こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ほ、ほ、ほ~たるこい~~♪

2023年06月12日 03時44分59秒 | 日記
雨が上がったのをチャンスと、
農業大学へ向かった。
有機栽培を学ぶ妻は、
公民館の講座と並行して、
農大で行われている、
県民のための特別講習を受講している。
その実習田に様子見である。
数日前には玉丘古墳の入り口傍にある、
公民館の方の実習田に足を向けていた。
勿論、私はただの同行者、
実習田で割り当てられた畝には、
夏野菜の苗が育っている。
雑草の始末と野菜苗の生育ぶりを
確認する妻は、
町育ちの農業初心者だが、
すっかり農業女子(?)然としている。
農家に生まれそだったわたしの感心が、
感動に変わるのも、
もうすぐかもしれない。

わが家の畑では、
収穫が続いている。
まだ有機農法が行き届かぬ圃場だけに、
化学肥料などたっぷりと与えている周辺の畑の、
収穫物とは比較するのもおこがましい出来だが、
それなりのものが収穫できたので嬉しい限りだ。
イチゴ、玉葱の後は、
キャベツ、ブロッコリー、ニンニク、
そしてジャガイモと続く。
ジャガイモは立派なもので、
周辺の畑で収穫されるものと遜色はない。
仕込んだぼかし肥料は、
徐々に効果を発揮しかかってきたように思う。

夜、玄関に出ると蛍が飛んだ。
そしてドアにくっ付いた。
すこし疲れたのだろう、光も消してしまった。
ゆっくり休んで、
また舞い上がればいいじゃないのと、
願いながら見やるわたしだった
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恩師

2023年06月12日 00時55分23秒 | 日記
深夜近電話のベルが鳴った。
思わず体が動きそうになる。
すぐ身を起こすのをやめた。
最近黒電話にかかってくるものはロクなものじゃない。
無視するようにしている。
ただ気が緩んでいるときは、
反射的に動いてしまう。
少し前までは必ず電話に出ていた。
当時は恩師がよくかけてきて下さっていた。
決まった時間ではなく早い遅いはなかった。
私の人生には欠かせない恩師の電話である。
時には間違いや迷惑電話なんてこともあったが、
恩師の電話だったらと、
必ずでてしまうという、
もはや習性になってしまっていた。
当時の先生はかなりのご高齢だったが、
わたしには昔と変わらぬイメージのままだった。
コロナが騒がしくなったころから先生の電話はぴたりと止まった。
90半ばの先生を心配して、
こちらから電話をしてみたが、
全くつながらなかった。
ひとり暮らしの先生の現状を教えてくれたのは、
古い友人だった。
高齢者施設に入られたという悲しい事情だった。
コロナで面会も叶わぬまま、
先生は逝去されたのである。
以来、電話に出るのを控えるようにするが、
いきなりの電話のベルには、
(先生!)と反応してしまうのだ。

その先生との最後の交流になった日々を記録した、
原稿がでてきた。
先生の面影を頭に浮かべながら読んでしまったのだ。


『恩師』

真夜中の電話。すぐ鳴り止む。もう一度鳴れば、迷わず受話器を取る。続けて二度呼び出しがあれば、迷惑電話ではない。
「もしもし、齋藤くん?」
 やっぱり先生だった。もう九十なのに、声は相変わらず若い。
「見たよ。頑張ってるじゃないの」
 新聞の投稿欄に私の名前があったらしい。高齢のいまも、毎日複数の新聞に目を通される先生。出会ったのは半世紀以上前。   
当時は小学校の先生。別に小学校で教えられたわけではない。社会人になってから遭遇した恩師である。
 高校を卒業後、就職した書店のお客さんだった先生。酷い人見知りだったが、店頭で働いていると、嫌でもお客さんと話をする。
「この本、読んでごらんよ。面白いから」
 先生がいきなり薦めた本は、井上ひさしの戯曲。小説やエッセーとは異質な戯曲、セリフで構成されていて、どうも読む気にならない。台詞ばかりはウンザリだが、働いていた書店のお得意さんの薦めである。ページを繰り一気に読んだ。どうしたことか、面白い!
「きみ、芝居をやってみないか?」
 戯曲に感動した直後で、頷いてしまった。
以来、先生主宰のアマチュア劇団で芝居作りに没頭。人見知りする性格なのに、よほど性が合ったのか、のめり込む一方だった。
「どこでもできるのが芝居。もう君の生きがいなのに。続けなかったたら絶対後悔するぞ」
 書店を辞め再就職で他市へ移る時、激励つきの念押しで送り出してくれた先生。
 先生の激励は効果があり、芝居作りを仕事と両立させ続けた。結局アマチュア劇団を旗揚げするほど、私の人生そのものになった。
「すごい、凄い!君の頑張りは花開いたな」
 旗揚げ公演に顔を見せた先生は我が事のように喜んだ。旗揚げに書いた初戯曲の上演、出来がいいはずはない。それでも満面笑みで褒めちぎる先生。褒められると嬉しい。調子に乗り、芝居作りに邁進した。
「君の戯曲、優しさがいっぱいだ。登場人物がいきいきと人間愛を訴えかけている。優しい君の性格だから、描けるんだ」
 先生の誉め言葉は私の人生最大の糧となる。 
芝居が生きがいになると、仕事もやりがいが生まれた。それでも永遠には続かない。四十年近いアマチュア劇団の活動に終止符を打つ時、先生はやはり笑顔で見送ってくれた。
「先生、昔と少しも変わってないなあ」
「そう見える?有難う。といっても声ぐらいじゃ、申し訳ないけどね」
 聞けば、三か月前にデンマークまで一人旅されたという先生。電話口で口あんぐり。
「君の活躍に負けてられないからね」
 予想もしない言葉だった。
「頑張る君と張り合うことが、今の僕には最高の幸せだよ」
恩師、いま私は迷うことなく言い切る。先生との一期一会、まだまだ続いていく。

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