難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

難聴者等の支援

2006年02月12日 00時50分18秒 | 福祉サービス
難聴者の支援は難しい。
理由は、難聴者が求めていることが十分分析されていないように思う。難聴であることが自分の意思決定、自分の行動を妨げているとわかっていても、難聴者自身が支援を求めない。どういう支援があるか、支援を求める権利があることすら、自覚されていない。
また、支援方法が成熟していない。本人にも周囲にも存在を気づかれないように、聞えをサポートする方法を身に付けた人がどれだけいるのだろう。

難聴者は情報障害者、コミュニケーション障害者だと言われている。難聴者には情報提供する、通訳等情報保障すれば事足りるのだろうか。
聞えが低下すれば、医者に行き、診察を受ける。医者は治療なり、投薬なり、臨床対応をする。あるいは補聴器店で補聴器を購入する。補聴器店は聴力を調べ、良い補聴器店なら聞えの補償を求める生活場面、生活の内容を問い、適切な補聴器を選定する。
しかし、聞えが衰えればどういう問題が発生するのか、どういう意味を持つのか、権利が侵害されていること、解決のために制度など社会資源をどう利用するかについて、学ぶ場がない。補聴器を使ってコミュニケーションする上で補聴器の限界、補聴器以外のコミュニケショーン方法も理解することが大事だ。言わば補聴器のリテラシーが必要なのだがこれを教える機関がないに等しい。

これらは、医療機関、コミュニケーション支援等の事業者、補聴器販売店、ケースワーカー、ソーシャルワーカーなどの社会資源がそれぞれの役割を自覚したネットワークが必要である。また、難聴は表に出にくい障害であり、社会に広く難聴者問題を理解した人がいなければ問題が顕在化しない。これらの社会資源と中途失聴・難聴者を結ぶ「難聴者等支援員」が必要である。

難聴者の地域生活における自立のための支援の内容は、全難聴は「四つのニーズ」にまとめている。一つは、補聴器と補聴援助システムの供給体制の確立。二つ目は、要約筆記等コミュニケーション支援の充実、三つ目がコミュニケーション方法の学習支援、読話や手話、補聴器装用方法などだ。ITリテラシーの学習支援も含まれる。四つ目が、中途失聴・難聴者を対象にした相談事業の確立だ。

一つ目は補聴器や機器の給付は、難聴者の立場での販売事業者や社会への啓発も行う必要がある。難聴者を単なる「顧客」としてではなく、コンシューマー教育とコンシューマー保護も必要だ。
二つ目の要約筆記者の養成、派遣はこれからの社会福祉サービスの担い手、権利擁護の担い手であることを自覚した要約筆記者の養成が原点になる。難聴者は組織化されにくい障害者なので、難聴者と接する要約筆記者は権利侵害に敏感でなければならない。
三つ目は、コミュニケーション方法の習得の過程で、中途失聴・難聴者を支援する制度や各種の知識を学び、難聴者としての権利意識の自覚も育てる。自らの障害のアピール方法も習得する。三つ目のその使いこなしの方法も社会への理解も含めてだ。
難聴者の自立のための環境整備と難聴者自身のエンパワメントの両方が必要なのである。

要約筆記者は、要約筆記という専門性を持った通訳を通じて、難聴者等の自立を支援する事業を担う。しかし、これまでの要約筆記者には、先に挙げた「難聴者等支援員」の役割も求められていたのではないか。これは、区別して支援することが重要だ。

ラビット 記