
所属する会派(団体公募展)や地域を超え道内のベテラン具象画家が集まった「グループ環」。
穏やかな画風の絵が多く、絵画ファンの人気を毎年集めています。
第1回からの会場になってきたスカイホールは、エレベーターを降りるとショーウィンドウがあり、そこにも平面作品が展示できるようになっています。
スカイホールは3分の1ずつ仕切って使えますが、グループ環は毎回、全室使用なので、ショーウィンドウも全部使っています。
左から
安達久美子「大雪」(F12)
佐藤光子「黄のコスチューム」(F20)
合田典史「巨木」(F15)
合田さんは新道展会員。
ふだんは輪郭線を生かした小樽などの風景画が多いのですが、今作は輪郭線を排してオーソドックスな描法で自然をとらえています。
ここからは、会場内の展示作です。
特に記していない場合は油彩です。
右はグループ環代表、中吉功さん(道展会員)。
3点とも「北風景・湖沼」と題して、中吉さんが得意とする、広漠とした汽水湖や湖沼の風景を描いています。P30、F30、F8です。
薄い紫色が効果をあげているのも、この画家らしいです。
北海道には太平洋・オホーツク海沿いにこのような湖がいくつも点在しています。サロマ湖や能取湖は有名ですが、観光地化していない湖も多く、旅情を誘います。
左は水彩画家の小堀清純さん。
白日会、日本水彩画会の会員で、道彩展でも活躍しています。
「青い扉(小樽運河)」(F40)は、今春の白日会に出品した80号の別バージョンです。小堀さんは、さびの浮いた扉が描きたかったもので、80号はまわりの壁が広くなりすぎてしまった―といいます。
「対象の質感を大事にしたいですね」
と小堀さん。したがって、同時出品の「晴天の積丹半島」(F40)のようなきれいな絵は、例外的だということです。ほかに「窓辺の静物」(F8)。
右は香取正人さん(新道展会員)「早春」(F40)。
香取さんは、道内外各地に風景を取材していますが(ただし、いかにも名所や絶景ではないところが多い)、この「早春」は珍しく、自宅からさほど離れていない札幌・発寒川緑地の一角が題材です。
体調を崩したことなどもあって完成までにいつになく長い期間を要し、苦心した作品だと話しておられましたが、スピード感あるタッチや濁りのない色調などは、香取さんらしさあふれる風景画になっています。
ほかに「ウポポイ遠望」(F20)と「新篠津風景」(SM)。
中吉さんと香取さんはグループ環の創設時メンバーです。
そのとなりは、順に、合田さんの「港」(F50)、「利尻風景」(F8)、「小樽風景」(F30)。
写真ではわかりづらいでしょうが、こちらは輪郭線を生かした画風です。
会場で配っていた「私の制作」という印刷物には
「画面を構成する様々なものにそこに存在する意味を持たせていくよう心掛けているが、描けば描くほど自分のイメージが拡散していき先に進めないことが多い」
とあります。
明るい画面のなか、たしかに、船や雲などいろいろなモチーフが、よく考えられて配置されていると思います。
左は佐藤光子さん(新道展会員)の「憧れ」(F50)。
「赤いドレスの女」(P30)、「午後のひと時」(F8)と続きます。
人物は比較的写実的に描いていますが、思い切って左に寄せ、背景はおおまかな筆触を生かして色彩が乱舞しているのがユニークです。
のこる2点は北山寛一さん。
中央は、少年時代を過ごした炭鉱町・三笠市幌内を振り返った「ランドスケープ(ホロナイ鳥瞰)」(F6、ペン・水彩)。
右は「ランドスケープ(海を望む丘)」(S30)。
同じタイプの、遠くに日本海を望む、野の花が咲き乱れた美しい丘の風景の絵を、21世紀初めごろに北山さんが描いていたと記憶しています。
よく目を凝らすと、野原の中には少年と少女が小さく描かれています。
また、カーブする道をたどっていくと、小屋があり、その向こうに海が鈍く輝いています。
筆者にはなんともユートピア的な美しい光景だと感じられます。
