最近「奥南部民謡」がおもしろい。南部というと岩手県をパッとイメージするが、南部藩のなかでも、現在青森県になっている三戸、五戸、七戸、八戸一帯と下北半島の民謡を,特に「奥南部民謡」と呼んでいる。これは南部民謡の夏坂菊男師の提言によるものという。
「奥南部民謡」は、いわゆる「南部牛追唄」「沢内甚句」といった「南部民謡」と一応の区別をしている。そのため「南部○○○」といっても、岩手県民謡と書かれるのが「南部民謡」で、青森県民謡と書かれるのが「奥南部民謡」だ。
「奥南部民謡」は「南部民謡」とは趣を異にするが、青森県民謡の「津軽民謡」とも感じがちがう。ただ単に伝承地域がちがうといってしまえばそれまでだが、何とも独特な雰囲気をもっている。
そんな奥南部民謡でも、わたくしが好きなのが「南部あいや節」だ。「あいや節」といえば、「津軽あいや節」を思い出すが、随分雰囲気が違う。もっとも、現行の「新節・津軽あいや節」は洗練された感じだが、「旧節」はかなり素朴で、どちらかといえば「旧節」に似た感じではある。しかし、「旧節・津軽あいや節」よりもかなり明るい感じだ。
♪~アイヤーアイヤーヤーレ
間の山には お杉にお玉ヤーレ
お杉三味弾くヤーレ ハァー玉踊るヤーレ
なお「奥南部民謡」の三味線は、シロウトには真似のできないような、独特なリズム感である。「南部あいや節」は、いわゆる日本中の港町に流行した熊本の
牛深ハイヤ節に見られる、独特なスィング感であるが、三連符を含む独特なものだ。
こんなCDがある。

【青森奥南部民謡集】山本謙司 ビクターVICG-243
①南部牛方節
②八戸小唄
③南部あいや節
④お坊コ祝い唄
⑤南部馬方三下り
⑥南部じょんから節
⑦南部どどいつ
⑧南部銭吹唄
⑨南部追分
⑩南部田の草取り唄
⑪南部よされ節
⑫田名部おしまこ節
⑬南部にがた(荷方)節
⑭南部きのこ取り唄(ナントショウ節)
⑮南部甚句
⑯南部餅つき唄
山本謙司師といえば津軽民謡の第一人者であるが、実は夏坂菊男師に師事し、「奥南部民謡」も得意とする。このCDには、夏坂師が弾く三味線で「南部あいや節」が収録されている。いきいきとした面白い唄だ。
ところで、津軽には津軽三つ物とか
津軽五大民謡という分け方があるが、最近、南部七踊りというのを知った。
①南部郡々逸
②南部よされ節
③南部追分
④南部あいや節
⑤南部荷方節
⑥南部馬方三下り
⑦南部甚句
だそうだ。津軽の唄と共通する「あいや節」とか「よされ節」とかがあって面白い(ちなみにこの「よされ節」と「南部よしゃれ」とは別モノ)。
また南部にも「南部じょんがら節」がある。そんなに遠くもないのに、津軽と奥南部の唄のちがいはおもしろい。