
札幌の古民家改造アトリエ「0地点」を拠点とする画家の堀江理人さんの個展。
コンビニエンスストアで夜勤のアルバイトをしていた際に、1日1枚ずつ制作したドローイング184枚(筆者が数えたので、違うかもしれない)が壁に並んでいます。
モチーフはすべて商品で、店頭風景などはありません。おもに菓子やパン、総菜などが横位置の同じ大きさの紙に描かれています。
コンビニ労働を主題にした芸術作品といえば、何をおいても村田沙耶香の小説「コンビニ人間」が思いうかぶのですが、堀江さんの個展も、単に商品がかかれているだけなのに、見る人の思考をさまざまに触発します。
日常の当たり前の存在(作者の言葉をかりれば、インフラ)となっているコンビニが、実は当たり前でもなんでもないのでは? という問題提起といえるでしょうか。
例えば、これだけの枚数があるのに、同じ商品はほとんどありません。
もちろんナショナルブランドの商品もありますが、チェーン本部が開発して送り込んでくる独自のプライベートブランドがかなりの割合を占めます。
それらには膨大な開発と広告の経費が投下され、各店舗に流通させられ、多くはヒット商品として定着することなく店頭から消えていくのです。世の中にそれほど新しいネタはなくて(絵画と同じですね)、どら焼きともちを組み合わせるなどニッチな商品がどんどん編み出されていきます。
もちろん、そういうプロセスとサイクルがないと、魅力的な商品は生まれないわけですが、私たちの限られたマンパワー(人手)や資源を割くところはそこなのかよ、という問いはどうしても念頭に残ってしまいます。
いくら厳重な在庫管理を行っていたとしても、廃棄される食品の量も、相当なものに上るだろうということは容易に推察できます(ここで描かれているのも、そういう捨てられる運命の食品)。
あるいは、24時間開けているために生じるマンパワーの問題もあります。
北海道ではまだそうでもないですが、東京都心では、外国人店員がいないコンビニを見つけることは難しくなっています。
しかし、急速な高齢化と円安(外国人労働者にとってはそれは賃金の目減りを意味する)により、働き手を確保することも、日増しに難しくなっていくでしょう。
店員がなかなか確保できなければ、すでに働き始めている人のシフト(勤務の当番)はますます過密になっていきます。学生が、シフトをどんどん入れられて、授業の出席に響くという話もよく耳にします(そんなときはサボればいいと思うのだけれど、最近の若い人は従順というか優しいというか…)。
少し前に「ワンオペ」が流行語になったことがありました。
火の車状態になっている現場はあちこちにあるのではないでしょうか。
(堀江さんも、かつてはそういうコンビニで働いていたのでしょう)
過密状態にある都市部のコンビニですが、その半面、その存在が「命綱」になっているところもあります。
留萌管内初山別村などは、村内のスーパーマーケットが閉店してしまったために、村がセイコーマートを誘致しました。
…と、このように、いろいろなことを考えさせられるのです。
或る意味で、コンビニには、現代日本が抱える諸問題が集約されてあらわれているということができるかもしれません。
筆者はこれまで、この作者の個展やグループ展を拝見してきましたが正直なところあまりピンとこなくて、今回の個展が段違いに「こっちに伝わってきた」と感じさせるものだったことを、附記しておきます。
おもしろかったです。
11月3~5、10~12、17~19、24~26日午後3~8時
0地点(札幌市中央区北1東11)
□0地点 @0_chiten_
□堀江理人 https://mitito1.wixsite.com/website
□ツイッター(X) @mitito5
・ジェイ・アール北海道バス、中央バス「北1条東10丁目」で降車し、家具店の左側の小道に入ってすぐ
※onちゃんのビル(SCARTS)前にある「時計台前」停留所から、ジェイ・アール北海道バスは、1(新札幌駅行き)、2、7、32の各系統に乗車。中央バスは「55」「57」(以上、白石営業所行き)「90」(江別駅前行き。1日平日5往復、土日4往復のみ)
・中央バス「苗穂駅前」から約350メートル、徒歩5分
※「56」(札幌駅前発、豊畑行き)、「東6」(バスセンター前発、豊畑、東豊畑行き)
・JR苗穂駅の南口から約400メートル、徒歩6分
・地下鉄東西線「バスセンター前」駅10番出入り口から約950メートル、徒歩13分
