本、愛聴していたレコードやカセットテープ、付録や愛読者プレゼントなどさまざまな形で頒布された「はみだしっ子」グッズ、さらに色紙やスケッチなどが、ところ狭しと並んでいます。
海外文学のみならず、思想や心理、絵本など、幅広い分野の本を読んでいたことが分かり、作品からもその片鱗がのぞかせていた作者の教養の幅広さにあらためて驚かされます。
高校時代に筆者がクラスメイトから指摘されて気づいたことなんですが、「はみだしっ子」の元ネタって、みすず書房の本が多いんですよね。
旧来の精神医療に過激な一石を投じたR.D. レインや、ナチスの強制収容所について書いて世界に衝撃を与えたフランクル「夜と霧」、自閉症児と親の関係を論じたベッテルハイム(後年は批判され、今は顧みられなくなっていますが)などです。
みすず書房は、おそらく日本でも最も良心的なラインナップの書籍を出し続けてきた出版社ですが、その分価格も高めで、当時背伸びして岩波文庫などを読んでいた私たちにとって、あの白い装丁の一群の書物は、あこがれでした。

あと、若い世代にひとこと言っておきたいのですが、壁に並んだレコードや会場で流れていた愛聴曲は、ジェフ・ベック(下段左から2枚目)やビートルズ(右下)、ピンク・フロイド(下段中央)、レッド・ツェッペリン(右列中央)など英米のロックやポップスが大半です。
このブログでも何回か書いてきたはずですが、1970年代、とくに半ば以降は、メジャーレーベルで活動している国内のバンドというのがほぼ皆無で(四人囃子、ダウンタウンブギウギバンドなど、ごく少数)、音楽が好きな若者の多くが英米のロックを聴いていたのです。
当時の任意のFM雑誌やオリコンに載っていたアルバムチャートを見ればわかります。上位20傑とか、ベスト50とかを見れば、半数は欧米の音楽でした。
80年代に入るとYMOとか山下達郎とかRCサクセションなどが出てきて状況はだいぶ変わるのですが、70年代というのは、英米のロックが黄金期で、日本のロックはまだ勃興前という時代だったのです。
「告知」の記事にも書きましたが、筆者は高校時代が「はみだしっ子」の完結と重なっているリアルタイム世代で、とうていこの展示について客観的に書くことはできそうにありません。
ひとついえることは、かつて「はみだしっ子」などを愛読し、札幌にいる人は、絶対に見に行った方が良い、ということです。
書きたいことはほかにも山ほどありますが、このへんで。
2021年7月22日(木)~8月15日(日)午前10時~午後7時、7月28日と8月12日休み
SCARTS スタジオ (札幌市中央区北1西1 札幌芸術文化交流プラザ : onちゃんの挟まっているビル内。地下街オーロラタウン、地下鉄東豊線大通駅から直結)
入場無料
□公式サイト http://moonlighting.jp/sekaiten/