まずおわびしなくてはならないのは、別エントリですでに書きましたが、筆者が、2会場のうち、「ギャラリー門馬」会場を「ギャラリー門馬アネックス」だと、すっかり勘違いしていたことです。
北海道美術ネットの本館のほうには、正しく書かれていますが、「北海道美術ブログ」のほうは、誤っていました。
もし筆者と同様、間違えた方がいらしたら、ほんとうにすいません。
さて、ことし6月に亡くなられた門馬よ宇子さんは、画家・芸術家として活躍しましたが、他の作家のサポートにも積極的でした。自宅をギャラリーとして開放していたのも、そのあらわれです。
貯めた資金を、若手作家を対象にした賞を創設してそれに用いたい-という夢は、昨年ご本人からお聞きしていました。ご本人は実現を見ることなく亡くなられましたが、第1回は意外と早くかたちになったという印象があります。
このアワードのことを耳にしたとき、まず思い出したのが、1990年代後半にひらかれていた「サッポロ・アート・アニュアル」です。
1999年は見た記憶がないのですが、96-98年のアニュアルには、渋谷俊彦さん、池田緑さん、渡邊慶子さん、中橋修さんといった実力の持ち主が出品した一方、古畑古幡靖さん、坂東史樹さん、新明史子さんらの新しい才能が登場するきっかけとなり、この時代の札幌のアートシーンに大きな刻印をのこしたアワードであったことはまちがいありません。
今回のFMMアワードを「サッポロ・アート・アニュアル」とくらべなくてはならない理由はないのですが、比較した場合、やはり後者の会場で坂東さんや新明さん、古畑さんの作品を一見して
「これは文句なしに受賞だろうなあ」
と感じたときのことを思い出すと、やはり、全体の水準という点(というか、コンセプトの明確性)ではすこし見劣りがするのは否定できないような気がします(※)。
筆者の予感のとおり? 今回は、2度にわたる審査の結果、最優秀賞の該当はなく、優秀賞に笠見康大さん、大島慶太郎さん、鈴木謙彰さん、奨励賞に太田博子さんと織笠晃彦さんが選出されるという結果になりました。
冒頭の画像は、CAI会場。
笠見さんの絵は、奥の壁の、右から2番目です。
ことしの道展と同様、マゼンタと青の星のような形が、画面いっぱいに広がっています。
CAIには、山本雄基さんの絵もありました。
道展の出品作が、画面の大半を白く塗りつぶした作品で、それでも賞を受けたのですが、このアワードのほうが、全面にさまざまな色斑がポップに浮き沈みしていて、力が入っているように見えます。
冒頭画像で、笠見さんの絵の右となりに架かっているのは、この2人の、道教大の油彩教室での後輩に当たる西田卓司さんの作品。
全面にひろがるドットや、青や黄色の切片が、機械のような奇妙な感じをかもし出しています。
大島さんの映像作品も、CAIのパソコンで見られるようになっていました。
元は16ミリフィルムの作品のようです。
フィルムの失敗(ブレ、ボケ、現像ムラ)などに着目した、実験的映像です。
大島さんは、道教大の映像デザイン出身で、同世代には優秀な卒業生が多いのですが、在学中にイベント「北海道映像の新世代」をひらくなど、この世代の中心的存在として活躍しています。
門馬のほうは、玄関をあけるとすぐにKensyoこと鈴木謙彰さんの作品がありました。
女性の写真を、金網で額装したものです。
以前は、廃墟系的な写真とテキストによる作品にとりくんでいた鈴木さんは、近年はヌードを含む女性の写真がおもなフィールドになっています。それも、ポルノグラフィというよりも、或る種の世紀末的な物語性を感じさせるものです。
ちなみに、賞には漏れましたが、筆者がわりとすきだったのが、この絵。
中里麻紗子麻沙子さんです。
赤、茶、黒を配したというだけの絵ですが、いまの季節にあっているように感じました。深い世界観がつたわってきます。
