はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

モノより思い出

2014年09月19日 | 海外旅行(旅の記録と話題)
 かつて某自動車メーカーがミニバンのCMで「モノより思い出」という印象深いキャッチコピーを生み出しましたね。自社の新製品の性能を殊更アピールするのではなく、製品を買うことによって生み出される新たな価値観を前面に押し出したのが、当時としては新鮮でした。

 某番組で「近年は女性達が高額なブランド品を買うより、体験にお金をかけるようになった」と言う新聞記事を取り上げた際、コメンテーターの中村うさぎ氏が、「ブランド品を買うと言う行為も、ひとつの体験だからね。高額のブランド品を買う時のドキドキ感、それを自分のモノにした時の高揚感を体験しているの。買ってみないと、どんな気持ちになるかなんて分からないでしょう?」「体験にお金をかける、と言っても、予め用意されたプログラムを体験するだけでしょう?大事なのは、自分で何をしようか考えること。レディメイドのものを体験したって、それをお金で買ったに過ぎない」と反論していました。

 ははは…相変わらず辛辣で鋭い、歯に衣着せぬ物言い。しかしまあ昨年の生死の境をさまよったところから、よくここまで回復しました。往年?のうさぎ節が伺えて、一ファンとしては嬉しいです。病は人からあらゆる力を奪ってしまう。復帰間もない頃のうさぎさんはろれつも回らず、コメントにも従来の冴えがありませんでした。最近漸く、以前の冴えが戻りつつあります。

 しかし、うさぎさんの論法からすると、今回の私の海外旅行なんて、まさしくレディメイド。旅行社が考えたお膳立てに乗っただけの旅行です。「そんな旅行の何が面白いの?」と言う、うさぎさんの声が聞こえてきそう…

 昨年の結婚25周年を記念した6泊8日のパリ滞在旅行は、飛行機とホテルだけをANAでオーダーし、空港ホテル間の送迎の手配に始まって、滞在中の旅程や、その為に必要なチケットの手配まで、一切合切自分でやりました。パリにある旅行社とのメールでのやりとりなどもあり、出発ギリギリまでちょっとしたトラブルでヒヤヒヤする場面もありましたが、それも旅の思い出の一部になっています。

 旅先でも、ちょっとした行き違いから夫とケンカしたり(←まあ、いつものことですが…)、毎日の昼夕食をどこでするか悩んだり、個人で動くことで感じる緊張感など、印象深いことが多々ありました。旅行は案外、予定通りに行かないところに面白さがあるものです。「トラベルはトラブル」と誰かが言ってましたっけ。それだけ鮮烈に記憶に残る。

 ただ、今回のようなレディメイドなツアーの中でも、小さな失敗は数知れず。あらゆる場所、場面で感じることも多々あり、全く面白味がないわけでもない。寧ろ、どう楽しむかは自分次第なんだと思いました。貧乏性な舌の持ち主である夫(←ヨーロッパでの外食費は日本とは比較にならないほど高いのは当たり前なのに、どこに行っても高いと文句を言います…hekomi)との食事で、個人旅行では毎回食事場所探しに苦労している私としては、食事の心配がないだけでも気楽で、その分、他のところに気を回すことができたのが嬉しかったです。ともあれ、何をするにしても、何かを得る代わりに何かを諦めるのは、よほどすべてのことに恵まれた人を除けば、当然のことかと。

 さらに、どちらかと言うと、こうしたレディメイドのツアーへの参加は、その後の個人旅行の下見的な意味合いもあり、各国、各都市の一部しか見られない物足りなさ感は、次の旅への大いなる動機付け(→次の旅の為に、日々、節約に励む?)となります。

 そして、冒頭の「モノより思い出」に言及すると、最近の旅では特に買い物を控えています(←現地の人からすれば、有り難くない旅行者でしょうか?)。買いたい物が全然ないと言うことではなく、これまでの自分の傾向として、旅の高揚感でつい買ってしまった物は、値段の高低に関係なく帰国後使わないことが多く、毎度のように夫に「無駄遣いが過ぎる!」と責められます。だから、「モノより思い出」を心に言い聞かせて、できるだけ現地の風景を愛で、人々と触れあい、現地の宝と言われるものをじっくり見るよう心がけています。

   写真は最終日のドナウ川ナイトクルーズで見た、ライトアップされたハンガリーの国会議事堂

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