線翔庵日記



おまつり、民謡、三絃、名水、温泉、酒、そして音楽のこと…日々感じたことを綴ります。

2つのミンゾク

2007年09月12日 09時34分39秒 | 日々雑感
ミンゾク音楽と耳で聞いただけでは分かりにくいが、2つある。民族音楽と民俗音楽だ。民族音楽の方は、民族固有で所有してきた音楽、民俗音楽の方は、民間伝承されてきた音楽である。耳だけでは分かりにくいので、民族音楽はエスニック音楽、民俗音楽の方はフォークロアの音楽とすれば、分かりやすいかも。

もちろん民族音楽と民俗音楽とがかぶるところはある。例えば、雅楽《越天楽》は、日本の民族音楽ではあるが、民間伝承されてきたものではないので民俗音楽ではない。民間伝承されてないという観点から考えれば、近世邦楽、尺八の曲なども民族音楽であって、民俗音楽ではない。一方、《江差追分》《木曽節》といった民謡や、各地の獅子舞や神楽といった民俗芸能に附随する囃子などは、民間伝承によるものなので民俗音楽であるが、日本民族のものでもあるので民族音楽でもある。

学問の世界では「民族音楽学」という分野は確立している。「エスノミュジコロジー(ethnomusicology)」で、かつて「比較音楽学」から発展してきたものだ。一方、「民俗音楽学」という分野はまだない(はず…)。日本民俗音楽学会も設立され、学問としての「民俗音楽学」を目ざすが、今のところ「民俗音楽研究」の範疇である。

このように、二つのミンゾク音楽があって、ややこしい感じがするが、その成立やあり方を正しく把握したい。これらと関係あるのが「民俗学」と「民族学」。やはり意味するところも、研究対象も異なる。

ところで「民俗芸能」ということばがある。これも、かつて「郷土芸能」「郷土芸術」等々、さまざまな呼ばれ方を経て「民俗芸能(folkloric performing arts)」として、現在にいたる。一方で「民族芸能」と書いてあるものもあるが、現在のところこの呼称は存在しない。民族がもつ芸能というようなことなのだろうが、術語としてはない。
また打ち間違えで「無形民俗文化財」と書くべきところ、「無形民族文化財」になってるものも見かけるが、これもあり得ない。

わたくしが関心があるのは「民俗音楽」と「民俗芸能」。これから秋祭りシーズン。少しでも出かけたいな。
コメント
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