
年に1度、北広島市が開く企画展。
以前は市内の陶芸家松原成樹さんがキュレーター役を務めていましたが、ことしは市内にある星槎道都大で版画を教える内藤克人さんが担当したようです。
写真そっくりのハイパーリアリズム絵画は画壇のひとつの傾向として定着しつつありますが、単にそういう絵を集めただけではない4人展で、興味深い展覧会になりました。
竹津昇さんは水彩連盟、道展の会員のほか、各種グループ展への出品、千歳美術協会会長など精力的に活動しています。
今回の4人のなかでは発表機会がダントツに多いのは、下のリンク先を見てもわかると思います。
冒頭画像は最新作の「屋敷林」(F100)。
トタン屋根や草を細い線の集積で表現し、木々は黒くシルエットで抜いています。
2枚めの画像は左から
「屋根裏」(M150、2020)
「サイロの前」(F130 、2023)
「父のいたところ A」(F100、2018)
水彩画としてはかなりの巨大さです。
竹津さんは2014年ごろから22年ごろまで、ボール紙をコラージュして貼り付け、質感をたくみに表現する試みに取り組んでおり「父のいたところ A」もその一点。
画像はありませんが「父のいたところ B」(F100、2024)は細かい点描で描かれており、「屋敷林」とあわせ、竹津さんの実験的手法が次のターゲットに移っているようです。
道内にはハイパーリアリズム系の画家が何人かいますが、道展で毎年見ることができる人は減っており、野澤桐子さんはその数少ない一人です。
この作品は「人形遣い」(F100、2021)。
古い酒場を舞台に向かい合う2人の人物を描いていますが、背後の棚に置かれた「風神雷神」の絵がコープさっぽろのマスコットキャラクター「トドック」のくまになっていたり、僧侶兼版画家の I さんが小さく描かれていたりするなど、遊び心が満載です。
右の男性が電動ドリルを手にしている一方、左の人物は四角いかばんの中に足をいれてひざまづいていて、なんの場面なのかは謎めいています。
次の画像は、左から
「Honey Bitter」(2008、F120)
「人形遣い」
「徒然w」(2018、F100)
「木蓮」(2023、F100)
まるでフィルムノワールの一場面を思わせる、非日常的な雰囲気の中の人物が登場する絵が多かった野澤さんですが、「木蓮」になると、背景が簡素になってきたのが目立ちます。
描写を適度に省き、すみずみまで細かくかき込んでいたころとは画風がいくらか変わってきているのは確かです。
ちなみに題は、いすの左下の床に、モクレンの白い花びらが落ちていることに由来するのでしょうか。
盛岩唯史さんは水彩です。
克明な点描で画面全体を覆い、林のなかに放置された古い廃バスの車体を描いて、道展や水彩連盟展で頭角を現しました。
画像の右は「少年の日の思い出」。
左は「還る時を待つ」。
いずれも2022年のF80です。
鉄板のゆがみや、浮き出たさびまでが、びっしりと打たれた精緻な点描によって表現されています。
最新作の「故郷の廃バス」。
縦構図のF100と、これまでで最大の大きさです。
盛岩さんもはじめからこの技法だったわけではないようです。
画像にはありませんが、出品作の「松の絨毯」(F40、2018)や「夏の樹」(F40 、2019)は、たしかに写実的ではありますが、このような点描ではありません。
佐々木はるみさんは最若手。
北海道教育大岩見沢校の学生さんのようです。
なかでもこの「夢中」(F100、2022)は、初めて見たときに強い印象を受けました。
背景は、空に鉄道が走り、街のあかりやイラスト的な月がきらめいて、メルヘン調のやさしい雰囲気が漂います。
しかし、寝台の手前にいる羊たちは、半分は羊毛布団に変身していて、手前にいる個体群は半分が骨と化していています。
寝台の中に人はだれも寝ておらず、影だけが見えています。
かわいらしさと残酷さの同居した画面だといえましょう。
リアリズムと いうよりは、 シュルレアリスムといったほうがふさわしいような気がします。
次の画像、左は「白昼夢」(2019、F50)。
高校生のときの作品とは思えない、高い描写力です。いくつも転がるリンゴが青春の心性を反映しているようです。
右は「明晰夢」(2023、F100)。
奥へと視線を導く構図や、揺れるカーテンの導入による動感の描写が巧みです。
わざとゆがんだ床面が奇妙さを増しています。
いずれの作も、夜や夢、眠りといった不合理な世界への親和性を感じられます。
ほかに
「深い夢の中」(SM)
「陽が落ちるころ」(F10)
「blueな気持ち」(SM)
「よく出来たストーリー」(F100)
「卒業制作 自画像」(F10)
「LOOP」(S12)
2024年11月13日(水)~17日(日)午前10時~午後5時(最終日~3時)
北広島市芸術文化ホール・ギャラリー(北広島市中央6)
□竹津さんのブログ(toledoのブログ) https://ameblo.jp/toledo817
過去の関連記事へのリンク
※野澤さん出品
【告知】New Eyes 視線のはなし (2022~23年、画像なし)
■モーション/エモーション 活性の都市 (2016、画像なし)
【告知】野沢桐子展 (2012)
第39回北海道芸術デザイン専門学校OB作品展 (2007、画像なし)
第77回道展 (2002、画像なし)
※竹津さん出品
■第17回 水彩連盟北海道支部展 (2023)
■第7回グループ水煌展 (2022)
■第6回一水会北海道出品者展 (2020、画像なし)
■第5回一水会北海道支部展 (2019)
■第5回グループ象展(2018)
■第6回グループ水煌展 (2018、画像なし)
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■第3回グループ象(しょう)展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013)
【告知】第2回一線北海道五人展(2012) ■一線北海道3人展(2010)=竹津さん出品
■第28回 一線美術会北海道支部展 (2010年5月、画像なし)
■第40回記念北海道教職員美術展(2010年1月)
■竹津昇水彩画展-原風景を求めて (2009年11月)
■第2回グループ水煌 (2009年9月、画像なし)
■竹津昇水彩画展 (2009年6月)
■第27回一線美術会北海道支部展(2009年)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展(2008年11月、画像なし)
■第26回一線美術会北海道支部展
■第1回グループ水煌(すいこう、2007年 画像なし)
■竹津昇・石垣渉2人展(2007年)
■竹津昇・Arcosスケッチ展(2007年)
■第25回一線美術会北海道支部展 (2007、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展(2006年)
■竹津昇『スペイン・スケッチ展』(2006年)
■竹津昇スペインスケッチ展(2006年)
■竹津昇エストラマドゥーラ・スケッチ展(2006年、画像なし)
■第36回北海道教職員美術展(2006年、画像なし)
■竹津昇・アンダルシア・スケッチ展(2005年)
■竹津昇スケッチ展(2004年、画像なし)
■第22回一線美術会北海道支部展(2004、画像なし)
■竹津昇水彩展 MADRID FREE TIME(水彩の旅)=2003年、画像なし
■竹津昇水彩スケッチ展(2002年、画像なし)
以前は市内の陶芸家松原成樹さんがキュレーター役を務めていましたが、ことしは市内にある星槎道都大で版画を教える内藤克人さんが担当したようです。
写真そっくりのハイパーリアリズム絵画は画壇のひとつの傾向として定着しつつありますが、単にそういう絵を集めただけではない4人展で、興味深い展覧会になりました。