コンビニエンスストアで夜勤のアルバイトをしていた際に、1日1枚ずつ制作したドローイング184枚(筆者が数えたので、違うかもしれない)が壁に並んでいます。
モチーフはすべて商品で、店頭風景などはありません。おもに菓子やパン、総菜などが横位置の同じ大きさの紙に描かれています。
コンビニ労働を主題にした芸術作品といえば、何をおいても村田沙耶香の小説「コンビニ人間」が思いうかぶのですが、堀江さんの個展も、単に商品がかかれているだけなのに、見る人の思考をさまざまに触発します。
日常の当たり前の存在(作者の言葉をかりれば、インフラ)となっているコンビニが、実は当たり前でもなんでもないのでは? という問題提起といえるでしょうか。
例えば、これだけの枚数があるのに、同じ商品はほとんどありません。
もちろんナショナルブランドの商品もありますが、チェーン本部が開発して送り込んでくる独自のプライベートブランドがかなりの割合を占めます。
それらには膨大な開発と広告の経費が投下され、各店舗に流通させられ、多くはヒット商品として定着することなく店頭から消えていくのです。世の中にそれほど新しいネタはなくて(絵画と同じですね)、どら焼きともちを組み合わせるなどニッチな商品がどんどん編み出されていきます。
もちろん、そういうプロセスとサイクルがないと、魅力的な商品は生まれないわけですが、私たちの限られたマンパワー(人手)や資源を割くところはそこなのかよ、という問いはどうしても念頭に残ってしまいます。
いくら厳重な在庫管理を行っていたとしても、廃棄される食品の量も、相当なものに上るだろうということは容易に推察できます(ここで描かれているのも、そういう捨てられる運命の食品)。
あるいは、24時間開けているために生じるマンパワーの問題もあります。
北海道ではまだそうでもないですが、東京都心では、外国人店員がいないコンビニを見つけることは難しくなっています。
しかし、急速な高齢化と円安(外国人労働者にとってはそれは賃金の目減りを意味する)により、働き手を確保することも、日増しに難しくなっていくでしょう。
店員がなかなか確保できなければ、すでに働き始めている人のシフト(勤務の当番)はますます過密になっていきます。学生が、シフトをどんどん入れられて、授業の出席に響くという話もよく耳にします(そんなときはサボればいいと思うのだけれど、最近の若い人は従順というか優しいというか…)。
少し前に「ワンオペ」が流行語になったことがありました。
火の車状態になっている現場はあちこちにあるのではないでしょうか。
(堀江さんも、かつてはそういうコンビニで働いていたのでしょう)
過密状態にある都市部のコンビニですが、その半面、その存在が「命綱」になっているところもあります。
留萌管内初山別村などは、村内のスーパーマーケットが閉店してしまったために、村がセイコーマートを誘致しました。
…と、このように、いろいろなことを考えさせられるのです。
或る意味で、コンビニには、現代日本が抱える諸問題が集約されてあらわれているということができるかもしれません。
筆者はこれまで、この作者の個展やグループ展を拝見してきましたが正直なところあまりピンとこなくて、今回の個展が段違いに「こっちに伝わってきた」と感じさせるものだったことを、附記しておきます。
おもしろかったです。
11月3~5、10~12、17~19、24~26日午後3~8時
0地点(札幌市中央区北1東11)
□0地点 @0_chiten_
□堀江理人 https://mitito1.wixsite.com/website
□ツイッター(X) @mitito5
・ジェイ・アール北海道バス、中央バス「北1条東10丁目」で降車し、家具店の左側の小道に入ってすぐ
※onちゃんのビル(SCARTS)前にある「時計台前」停留所から、ジェイ・アール北海道バスは、1(新札幌駅行き)、2、7、32の各系統に乗車。中央バスは「55」「57」(以上、白石営業所行き)「90」(江別駅前行き。1日平日5往復、土日4往復のみ)
・中央バス「苗穂駅前」から約350メートル、徒歩5分
※「56」(札幌駅前発、豊畑行き)、「東6」(バスセンター前発、豊畑、東豊畑行き)
・JR苗穂駅の南口から約400メートル、徒歩6分
・地下鉄東西線「バスセンター前」駅10番出入り口から約950メートル、徒歩13分