会場で配っていた目録には「元全道展」とありましたが、北山さんはかつて住んでいた函館の団体公募展である赤光社展の会員です。10月に予定されている赤光社の第100回展への出品を目指しているそうです。
右の2点は白崎博さん(無所属)の「芽吹く時」(S4)と「カンナ」(1303×652)。
一般的には「日本画」という呼称になじみがありますが、目録には「膠彩」と書いてあります。
画材に国名を入れるのも、よく考えると不思議な慣習なので、近年よく用いられるようになった用語です。
縦構図で、粘り強く低い目線で自然に対峙しています。
ほかに「野影 ー移り行く時ー」(1167×652)も出品。
左は北山さんで「ランドスケープ(森)」(F50)。
シラカバ林を、明暗を生かしためりはりある構図でとらえています。
左から、枝広健二さん(道展会員)の「跨線橋」(F50)、「コーヒーミルとほおずき」(SM)、「北の岬」(P30)。
以前よりも対象の風景を単純化した構図で、色の対比もはっきりしたものになっている印象を受けました。
グループ環は昔から、全道展系のフォービスム的な絵柄の描き手が少ないので(斎藤洪人さんは惜しくも亡くなってしまいました)、こういう絵があると、全体の幅が広がって、良いと思います。
右は水彩で複数の裸婦を描く岩佐淑子さん(新道展会員)の「穏やかな時 その2」(P40)。
軽快に筆を走らせるのではなく、辛抱強く筆を置いて画面づくりをしているようです。
ほかに「穏やかな時 その1」(F30)、「廃屋(冬)」(F3)。
左は山田則意さん(道展会員)の「ふる里風景」(F30)。
冬の農村風景でしょうか。低い太陽光線を浴びて全体に黄色味を帯びているのが印象的です。
ほかに「DRUM」(F50)と「卓上静物」(F6)。
右は猪狩肇基さん(道展会員)の「行進のとき」(F8)と「運河沿いのテラス」(F50)。
小堀さんの絵の、となりの倉庫を描いているそうです。
やわらかく穏やかな調子は、この作者ならでは。牛や馬もよくモティーフにしています。
ほかに「ラベンダー摘み」(F30)。
左は小杉千賀子さん(新道展会員)の「雨」(F40)。
アクリルと水彩の併用です。
他の「水源地の冬」(F40)と「春うらら」(F6)が明るい風景画だったのに対し、こちらはあまり見かけないタイプの色調で、ヤドリギがはびこる木々をじっくりと描いています。
「心象風景」という語でまとめるのは安易かもしれませんが、心に迫ってくる風景です。
先述の「私の制作」という紙には
「絵にしてみたいなと思った風景をそのままの感動で描くことも大事だと思うのですが、もう少し考えて、要らないものを取り除き、突き詰めた表現を追求していくのが今の目標です」
とあります。
中央は安達久美子さん(道展会員)の「錦秋」(F8)、その右は「新緑の頃」(F30)。
安達さんは川をテーマに描き続けています。
ほかに「雪どけ」(F50)。
2024年6月25日(火)~30日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)
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■第16回 グループ環(Twitter)
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【告知】第14回“グループ環”絵画展 (2013)
【告知】第13回“グループ環”絵画展
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■第9回
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左から
安達久美子「大雪」(F12)
佐藤光子「黄のコスチューム」(F20)
合田典史「巨木」(F15)
合田さんは新道展会員。
ふだんは輪郭線を生かした小樽などの風景画が多いのですが、今作は輪郭線を排してオーソドックスな描法で自然をとらえています。
ここからは、会場内の展示作です。
特に記していない場合は油彩です。

