
斜里岳のふもと、知床の近くにある、網走管内斜里町来運の廃校のわきにある元教員住宅にアトリエを構える彫刻家の二部黎(にべ・れい)さん(全道展会員)が、江別市大麻の画材店で個展をひらいています。
もともと、木、石、テラコッタと、なんでもこなすタイプの作家でしたが、今回はテラコッタがメーン。「江別で個展」とあって、野幌粘土を材料に制作しました。
とくに本格的な窯を持っているのではなく、れんがを積み上げただけのかんたんなかまどで焼いているのだそうです。
「美唄から遊びに来てた人がびっくりしてたな。雨の日は焼けないから、天気を予想するのがうまくなりました」

筆者が好きなのは、冒頭の画像の「ふくろうのいる風景」のような、馬の上にフクロウがならんでいる作品。
馬の背に、人間がまたがっている「家族」「ともだち」などのバリエーションもあります。
いずれも、馬が、埴輪を思わせるシンプルでやさしいかたちをしています。
斜里町のあたりは広大な畑作地帯ですが、もちろん農耕馬などは見かけません。ほとんどすべてトラクターに置き換わっています。
「トラクターだと地面にぜんぜん降りないで農作業ができちゃう。じぶんが果たして地に足をつけているか、地面におりることの大切さは-という反省の意味もこめているんです」

ほかに、太陽や鳥などがモティーフになっている、シンプルな壁かけレリーフもあります。

店の奥には、ことしの全道展出品作で、高さ3メートルはありそうな木彫の大作「ふくろうのいる風景」(上の画像)が、あたりを睥睨(へいげい)しているようです。
その左側には、昨年の全道展に出した木彫「翼」が立っています。こちらも高さは2メートルを楽に超える大きさです。
いくつかのパーツに分かれていて、車でかんたんに運べるようになっているそうです。
「もう来年65歳だからね、あんまりむちゃに大きいものは作れない。1歳6カ月の初孫がいるんだけど、もういるだけで人を楽しませるというのは、彫刻家として、考えさせられるよね」
二部さんとはいろんなお話をしました。
へき地教育に情熱を燃やしていた20代、「ロダン、マイヨール、ブールデル展」を見たときの衝撃、30歳で教師を辞めてから春香山の本郷新のアトリエに自作を持って訪ねて弟子入りを願い出た話…。
本郷新が宮の森にアトリエを移すとき(いまの札幌彫刻記念館です)、現地の草刈りもしたそうです。
「死ぬときはゴチャゴチャのいっさいない、すっきりした作品を作りたいよね」
その話は早いですよ、二部さん。
07年11月1日(木)-17日(土)10:00-18:00、日曜休み
カナリヤ(江別市大麻東町15-11)
■二部黎彫刻展(07年6月)
■二部黎木彫展(02年、画像なし)
■二部黎テラコッタ彫刻展(02年)
新札幌駅から、大麻方面行きのJRバスで「大麻12丁目」下車、徒歩1分。
大麻駅からは、北口(メーン玄関)を出て右に曲がり、大麻中央公園を抜け、住宅地図看板のある道を入り(歩行者専用道路に左折しないでください)、大麻福音キリスト教会の先の行き止まりを左折。しばらく行って、セブンイレブンを右折すると「大麻銀座商店街」に出ます。その商店街を突っ切って、さらに直進すると「東町ニュープラザ」なる小さなアーケード街に到達します。カナリヤはその中にあります。15-20分はかかります。
新さっぽろ駅から国道12号を走るジェイアールバス、夕鉄バス、中央バスの「酪農学園大前」から、跨線橋を渡り徒歩10分。
この方のテラコッタの作品はとても好きです。
ちょっとふっくらしたラインがいいかな。
テラコッタ独特のあの夕焼け色の赤色も何故か魅かれます。
二部さんは、60代を迎えて、以前の満艦飾みたいな作風にくらべると、いろんな要素をそぎ落としてシンプルになってきたなあと、しみじみ思います。
今回の馬も、ほのぼのとしています。
saku23さん、今後とも北海道美術ネットをよろしくお願いします。
これからも遊びにいらしてください。