私の母方の家系は長寿で、祖母は105歳の大往生だった。曾祖母も90歳を過ぎて亡くなったそうだ。母は今年の夏で80歳になる。
祖母は10人の子供を産み育て、90歳頃まで頭もしっかりしていたが、母は父を亡くしてから8年、最近になって痴呆の気が出て来た。先日、母からうちに掛かって来た電話で、そのことに気付いた。すぐさま、同居の弟に電話で確認した。
最近、弟が母を大学病院に連れて行き、脳の検査をしたところ、脳に萎縮は見られず、器質的には50代の若さだと言われたそうだ。しかし、精神に異常を来している。被害妄想で隣家の方をストーカー呼ばわりし、ご迷惑をおかけしたらしい。
現在は心療内科に通院し、精神安定剤と睡眠薬を処方して貰っているが、薬を飲みたがらず、弟を困らせているらしい。昔の母を知る娘としては、母が「自分」を失いつつあるのが哀しい。
父方の祖父や父は70代半ばで老人性痴ほう症を発症し、母は合計10年近く、ふたりを在宅介護した(祖父の介護は、当時中学生だった私も手伝った)。弟夫婦は結婚以来ずっと共働きなので、これまで家事の一切を母が担って来た。60歳過ぎまで食肉加工の会社で働いてもいたので、ずっと働き詰めの人生だった。
祖父が実業家として成功し、高校卒業時までは家にお手伝いさんもいたお嬢様育ちの母が辿った人生は、特に乱暴者(勤勉だが短気で喧嘩っ早い。病気で倒れるまでは大酒飲み)の父と結婚してからは順風満帆とは言えなかった。5人の子宝に恵まれたが、幼い娘を交通事故で亡くしてもいる。
今で言うところのDVに悩んだ人生だったと思う。父は痴呆症になった晩年も母に暴力を振るったらしい。父が亡くなって正直ホッとしたとも言っていた母だが、同時に喪失感も大きかったようで、父が亡くなって以後はどこか寂しげだった。
せめて打ち込める趣味のひとつやふたつあれば、何でも言い合える親しい友人が身近にいれば、母の現状もまた違ったのではないか?痴呆症の発症もここまで早まらなかったのではないか?
母は果たして幸せだったのだろうか…
悪いことは重なるもので、夫の両親も体調がすぐれず、現在ふたりとも入院中だ。私達夫婦は遠距離に住んでいるので、細かなことはどうしても地元に住む弟夫婦に頼ることになってしまうが、そうすると特に実質世話をしている弟の妻の負担をどうしたら減らせるか、夫は今、福岡に嫁いでいる妹と話し合っているところだ。
父の入院が長引けば、私が行くことも考えなければならないが、2月に帰ったばかりで、また空路行くとなると交通費の負担が大きい。今、ネットで遠距離介護について調べているが、人によっては、やはり交通費だけで月に10万円もの負担になっているケースもあった。それだけ大きな負担をして、子世代は自分達の老後資金の手当ては大丈夫なのだろうか?それとも、親の死後、遺産相続で相殺されることが前提なのか?
我が家の場合、私自身は父が亡くなった時、父には、両親と弟家族が住む自宅と土地ぐらいしか資産はなかったので、それを売り払ってまで現金化しろとはさすがに言えず、弟以外の姉妹は全員相続を放棄した。夫の両親もそれなりの蓄えがあるとは言え、それは両親自身の老後の為であり、遺産相続など端から期待出来ない。現に私達夫婦はこれまで、結婚する際にも、自宅を購入する際にも、親からの援助は一切受けておらず全て自力で賄って来た。
夫の両親に関しては今後ますます介護が必要になって来ると思うが、両親の住む長崎でも公立の介護施設は不足しており、入所はかなり難しい状況らしい。それ以前に父が介護ヘルパーを自宅に入れることさえ嫌がって、弟夫婦が説得して、最近になって漸く週に1回ヘルパーさんに来て貰えるようになったぐらいだ。両親は地元への拘りも強く、自宅を離れることは頑として聞き入れそうにない。暫く、この両親のことで頭を悩ませそうだ。
首都圏も同様に公立の介護施設は不足がちで入所は難しいらしいが、友人知人は比較的恵まれた人が多いのか、親御さんを私立の有料介護老人ホームに入所させているケースが多い。結局、身も蓋もない話だが、介護問題もお金が解決すると言うことなのだろうか。
教育を巡る問題にしても、介護問題にしても、実にさまざまな家庭の事情があり、格差を感じるご時世である(尤も、元々あった格差が、現在さまざまな形で露わになっただけなのかもしれない)。
