老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

方向音痴

2015-12-04 14:16:03 | 俳句


 夫の用事の車に便乗をして隣の街に。運動不足の解消に歩くつもり。
今日は今年、一番の冷え込みで車を降りると、たちまち、北風に吹き飛ばされそうになる。
夫と二時間半後に図書館で待ち合わすことに。

少し歩くと、いつもは車で走り過るから、気が付かなかった、火の見櫓がある。
傍の畑には、一センチくらい出た芽を、烏が何羽もきて、啄んでいる。

      山を背に火の見櫓や風しまく

      冬の畑なに啄むか群からす




 薔薇の花が咲いている。
写真を撮ろうするが、風がきついから、大きく揺れてピントが合わない。
茎立の、何かしらないけれど野菜が菜の花になっている。白菜系の種類だろう。黄色がよく目立つ。
いつもは暖かい地方だから、咲いたのだろうけれど、今日の寒さに震えている。

       菜の花のひとかたまりが冬の土手

       茎立の野原に光あまねける




 しばらく歩くと、四方は畑の中に太陽光パネルが設置されている。
 仔猫が鳴くような声は水鳥。ミユウーミユーと風に声が乗ってくる。

       太陽光パネル遠嶺眠りをり

       水鳥の声をたよりに道曲がる



 またしばらく歩く。
私の背の高さとおなじくらいに枇杷の花と、檀の実がある。
檀の実は朱く、少しはぢけているのもある。

       枇杷の花見えざる羽虫いつもをり

       檀の実辺ふうつと辺見じゅんのこと

 河俳句会は角川春樹の妹さんの辺見じゅんさんの忌日を まゆみ忌として修している。



この辺りで、私は方向音痴だから、道がわからなくなったことに気がついた。
いくら行っても、図書館の青い屋根が見えてこない。
車を降りた時点で、図書館まで三キロの表示があった。

門にシーサーを乗せた家がある。
写真を撮りながら、のんびりと歩いていたが、うかうかとしておれない。青い屋根を探さなくては。

       息継ぎの短きもがり笛なりき

       いくたびも北風が帽子をさらひゆく

       数へ日やお百度詣り黙々と

       川越えて電線撓むもがり笛




 やっと見覚えのある通りに出た。
骨董屋がある。お隣は花屋。パチンコ店。警察と並ぶ。

      骨董屋覗く吾かげ冬ぬくし

      パチンコ店呼び出す声す師走かな



やっと琴電の長尾線の踏切に。レトロな電車が来る。
いつものことながら、土地の人に道を尋ねる。電車で二タ駅 ありますよ、と言われたときは一度に疲れがでてきた。
三キロの道をあちら、こちら、右に左に曲がったものだから、図書館に着いたときは、車を降りてから、二時間もかかていた。

      冬ざるる鉄路きしませ電車過ぎ

 

図書館に着いたときは汗びっしょり。泣きたいようにうれしかった。
道を尋ねた青年が、「気をつけて行って下さいよ」と言ってくれたのも、嬉しかった。  

        
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする