室蘭の陶芸家、毛利史長(ふみおさ)さんは、ことしはずいぶん札幌で発表の機会を持ちました(偶然らしいですが)。
今回は、10月の2人展でならべたオブジェや絵画のほか、青白磁や粉引の親しみやすいうつわも展示しています。
冒頭の画像で机の上に並んでいるのは、砕いた陶土を表面に貼り付け、文字を刻印した「SALAD DADA」のシリーズ。
題名は、しゃれと言うか、言葉遊びです。
机の下には、じぶんの顔をかたどりした「VACANT HEAD」のシリーズが置かれています。(「ROCKな陶」のエントリ参照)
また、会場中央には、先の2人展では会場の高い位置に置かれていた「SEN-MEN-KI」のちょっと怖いインスタレーションが鎮座していました。
キャンバスのかわりにコルクボードを用い、陶芸の作業に使うサンドペーパーや写真などをコラージュして貼り付けた絵画は大小11点。いずれも「MY MUSIC DRAWING」と題がついています。
毛利さんは大学(愛知県芸大)で陶芸を専攻しましたが、以前は絵が描きたくて、陶芸と並行してできないだろうかと考えたこともあったそう。しかし、実際は陶芸の材料などにお金がかかるので、油絵を描くのはやめて、コルクボードにしたのだと話しておられました。
やたらと画鋲が使われており
「見に来た人には、使いすぎだ-と言われるんです」
と毛利さんは苦笑していました。画鋲は、ぴかぴかしてカッコイイのと、音楽=ロック=革ジャンに鋲…みたいなイメージからきているのだそうです。
「あまり考えず、衝動に任せてやっています」
80年代のニューペインティング(ニューエキスプレッショニズム)からの影響を問うと、たしかに時代的にはぴったり重なっているとのことで、ペンク、バスキア、日比野克彦、横尾忠則の名を挙げていました。
ことしの札幌での展観では、わりとオブジェが中心でしたが、今回はふつうに日常使える器もけっこうあります。
ぐいのみ、長皿、カップなどです。
お値段もわりとお徳だと思います。
こちらは一般的な陶芸ふうの名前がついていて、クラックした陶土をつけた作品のほうが「CARCKING GLOBE VASE」などと題されているのは、やはり毛利さんの意識の中で、後者のほうが「ロックな作品」だということになっているからでしょうか。
筆者は、毛利さんの口から「衝動」などということばがついて出るのを聞くと、ついロックンロールだなあ、などと思ってしまうのです。
07年11月15日(木)-20日(火)11:00-19:00(最終日-17:00)
石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1 地図A)
□むろらん高砂窯 http://www.takasagogama.com/
■毛利史長・河合利昭 陶二人展「産土不一致」(07年12月)
■ROCKな陶 3PIECE展(07年6月、画像なし)
■第7回生まれ出ずる土塊(つちCLAY)展(07年4月、画像なし)
■第5回同展(03年、画像なし)
北海道では、うつわ(それもちょっと高め)を作る人は大勢いますが、毛利さんのように果敢に造形に挑んでいく人はごく少数です。
見る側から無責任に言わせてもらえば、毛利さんのような陶芸家もいないと、じつにつまりません。
今後も楽しい作品をおねがいします。よろしくです。