祖母は10人の子供を産み育て、90歳頃まで頭もしっかりしていたが、母は父を亡くしてから8年、最近になって痴呆の気が出て来た。先日、母からうちに掛かって来た電話で、そのことに気付いた。すぐさま、同居の弟に電話で確認した。
最近、弟が母を大学病院に連れて行き、脳の検査をしたところ、脳に萎縮は見られず、器質的には50代の若さだと言われたそうだ。しかし、精神に異常を来している。被害妄想で隣家の方をストーカー呼ばわりし、ご迷惑をおかけしたらしい。
現在は心療内科に通院し、精神安定剤と睡眠薬を処方して貰っているが、薬を飲みたがらず、弟を困らせているらしい。昔の母を知る娘としては、母が「自分」を失いつつあるのが哀しい。
父方の祖父や父は70代半ばで老人性痴ほう症を発症し、母は合計10年近く、ふたりを在宅介護した(祖父の介護は、当時中学生だった私も手伝った)。弟夫婦は結婚以来ずっと共働きなので、これまで家事の一切を母が担って来た。60歳過ぎまで食肉加工の会社で働いてもいたので、ずっと働き詰めの人生だった。
祖父が実業家として成功し、高校卒業時までは家にお手伝いさんもいたお嬢様育ちの母が辿った人生は、特に乱暴者(勤勉だが短気で喧嘩っ早い。病気で倒れるまでは大酒飲み)の父と結婚してからは順風満帆とは言えなかった。5人の子宝に恵まれたが、幼い娘を交通事故で亡くしてもいる。
今で言うところのDVに悩んだ人生だったと思う。父は痴呆症になった晩年も母に暴力を振るったらしい。父が亡くなって正直ホッとしたとも言っていた母だが、同時に喪失感も大きかったようで、父が亡くなって以後はどこか寂しげだった。
せめて打ち込める趣味のひとつやふたつあれば、何でも言い合える親しい友人が身近にいれば、母の現状もまた違ったのではないか?痴呆症の発症もここまで早まらなかったのではないか?
母は果たして幸せだったのだろうか…
悪いことは重なるもので、夫の両親も体調がすぐれず、現在ふたりとも入院中だ。私達夫婦は遠距離に住んでいるので、細かなことはどうしても地元に住む弟夫婦に頼ることになってしまうが、そうすると特に実質世話をしている弟の妻の負担をどうしたら減らせるか、夫は今、福岡に嫁いでいる妹と話し合っているところだ。
父の入院が長引けば、私が行くことも考えなければならないが、2月に帰ったばかりで、また空路行くとなると交通費の負担が大きい。今、ネットで遠距離介護について調べているが、人によっては、やはり交通費だけで月に10万円もの負担になっているケースもあった。それだけ大きな負担をして、子世代は自分達の老後資金の手当ては大丈夫なのだろうか?それとも、親の死後、遺産相続で相殺されることが前提なのか?
我が家の場合、私自身は父が亡くなった時、父には、両親と弟家族が住む自宅と土地ぐらいしか資産はなかったので、それを売り払ってまで現金化しろとはさすがに言えず、弟以外の姉妹は全員相続を放棄した。夫の両親もそれなりの蓄えがあるとは言え、それは両親自身の老後の為であり、遺産相続など端から期待出来ない。現に私達夫婦はこれまで、結婚する際にも、自宅を購入する際にも、親からの援助は一切受けておらず全て自力で賄って来た。
夫の両親に関しては今後ますます介護が必要になって来ると思うが、両親の住む長崎でも公立の介護施設は不足しており、入所はかなり難しい状況らしい。それ以前に父が介護ヘルパーを自宅に入れることさえ嫌がって、弟夫婦が説得して、最近になって漸く週に1回ヘルパーさんに来て貰えるようになったぐらいだ。両親は地元への拘りも強く、自宅を離れることは頑として聞き入れそうにない。暫く、この両親のことで頭を悩ませそうだ。
首都圏も同様に公立の介護施設は不足がちで入所は難しいらしいが、友人知人は比較的恵まれた人が多いのか、親御さんを私立の有料介護老人ホームに入所させているケースが多い。結局、身も蓋もない話だが、介護問題もお金が解決すると言うことなのだろうか。
教育を巡る問題にしても、介護問題にしても、実にさまざまな家庭の事情があり、格差を感じるご時世である(尤も、元々あった格差が、現在さまざまな形で露わになっただけなのかもしれない)。