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NHK朝ドラ「なつぞら」の山田天陽(吉沢亮)に絵画を指導した村山之都を勝手に顕揚する

2019年09月06日 08時43分57秒 | つれづれ日録
 NHKの「連続テレビ小説 なつぞら」で、神田日勝をモデルにしたとされる画家・山田天陽(吉沢亮)が登場する場面で筆者が驚いたのは、農業高校の演劇部の背景画が出てくる場面だった。
 本物そっくりのよくある写実ではなく、神田日勝的な骨太のリアリズムでもなく、といって日本の洋画壇によくある日本的フォービズムでもない。ピカソでもエコール・ド・パリでも日展でもない、それでいて難解さゆえに敬遠したくなる画風でもない、オリジナリティあふれる画面がそこにあったからだ。

 急いでNHKのウェブサイトを確認すると、そこに小さな文字で「絵画制作・指導 村山之都」とあった。

 なるほど。
 これがどういうツテで決まった人選か、筆者は知らない。
 ただ、筆者としては、この画家が、道内在住および道内出身・首都圏在住の画家・美術家を糾合して始まった「サッポロ未来展」を、はじめの10年近く牽引していた実力派のひとりであることを知っていたから、あらためて感服したのだ。

 村山之都さんは1969年、旭川生まれ。
 早大を卒業後、武蔵野美大に入り直し、大学院を修了したという経歴の持ち主。
 道内では「サッポロ未来展」のほか、小樽の「かなた Circulation」展にも出品していた。
 札幌時計台ギャラリーでの個展は2005年で、運悪く筆者は札幌にいない時期で、拝見していない。

 人物や室内・都市の風景が、一見リアルにも見えながら、さまざまな面を配置し、重ねあい、互いに影響させあいながら、画面を構築していく。色数の多い中で、省筆と描き込みの絶妙なバランスをとりつつ、情報量は多いにもかかわらず明確な言語的主題を打ち出すことは巧妙に回避して、それでいて見る者の視線を離さない。
 こんな高度な芸当をやり続けている画家が、それほどたくさんいるとも思えない。

 9月に入る頃から、山田天陽が最期を迎えるという展開になった。
 そこでテレビの画面に登場したのは、日勝の「馬」を思わせつつも、全く別の「馬」であり、日勝の「室内空間」を参照しながらも、全然画風もベクトルも異なる自画像の大作であった。
 代表作2点に、似ているし、まったく似ていない。
 これがとんでもない離れ業であることは、それほど絵画にくわしくない人だって、実感できるはずだ。

 にもかかわらず、たとえば、次の北海道新聞の記事(9月4日付「こだま」)にまったく名が登場しないのは、ちょっとかわいそうな気がする。

 【帯広】NHK連続テレビ小説「なつぞら」で、十勝ゆかりの画家神田日勝をモデルにした山田天陽が、劇中で最期に完成させた馬の絵と、天陽の姿が描かれた絵の公開が3日、帯広市の真鍋庭園で始まった。

 絵はNHKから帯広観光コンベンション協会に無償譲渡され、同庭園に展示された。天陽は主人公に影響を与えた重要な人物。俳優吉沢亮さんが演じ、3日の放送で“死去”した。

 4日から献花台が設けられるが、既に花を供えるファンも。(以下略)


 ご本人のウェブサイトには、まもなく、9月16~22日に東京・銀座の「あかね画廊」(フェイスブックページ→ https://www.facebook.com/pages/category/Art-Gallery/%E3%81%82%E3%81%8B%E3%81%AD%E7%94%BB%E5%BB%8A-551132098338702/ )で個展を開く旨が載っているが、「なつぞら」のことは全く記載がない。

 筆者としては、彼のことが「なつぞらの絵画指導担当」として知られるようになれば、それはそれで良いけれど、そんな枕詞抜きでもっと知られる画家になってほしいと切に願う。 
 これほど「誰にも似ていない現代の洋画」を描き続けている力量の持ち主は、そんなに多くはないはずだから。



□ 村山之都 OFFICIAL HOME PAGE www.shitsu-murayama.com/


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