今回の4人のなかでは発表機会がダントツに多いのは、下のリンク先を見てもわかると思います。
冒頭画像は最新作の「屋敷林」(F100)。
トタン屋根や草を細い線の集積で表現し、木々は黒くシルエットで抜いています。
2枚めの画像は左から
「屋根裏」(M150、2020)
「サイロの前」(F130 、2023)
「父のいたところ A」(F100、2018)
水彩画としてはかなりの巨大さです。
竹津さんは2014年ごろから22年ごろまで、ボール紙をコラージュして貼り付け、質感をたくみに表現する試みに取り組んでおり「父のいたところ A」もその一点。
画像はありませんが「父のいたところ B」(F100、2024)は細かい点描で描かれており、「屋敷林」とあわせ、竹津さんの実験的手法が次のターゲットに移っているようです。

この作品は「人形遣い」(F100、2021)。
古い酒場を舞台に向かい合う2人の人物を描いていますが、背後の棚に置かれた「風神雷神」の絵がコープさっぽろのマスコットキャラクター「トドック」のくまになっていたり、僧侶兼版画家の I さんが小さく描かれていたりするなど、遊び心が満載です。
右の男性が電動ドリルを手にしている一方、左の人物は四角いかばんの中に足をいれてひざまづいていて、なんの場面なのかは謎めいています。

「Honey Bitter」(2008、F120)
「人形遣い」
「徒然w」(2018、F100)
「木蓮」(2023、F100)
まるでフィルムノワールの一場面を思わせる、非日常的な雰囲気の中の人物が登場する絵が多かった野澤さんですが、「木蓮」になると、背景が簡素になってきたのが目立ちます。
描写を適度に省き、すみずみまで細かくかき込んでいたころとは画風がいくらか変わってきているのは確かです。
ちなみに題は、いすの左下の床に、モクレンの白い花びらが落ちていることに由来するのでしょうか。

