戻りたい

「明日は成人式だろう。仕事はいいから出席して来なさい。一生に一度だけしかない、世間から公に祝って貰える記念日だぞ」
　職場の上司は好意的に式に参加を勧めてくれたが、私は仕事を選んだ。生真面目過ぎた。何より仕事が優先だと頑な若者だった。
「成人式の日、ガキ大将仲間が集まって、あんなに楽しかったことなかったなあ」
　幼馴染らが思い出を語り合う表情は明るかった。欠席した立場では、その話題に乗りようがない。五人の同級生で成人式を欠席したのは私だけ。何ともバツが悪かった。
　現役の頃は思いもしなかった罪悪感が頭をよぎる。白髪頭になった仲間の顔を窺いながら、あの日へ無性に戻りたくなった。
「すみません。仕事を休ませてください。成人式に出席したいので。幼馴染たちとバカ騒ぎして、旧交を温めたいと思います」
「それはいい。大いに楽しんできなさい」
　上司とそんな会話を再現するために……！