北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

■第59回日本水彩画会北海道支部展 (2018年7月24~29日、札幌)

2018年07月26日 20時43分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 道内の支部展では屈指の歴史を持つ日本水彩画会(日水)の展覧会。
 41人が1ないし2点の水彩画を展示している。

 小谷良「風と雪の後で」(50号)
 完全にモノクロの作品。雪が積もった枝だけを、無地の灰色をバックに描いている。
 「三月の円山公園」(同)も出品。

 館田孝廣「何処へ」(同)
 水彩としては大きな画面に、横に長い枯れた木片(骨にも見える)とその青い影だけが描かれた異色作。題から判断すると、川を流れていく様子だろうか。
 同時出品の「ウトナイ湖、早春」は穏やかな風景画。

 竹山幹子「枯れ葉と」(40号)
 かごに入ったアジサイの花や、つぼ数個がモティーフの静物画。卓上には模様入りのラグが敷かれ、手前中央には2段組みの本が開かれて枯れ葉が置かれている。これと同じ大きさの本が3冊、右側に積まれており、赤い装丁から推測して河出書房新社の世界文学全集のようだ。3冊のうち2冊は背表紙の文字が読み取れ、19世紀英国の小説家姉妹として知られるエミリ・ブロンテの『嵐が丘』とシャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア/詩』であることがわかる。
 この手の全集は戦後の日本で流行したが(小樽美術協会展にも中央公論社の全集をモティーフにした絵がああった)、現在では、池澤夏樹さんが個人編集したもの以外は本屋の店頭からほぼ姿を消し、古書店でももてあましているという。筆者は、これらの全集は、日本人の教養を支えたというよりはむしろ居間のインテリアとして普及したのではないかと思っているが、とりあえず「知的に見えるように」と思っただけでも昔の日本人は今よりはマシだったのかもしれない。

 寺井宣子「室内風景・1965」「室内風景・1991」(いずれも40号)
 題から判断して、2点とも旧作だろうか。
 白い輪郭線と強いタッチでびんが並ぶようすを描いた「1965」は、たしかに60年代っぽい。
 「1991」は、精緻極まるレース模様を全面に配したもの。人物は影だけがレースのカーテンに浮かび上がり、実在するのは風鈴とバラの一輪挿し、白い家具のようなものだけ―という作品。装飾性と、ものの実在を突き詰めて考究していた寺井さんの全盛期?ともいうべき時期の絵だと思われる。

 河合幹夫「湿原 B」(80号)
 色の帯が左右に伸びて重畳する、抽象的な風景画。上部の太陽がアクセントになっている。
 「湿原 A」(50号)も出品。

 久野省司「残雪」(50号)
 早春に残っている雪をじっくり観察して描いている。空を反射して青紫色を帯びた雪解け水が、春の訪れを感じさせる。
 同題の20号も出品。

 それにしても、渋江君子さんがイタドリなどの枯れた草原を描いた「サロベツ、夏が終わって」(50号)、にじみを生かして山容を描写した益満伸子さん「富良野岳・秋」(同)、JR手稲駅南口が題材の岡本善信さん「北の街」(40号)など、函館や小樽なども含め、いながらにして道内各地を旅行できるから、絵画鑑賞っていいなあと思う。

 小樽のベテランだった笹川誠吉さん(1936年生まれ)の遺作「絵付けをする人」(60号)が展示されていた。中東を思わせる街頭で、陶器に絵を描く人の姿を描く。ご冥福をお祈りします。


 他の出品作は次の通り。
 青田淑子さんや栗山巽さん、近藤武義さん・幸子さん、齋藤由美子さん、武田貢さん、志賀迪さんなどいろいろな人が出品しなくなったなあとしみじみ。新顔が増え、この10年で半数以上の顔ぶれが入れ替わったのは、他の団体公募展支部展にはみられない傾向だ。

柴垣 誠  冬の散歩道(50号)
武田美佐江 見ている(50号)
田中町子  踊り子(60号)
森井光恵  せせらぎのメロディー(50号)
谷  勲  春の高島漁港(40号)
及川幸子  鮭干し(60号) 廃屋(40号)
後藤由美子 秋のシンフォニー(50号)
太田喜久代 豊漁(群来て…)(50号)
八幡郁子  ソーイング(50号)
砂山信一  羊蹄山麓の春(50号) 菜の花(40号)
関 興一  北大第2農場・初夏(50号)
岸上芳江  八紘学園のサイロ(50号)
佐々木恵子 収穫(50号)
北野清子  水宴(80号)
中井戸紀子 情景…萌し(60号)
大藤淳子  待春(60号)
富士田夏子 花菖蒲の頃(60号)
三井幸子  冬の窓(60号)
寺西冴子  野の歌(50号)作品(20号)
三留市子  運河慕情(60号)
西江恭子  優しい刻(40号)Passionate 2(20号)
佐藤信子  陽光(白い花)(60号)
舎川栄子  藍染めと静物(60号)
桂島和香子 秋の高原祭(60号)
川端良子  ひと休み(60号)
 
 

2018年7月24日(火)~29日(日)午前10時~午後5時(初日は正午~)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)




関連記事へのリンク(画像なし)
第57回日本水彩画会 北海道支部展(2016)
日本水彩画会北海道支部50周年記念展 (2010)
第49回日本水彩画会北海道支部展(2008年)
第48回(2007)
第46回(2005)
2003年(7月19日の項)
01年(21日の項)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。