出品者は次のとおり。合田さんは、当初予定ではCAIに展示される予定だったようですが、実際には門馬にありました。
ギャラリー門馬
石倉美萌菜「最強のアピールコスチュームを着用して愛の告白をする「わたし」」
kensyo.「the outside of coccon」
haruka「ライン」
齋藤枝里「不在証明」
sali「夢中遊行」
佐藤史恵「a notice board」
織笠晃彦「のめのん」
内藤日奈「空言ファンシーファミリー」
中里麻沙子「最初に森があった」
柿崎秀樹「パフォーマンスする抽象」
木村有希「intersecting Sign-yellow」
jobin「空面(そらも)」
斎藤由紀恵「だるまちゃん」
合田尚美「宇宙が作られ、地球ができ、私たちは生きている」
CAI現代芸術研究所
大島慶太郎「blur」
冨田香代子「触媒」
紅露周平「社会の渦」
阿部百子「7時」
沢田千香子「カラクル」
佐藤一明「灼熱ストーブ「鎮火」」
笠見康大「つぶれる風景」
高橋杏奈「Tabibito VII」
山本雄基「みえないみえる」
チQ「踊り明かそう 激しいチ核の中で」
太田博子「ピロートーク」
金谷繁寿「Happy Icecream」
西田卓司「レイヤーペインティング」
07年11月13日(火)-20日(火)13:00-19:00
GALLERY 門馬(中央区旭ケ丘2)
CAI現代芸術研究所(中央区北1西28 地図D)
□公式サイト http://www.fixmixmax.com/award/
□EXTraCt from WOrLds http://kensyo-web.net/
■アウトレンジ キタ 2007
■笠見康大個展「背中の時間」
■北海道教育大学札幌校 視覚・映像デザイン研究室展(04年)
■カルチャーナイトフィーバー(03年。大島さんがワークショップ)
■鈴木謙彰個展#4「P.U.」 (04年)
■鈴木謙彰個展#3 Parametric eyes(03年)
(※ 20日、一部改稿しました。
※12月 中里さんの名前が誤っていたので訂正しました。どうもすいませんでした。※08年1月、古幡さんの名を訂正。重ね重ねすいません)
北海道美術ネットの本館のほうには、正しく書かれていますが、「北海道美術ブログ」のほうは、誤っていました。
もし筆者と同様、間違えた方がいらしたら、ほんとうにすいません。
さて、ことし6月に亡くなられた門馬よ宇子さんは、画家・芸術家として活躍しましたが、他の作家のサポートにも積極的でした。自宅をギャラリーとして開放していたのも、そのあらわれです。
貯めた資金を、若手作家を対象にした賞を創設してそれに用いたい-という夢は、昨年ご本人からお聞きしていました。ご本人は実現を見ることなく亡くなられましたが、第1回は意外と早くかたちになったという印象があります。
このアワードのことを耳にしたとき、まず思い出したのが、1990年代後半にひらかれていた「サッポロ・アート・アニュアル」です。
1999年は見た記憶がないのですが、96-98年のアニュアルには、渋谷俊彦さん、池田緑さん、渡邊慶子さん、中橋修さんといった実力の持ち主が出品した一方、
今回のFMMアワードを「サッポロ・アート・アニュアル」とくらべなくてはならない理由はないのですが、比較した場合、やはり後者の会場で坂東さんや新明さん、古畑さんの作品を一見して
「これは文句なしに受賞だろうなあ」
と感じたときのことを思い出すと、やはり、全体の水準という点(というか、コンセプトの明確性)ではすこし見劣りがするのは否定できないような気がします(※)。
筆者の予感のとおり? 今回は、2度にわたる審査の結果、最優秀賞の該当はなく、優秀賞に笠見康大さん、大島慶太郎さん、鈴木謙彰さん、奨励賞に太田博子さんと織笠晃彦さんが選出されるという結果になりました。
冒頭の画像は、CAI会場。
