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北海道美術ネット別館

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■笹山峻弘展 インド・チベット紀行 (5月18日まで)

2008年05月16日 23時54分03秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 礼文出身で札幌在住の日本画家、笹山さんの、2年ぶりの個展です。
 テーマが「チベット」とあって、なんだか非常にタイムリーな感じがしますが、これはずっと取り組んでいる題材で、べつにねらったわけではありません(当たり前だ)。

 昨年6月、チベットの首都ラサまでの鉄道が開通したので、ツアーで行ってきたのだそうです。
(笹山さんは、インド領西チベットでスケッチなどをするときは、定宿があって長く滞在するので、ツアーでは行きません)
 ラサは、漢民族がわが物顔でふるまい、とてもいやな気持ちになった-と話していました(チベットを訪れた日本人で、おなじ感想を抱く人って多いんですよね)。

 冒頭の画像のうち左は、註文を受けて描いたふすま絵。
 もとめに応じて、画面上の方の群青色には、ラピスラズリを使っているのだそうです。 
 ラピスラズリは宝石としても知られる鉱物で、澄んだ深い青が洋の東西を問わず珍重されてきました。当然、かなり高価です。
 右側の「ボタラ宮殿」は、ほぼ墨1色。画面下方の空白が効果的です。
 あえて色を使わず、墨の濃淡で勝負するあたりは、笹山さんが一般的な日本画家とちょっと異なるところだと思います。
 全体として笹山さんは、いまの日本画家としてはわりあい墨を多く使う方だと思いますが、もちろん、墨で安直に輪郭線を引いて事足れりという人でないのは、いうまでもありません。




 こちらは、着彩した「ボタラ宮殿」。
 背景の色がちょうどいい具合に沈んでいて、手前の宮殿がモノクロ調なのと、絶妙の対比を見せています。




 手前の「ラマエル・ゴンバ」は、インド領です。
 会場のこのへんには、インド領内で取材したものがならんでいるようです。
 背景の曼荼羅もひとつひとつ手描きです。
 ひとつひとつ微妙に異なる仏様の表情を見てゆくと、精緻な作業の膨大な積み重ねであることがわかり、笹山さんの画家としての根性が感じられます。




 上の絵の拡大図です。
 まるで、古代の洞窟や寺院の跡から発掘されたような、古色あふれる曼荼羅絵です。
 古い感じを出すため笹山さんは、8割方完成した段階で絵をもんで、絵の具の一部をわざと剥落(はくらく)させるのだそうです。しかし、へたをすると、絵の具の大半が落ちることもあり、なかなかリスクの大きな技法です。


           

 左から「リキール・ゴンバ」「シェーの空」「熱砂幻想」。
 「シェーの空」は、はためく旗がチベットらしいなあと思います。

 このほか、ガンジス川などに材を得た作品もあります。

 笹山さんは、個展ではインド、チベットに焦点を絞っていますが、稚内信金のカレンダーの絵を毎年担当して利尻富士を描いたり、コンサドーレ札幌を応援する太鼓に絵を描いたり、宗谷地方の公共施設の装飾も行うなど、幅広く活躍しています。

 作品は次のとおり。

母子像 65.0×46.0
ムガール時代 20.0×17.0
サルナート 45.0×53.0
レーの空 73.0×91.5
ミトゥナ像 27.0×32.6
ラマエル・ゴンバ 73.0×91.5
ラダック 41×32
ボタラ宮殿 120.0×180.0
海岸寺院月光 45.0×25.0
チェムディ・ゴンバ 73.0×91.5
ムガールの夜 19.0×23.0
ボタラ宮殿 73.0×91.5
ラマエル風景(ふすま)
光る河 50.0×91.5
ボタラ宮殿 161.5×274.5
リキール・ゴンバ 60.0×72.0
シェーの空 38.0×91.5
熱砂幻想 60.5×72.5
イダム 80.0×25.0
ボタラ宮殿 181.5×183.0
イダム 80.0×25.0
チベット・チベット 63.0×114.0
熱風 33.4×24.2
ボタラ宮殿 59.0×90.0
ヤムナード バスコー・ゴンバ 45.0×25.0
象物語 23.0×16.0
朝の河 80.0×39.0


 なお、笹山さんとは関係ありませんが、やはりチベットをテーマにした写真展「blind LIO PHOTOGRAPHY EXHIBITION」が17-26日、中央区旭ヶ丘2のギャラリー門馬アネックスでひらかれます。


08年5月13日(火)-18日(日)10:00-19:00(最終日-17:00)
スカイホール(中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階 地図B)

笹山峻弘展(06年)
第2回 風展(05年) ■こちらにも画像
笹山峻弘個展(04年、画像なし)
笹山峻弘日本画展(03年、画像なし)
笹山峻弘個展 インド紀行(02年)


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