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北海道美術ネット別館

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■福山桂子第11回作陶展「広島 1945.8.6 そして今」ー世界各地の戦争で傷つく人達に共感を示して (8月2~15日、深川)=2024夏の旅(2)

2024年08月09日 12時51分29秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(承前)

 札幌の医師で陶芸にも取り組む福山桂子さんが深川では初となる個展を開いています。
 会期は、広島、長崎の二つの原爆投下の日を含み、終戦記念日が最終日です。 
 
 
 実は筆者も今回初めてご本人にお会いするまで知らなかったのですが、福山さんは普通の器などは以前から作っています。
 今回は深川では最初の展示なので、陶器なども並べるつもりでしたが、アートホール東洲館の渡辺貞之館長の助言をいれて、原爆や戦争、平和を主題にした造形作品に限って展示することになりました。

 福山さんは佐賀県の出身ですが、広島にも長く住んでいました。
 1945年(昭和20年)当時、叔父さんが広島在住で被爆し、8月8日に亡くなりました。

 また、叔母さんは戦後65年たち、原爆の影響による症状が出たといいます。
 そのことに衝撃を受けた福山さんは、原爆をテーマに作品づくりを手掛けるようになりました。

 2枚目の画像は、その最初の作品「(赤核)²=0」。(2014年。「²」は2乗)
 「核爆発の後は不毛の地(=0)が残される」
というキャプションがついています。
 しかし福山さんは「投下時の被害ももちろんですが、体内に入った物質による内部被ばくによる影響も見逃せない」と話します。
 突起の先端から内部を除くと赤い核が見えます。
 

 焼けただれた人間の頭部も臆することなく表現しています。
 核兵器の惨禍に対するまっすぐな憤りが伝わってきます。
 原爆を詠んだ俳句や章の一節を記した紙も貼られています。

 
 福山さんの作品全体を通してみると、戦争反対を訴える作品も多いのですが、平和を祈るあたたかくてやわらかな造形もたくさんあるのです。

 「鳩よ、飛べ」は、平和のシンボルを主題にした分かりやすい作品。
 白いハトは、もこもこしています。なんだかシマエナガっぽくて、かわいらしいと思います。

 昨年の個展で見たときよりも、鳥の数がずいぶん増えていました。
 


 



 ロシアによるウクライナ侵攻を批判した「凍裂」。
 筆者は2022年の北海道陶芸協会展でこのインスタレーションを見て、強く印象に残りました。


 戦車や人、ビルなどおびただしい数のパーツが並んでいますが、同協会展のときと配列はだいぶ変わっています。



  
 会場には、本州の知人が送ってくれたという、陶製の手榴弾しゅりゅうだんの資料も並べられていました。実物も一つ展示されています。

 これは先の大戦末期、旧制川越中学の生徒たちが勤労動員で造っていたもので、いまも近くの河原には破片が大量に捨てられているのだそう。
 旧制中学といえば、いまの中学1年から高校2年までの年齢にあたる男子生徒が通っていた学校です。
 少年たちは1944~45年ともなると、労働力不足を補うために授業そっちのけで、工場で働かされていました(筆者は、このあたりの話は北杜夫のエッセーなどで読みました)。

 火薬が暴発して死傷した少年もいたそうです。
 金属がないから陶器で手榴弾を造るという、いかにも日本の資源不足を物語る事例です。

 こういうことがあるからやはり戦争はしてはいけないし、もっといろいろ歴史を知らなくてはいけない…。福山さんがそういう意味のことを話していました。
 まったく同感です。


2024年8月2日(金)~8月15日(木)午前10時~午後6時、月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)
アートホール東洲館(深川市1条9番)

https://www.keikofukuyama.com/

過去の関連記事へのリンク
福山桂子第8回作陶展「祈り」■第9回作陶展「祈り II」 (2023年8月1~6日/8~13日、札幌)



・JR深川駅前

・沿岸バス、中央バス「深川十字街」から約350メートル、徒歩5分

※駐車場もあります



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