克明な点描で画面全体を覆い、林のなかに放置された古い廃バスの車体を描いて、道展や水彩連盟展で頭角を現しました。
画像の右は「少年の日の思い出」。
左は「還る時を待つ」。
いずれも2022年のF80です。
鉄板のゆがみや、浮き出たさびまでが、びっしりと打たれた精緻な点描によって表現されています。

縦構図のF100と、これまでで最大の大きさです。
盛岩さんもはじめからこの技法だったわけではないようです。
画像にはありませんが、出品作の「松の絨毯」(F40、2018)や「夏の樹」(F40 、2019)は、たしかに写実的ではありますが、このような点描ではありません。

北海道教育大岩見沢校の学生さんのようです。
なかでもこの「夢中」(F100、2022)は、初めて見たときに強い印象を受けました。
背景は、空に鉄道が走り、街のあかりやイラスト的な月がきらめいて、メルヘン調のやさしい雰囲気が漂います。
しかし、寝台の手前にいる羊たちは、半分は羊毛布団に変身していて、手前にいる個体群は半分が骨と化していています。
寝台の中に人はだれも寝ておらず、影だけが見えています。
かわいらしさと残酷さの同居した画面だといえましょう。
リアリズムと いうよりは、 シュルレアリスムといったほうがふさわしいような気がします。

高校生のときの作品とは思えない、高い描写力です。いくつも転がるリンゴが青春の心性を反映しているようです。
右は「明晰夢」(2023、F100)。
奥へと視線を導く構図や、揺れるカーテンの導入による動感の描写が巧みです。
わざとゆがんだ床面が奇妙さを増しています。
いずれの作も、夜や夢、眠りといった不合理な世界への親和性を感じられます。
ほかに
「深い夢の中」(SM)
「陽が落ちるころ」(F10)
「blueな気持ち」(SM)
「よく出来たストーリー」(F100)
「卒業制作 自画像」(F10)
「LOOP」(S12)
2024年11月13日(水)~17日(日)午前10時~午後5時(最終日~3時)
北広島市芸術文化ホール・ギャラリー(北広島市中央6)
□竹津さんのブログ(toledoのブログ) https://ameblo.jp/toledo817
過去の関連記事へのリンク
※野澤さん出品
【告知】New Eyes 視線のはなし (2022~23年、画像なし)
■モーション/エモーション 活性の都市 (2016、画像なし)
【告知】野沢桐子展 (2012)
第39回北海道芸術デザイン専門学校OB作品展 (2007、画像なし)
第77回道展 (2002、画像なし)
※竹津さん出品
■第17回 水彩連盟北海道支部展 (2023)
■第7回グループ水煌展 (2022)
■第6回一水会北海道出品者展 (2020、画像なし)
■第5回一水会北海道支部展 (2019)
■第5回グループ象展(2018)
■第6回グループ水煌展 (2018、画像なし)
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■第3回グループ象(しょう)展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013)
【告知】第2回一線北海道五人展(2012) ■一線北海道3人展(2010)=竹津さん出品
■第28回 一線美術会北海道支部展 (2010年5月、画像なし)
■第40回記念北海道教職員美術展(2010年1月)
■竹津昇水彩画展-原風景を求めて (2009年11月)
■第2回グループ水煌 (2009年9月、画像なし)
■竹津昇水彩画展 (2009年6月)
■第27回一線美術会北海道支部展(2009年)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展(2008年11月、画像なし)
■第26回一線美術会北海道支部展
■第1回グループ水煌(すいこう、2007年 画像なし)
■竹津昇・石垣渉2人展(2007年)
■竹津昇・Arcosスケッチ展(2007年)
■第25回一線美術会北海道支部展 (2007、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展(2006年)
■竹津昇『スペイン・スケッチ展』(2006年)
■竹津昇スペインスケッチ展(2006年)
■竹津昇エストラマドゥーラ・スケッチ展(2006年、画像なし)
■第36回北海道教職員美術展(2006年、画像なし)
■竹津昇・アンダルシア・スケッチ展(2005年)
■竹津昇スケッチ展(2004年、画像なし)
■第22回一線美術会北海道支部展(2004、画像なし)
■竹津昇水彩展 MADRID FREE TIME(水彩の旅)=2003年、画像なし
■竹津昇水彩スケッチ展(2002年、画像なし)