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アメフト観戦記や読書日記を綴っていましたが、最近は古墳(コフ)ニストとして覚醒中!横穴式石室をもつ古墳にハマっています。

ウルトラマンを創った男

2006-09-18 11:04:56 | 読書日記
 ウルトラマンを創った男 ~金城哲夫の生涯~
  山田 輝子著 朝日文庫
 今年はウルトラマン生誕40周年だそうだ。そしてそのウルトラマンをメインでシナリオをかいていたのが金城哲夫である。ウルトラマンというテレビ番組は考えてみれば恐ろしい番組で放映されて40年、いまだにファンを獲得し続けている。製作した側もこれだけ人気が持続するなんて想像もしていなかったと思う。そうしたウルトラシリーズの中でいまだに評価が高いのは「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」ではなかろうか。私自身は再放送で見ていた口なのだが、はじめはウルトラセブンに代表させるメカニックな部分が非常に気に入っていたのだが、年が長じるにつれ、ストーリー自体が単純にヒーローが怪獣を倒すだけのものではないことに気付くようになった。もっと深みのあるストーリーが描かれていた。時にはヒーローであるウルトラマン自体が歓迎されない存在となる場合すらあった。そういった部分がいまだに人気を維持させている理由のような気がする。そういった作品のシナリオを執筆していたのが金城哲夫である。
 金城哲夫の経歴を簡単に記すと、昭和13年沖縄県に生まれる。玉川大学を卒業後、シナリオライターとして円谷プロに入社。「ウルトラQ」や「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などの特撮番組のシナリオを書く。その後沖縄返還直前に退社。沖縄に帰り、テレビキャスターや沖縄海洋博のプロデューサーなどを務めた後、1976年自宅にて不慮の死を遂げた。
 本書は、その金城哲夫の高校の1年先輩である著者が、書き上げたノンフィクションである。ウルトラマンはまれびとではなかったかと著者は言う。「まれびと」とは、民俗学に出てくる概念で、遠く異界から来訪して、一時周囲に富をもたらした後、異界へ去っていく来訪神である。折口信夫が沖縄の伝承をもとに提唱した概念であったような気がする。
 本書によると、金城自体沖縄を意識した生涯を送っている。それはおそらく占領下に沖縄に過ごしたものでないとわからない何かなんだろう。特に沖縄から上京し大学を卒業したものにしかわからない自負があったんだろう。そのことが彼に悲劇をもたらすことになったんだと思う。
 ウルトラマンやウルトラセブンを見ていると時々、そういったライターの心情が色濃く出ていると思われる話が放映されている。例えばウルトラセブンの「ノンマルトからの使者」やウルトラマンの「まぼろしの雪山」なんてのはそんな気がする。「ノンマルトの使者」は、大人になっても十分鑑賞に堪えるストーリーだと思う。ノンマルトとははるかに昔から地球に住んでいる先住民であり、後から侵略してきた「地球人」の深く海底に追いやられた人類なのだという設定である。そして「地球人」が海底を開発するのを阻止しようとノンマルトは立ち上がるのだが、地球防衛軍により滅亡させられる。ウルトラセブンは葛藤を持ちながらも「地球人」の立場に立ってノンマルトと戦うことになるという話である。また作品全体が非常に暗く、単純にヒーローものとは言いがたい非常にメッセージ性を持った作品である。(時々ウルトラシリーズは、単純にヒーローものとは言い切れないストーリが出てくる先の話もそうだが、帰ってきたウルトラマンのムルチの話などはストレートに差別の問題が出てくる。作者は同じく沖縄出身の上原正三)
 彼の沖縄出身であるという意識があり、本土とは違うという意識があったからこそ生まれ出た作品であったような気がする。彼の本土とは違うという意識が人間になりきれないヒーローを作り上げれたのだと思う。そしてこの意識はウルトラマンよりのウルトラセブンにいっそう色濃く反映されることになる。
 ウルトラセブン終了後、しばらくして彼は沖縄に帰っていく。沖縄が日本に返還される。そこで彼は知識人として何か沖縄にとってなさなければならないという葛藤があったのだろう。しかし理想と現実の中、アルコール依存症とも言える状態となり、結局仕事場の屋根から足を滑らして転落し、脳挫傷のため死去してしまった。享年37歳。生き急いだともいえる一生であった。
 ただ、特撮ヒーローものというカテゴリーを作り、いまだにその影響を保っている彼の業績は色あせるものではないと思う。
 特撮を子ども騙しとしなかったからこそ、いまだに鑑賞に堪えるのだろうし、本書のように、その作品の裏側にいた人物を探るものが出てくるのだと思う。
 ウルトラマンとは何であったのか?まだ僕にはわからない。



 
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