笠見さんの絵は、奥の壁の、右から2番目です。
ことしの道展と同様、マゼンタと青の星のような形が、画面いっぱいに広がっています。
CAIには、山本雄基さんの絵もありました。
道展の出品作が、画面の大半を白く塗りつぶした作品で、それでも賞を受けたのですが、このアワードのほうが、全面にさまざまな色斑がポップに浮き沈みしていて、力が入っているように見えます。
冒頭画像で、笠見さんの絵の右となりに架かっているのは、この2人の、道教大の油彩教室での後輩に当たる西田卓司さんの作品。
全面にひろがるドットや、青や黄色の切片が、機械のような奇妙な感じをかもし出しています。
大島さんの映像作品も、CAIのパソコンで見られるようになっていました。
元は16ミリフィルムの作品のようです。
フィルムの失敗(ブレ、ボケ、現像ムラ)などに着目した、実験的映像です。
大島さんは、道教大の映像デザイン出身で、同世代には優秀な卒業生が多いのですが、在学中にイベント「北海道映像の新世代」をひらくなど、この世代の中心的存在として活躍しています。
門馬のほうは、玄関をあけるとすぐにKensyoこと鈴木謙彰さんの作品がありました。
女性の写真を、金網で額装したものです。
以前は、廃墟系的な写真とテキストによる作品にとりくんでいた鈴木さんは、近年はヌードを含む女性の写真がおもなフィールドになっています。それも、ポルノグラフィというよりも、或る種の世紀末的な物語性を感じさせるものです。
ちなみに、賞には漏れましたが、筆者がわりとすきだったのが、この絵。
中里
赤、茶、黒を配したというだけの絵ですが、いまの季節にあっているように感じました。深い世界観がつたわってきます。
出品者は次のとおり。合田さんは、当初予定ではCAIに展示される予定だったようですが、実際には門馬にありました。
ギャラリー門馬
石倉美萌菜「最強のアピールコスチュームを着用して愛の告白をする「わたし」」
kensyo.「the outside of coccon」
haruka「ライン」
齋藤枝里「不在証明」
sali「夢中遊行」
佐藤史恵「a notice board」
織笠晃彦「のめのん」
内藤日奈「空言ファンシーファミリー」
中里麻沙子「最初に森があった」
柿崎秀樹「パフォーマンスする抽象」
木村有希「intersecting Sign-yellow」
jobin「空面(そらも)」
斎藤由紀恵「だるまちゃん」
合田尚美「宇宙が作られ、地球ができ、私たちは生きている」
CAI現代芸術研究所
大島慶太郎「blur」
冨田香代子「触媒」
紅露周平「社会の渦」
阿部百子「7時」
沢田千香子「カラクル」
佐藤一明「灼熱ストーブ「鎮火」」
笠見康大「つぶれる風景」
高橋杏奈「Tabibito VII」
山本雄基「みえないみえる」
チQ「踊り明かそう 激しいチ核の中で」
太田博子「ピロートーク」
金谷繁寿「Happy Icecream」
西田卓司「レイヤーペインティング」
07年11月13日(火)-20日(火)13:00-19:00
GALLERY 門馬(中央区旭ケ丘2)
CAI現代芸術研究所(中央区北1西28 地図D)
□公式サイト http://www.fixmixmax.com/award/
□EXTraCt from WOrLds http://kensyo-web.net/
■アウトレンジ キタ 2007
■笠見康大個展「背中の時間」
■北海道教育大学札幌校 視覚・映像デザイン研究室展(04年)
■カルチャーナイトフィーバー(03年。大島さんがワークショップ)
■鈴木謙彰個展#4「P.U.」 (04年)
■鈴木謙彰個展#3 Parametric eyes(03年)
(※ 20日、一部改稿しました。
※12月 中里さんの名前が誤っていたので訂正しました。どうもすいませんでした。※08年1月、古幡さんの名を訂正。重ね重ねすいません)