右はグループ環代表、中吉功さん(道展会員)。
3点とも「北風景・湖沼」と題して、中吉さんが得意とする、広漠とした汽水湖や湖沼の風景を描いています。P30、F30、F8です。
薄い紫色が効果をあげているのも、この画家らしいです。
北海道には太平洋・オホーツク海沿いにこのような湖がいくつも点在しています。サロマ湖や能取湖は有名ですが、観光地化していない湖も多く、旅情を誘います。
左は水彩画家の小堀清純さん。
白日会、日本水彩画会の会員で、道彩展でも活躍しています。
「青い扉(小樽運河)」(F40)は、今春の白日会に出品した80号の別バージョンです。小堀さんは、さびの浮いた扉が描きたかったもので、80号はまわりの壁が広くなりすぎてしまった―といいます。
「対象の質感を大事にしたいですね」
と小堀さん。したがって、同時出品の「晴天の積丹半島」(F40)のようなきれいな絵は、例外的だということです。ほかに「窓辺の静物」(F8)。

右は香取正人さん(新道展会員)「早春」(F40)。
香取さんは、道内外各地に風景を取材していますが(ただし、いかにも名所や絶景ではないところが多い)、この「早春」は珍しく、自宅からさほど離れていない札幌・発寒川緑地の一角が題材です。
体調を崩したことなどもあって完成までにいつになく長い期間を要し、苦心した作品だと話しておられましたが、スピード感あるタッチや濁りのない色調などは、香取さんらしさあふれる風景画になっています。
ほかに「ウポポイ遠望」(F20)と「新篠津風景」(SM)。
中吉さんと香取さんはグループ環の創設時メンバーです。
そのとなりは、順に、合田さんの「港」(F50)、「利尻風景」(F8)、「小樽風景」(F30)。
写真ではわかりづらいでしょうが、こちらは輪郭線を生かした画風です。
会場で配っていた「私の制作」という印刷物には
「画面を構成する様々なものにそこに存在する意味を持たせていくよう心掛けているが、描けば描くほど自分のイメージが拡散していき先に進めないことが多い」
とあります。
明るい画面のなか、たしかに、船や雲などいろいろなモチーフが、よく考えられて配置されていると思います。

左は佐藤光子さん(新道展会員)の「憧れ」(F50)。
「赤いドレスの女」(P30)、「午後のひと時」(F8)と続きます。
人物は比較的写実的に描いていますが、思い切って左に寄せ、背景はおおまかな筆触を生かして色彩が乱舞しているのがユニークです。
のこる2点は北山寛一さん。
中央は、少年時代を過ごした炭鉱町・三笠市幌内を振り返った「ランドスケープ(ホロナイ鳥瞰)」(F6、ペン・水彩)。
右は「ランドスケープ(海を望む丘)」(S30)。
同じタイプの、遠くに日本海を望む、野の花が咲き乱れた美しい丘の風景の絵を、21世紀初めごろに北山さんが描いていたと記憶しています。
よく目を凝らすと、野原の中には少年と少女が小さく描かれています。
また、カーブする道をたどっていくと、小屋があり、その向こうに海が鈍く輝いています。
筆者にはなんともユートピア的な美しい光景だと感じられます。
会場で配っていた目録には「元全道展」とありましたが、北山さんはかつて住んでいた函館の団体公募展である赤光社展の会員です。10月に予定されている赤光社の第100回展への出品を目指しているそうです。

一般的には「日本画」という呼称になじみがありますが、目録には「膠彩」と書いてあります。
画材に国名を入れるのも、よく考えると不思議な慣習なので、近年よく用いられるようになった用語です。
縦構図で、粘り強く低い目線で自然に対峙しています。
ほかに「野影 ー移り行く時ー」(1167×652)も出品。
左は北山さんで「ランドスケープ(森)」(F50)。
シラカバ林を、明暗を生かしためりはりある構図でとらえています。

左から、枝広健二さん(道展会員)の「跨線橋」(F50)、「コーヒーミルとほおずき」(SM)、「北の岬」(P30)。
以前よりも対象の風景を単純化した構図で、色の対比もはっきりしたものになっている印象を受けました。
グループ環は昔から、全道展系のフォービスム的な絵柄の描き手が少ないので(斎藤洪人さんは惜しくも亡くなってしまいました)、こういう絵があると、全体の幅が広がって、良いと思います。
右は水彩で複数の裸婦を描く岩佐淑子さん(新道展会員)の「穏やかな時 その2」(P40)。
軽快に筆を走らせるのではなく、辛抱強く筆を置いて画面づくりをしているようです。
ほかに「穏やかな時 その1」(F30)、「廃屋(冬)」(F3)。

左は山田則意さん(道展会員)の「ふる里風景」(F30)。
冬の農村風景でしょうか。低い太陽光線を浴びて全体に黄色味を帯びているのが印象的です。
ほかに「DRUM」(F50)と「卓上静物」(F6)。
右は猪狩肇基さん(道展会員)の「行進のとき」(F8)と「運河沿いのテラス」(F50)。
小堀さんの絵の、となりの倉庫を描いているそうです。
やわらかく穏やかな調子は、この作者ならでは。牛や馬もよくモティーフにしています。
ほかに「ラベンダー摘み」(F30)。

左は小杉千賀子さん(新道展会員)の「雨」(F40)。
アクリルと水彩の併用です。
他の「水源地の冬」(F40)と「春うらら」(F6)が明るい風景画だったのに対し、こちらはあまり見かけないタイプの色調で、ヤドリギがはびこる木々をじっくりと描いています。
「心象風景」という語でまとめるのは安易かもしれませんが、心に迫ってくる風景です。
先述の「私の制作」という紙には
「絵にしてみたいなと思った風景をそのままの感動で描くことも大事だと思うのですが、もう少し考えて、要らないものを取り除き、突き詰めた表現を追求していくのが今の目標です」
とあります。
中央は安達久美子さん(道展会員)の「錦秋」(F8)、その右は「新緑の頃」(F30)。
安達さんは川をテーマに描き続けています。
ほかに「雪どけ」(F50)。
2024年6月25日(火)~30日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
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