こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ススキ

2016年09月14日 00時38分35秒 | 文芸
「ああー!なにしてんのよ」
 妻の素っ頓狂な声に、

私の手はハタと止まった。

庭の草刈り中だった。
「……ススキ、ススキを刈ってしまってる」
 妻が指し示す先にあるのは、

ススキの株。
昨年、

妻がホームセンターから買い求めてきたのを

丁寧に植え、

水やりも欠かさなかった。
「子供たちもいなくなって

静かになったんだから、

日本の情趣を楽しまなくっちゃ」
 そういう妻が最初に思いついたのは、

お月見だった。

庭先から空を眺めるのに

ぴったりの場所がある。

視界に建物など邪魔者がないので、

星空なんか絶景だ。

それでお月見の発想が。

当然ススキがなくては

絵にならない。
 妻が大切に育てたススキの葉を

きれいさっぱり刈り取ってしまったわたし。

うっかりミスでは済まされそうにない

妻の権幕だ。
「ああ、

虎刈りのススキでお月見?

なんで?」
 妻の毒がある皮肉を

十五夜を過ぎるまで聞かされる。

ミスの重みをヒシヒシと感じる。

コメント
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