「道頓堀川」
宮本 輝著 角川文庫
最近、ブログへの投稿を連発している。娘へのお勧め本10冊を選ぶにあたって、昔、読んだ本を読み返したりしているうちに、文章が書きたくなって投稿ということになっているのだろう。
今回、お勧めに入れようというのは、「泥の河・蛍川」の方だったのですが、書棚の横に並んでいたのが、本書であり、ちょっと寄り道してみようということで読み始める。
この本、学生の時買ったのだが、映画のイメージが先行してしまって、なんとなく途中で読むのをやめていた。その後、ずっと本棚で眠っていたのだが、およそ20年目にして、陽の目があたったということになる。
この歳になってみて、わかる部分もあり、一気読みでした。ベースは、主人公の邦彦と若くしてなくなった父親の物語であり、邦彦がアルバイトをしている喫茶店の主人である竹内とその息子政夫の親子の物語が絡む。主人公は邦彦であり、彼を中心に道頓堀川界隈で生活している人たちがさまざまな形絡んでくる。
主人公の父親は、さまざまな事業をしては失敗し、最後は愛人宅でなくなる。そういった特異な親子関係がある。このような親子関係は、僕も若干わかるところがあったりするので共感を覚えるところではある。
むしろ、竹内とその息子の関係の方が、魅力的ではある。父親とそれを乗り越えようとする息子の対決の物語がある。おそらくその後には二人の和解があるのだろう。
この小説の、全編を通して、親子というのがテーマであったのかなと思う。
そして、その舞台となっているのが、大阪の道頓堀川である。読んで思うのは、テレビ等で見られる、コミカライズされたステレオタイプの大阪ではない、大阪の風景がそこにある。
グリコなどの看板に代表されるぎらぎらした大阪ではない、しっとりとした生活の基盤としての大阪がそこにあると思う。
この小説の中にこんなセリフがある。
「戎橋の次が道頓堀橋・・・(略)・・・幸橋となるんやけど、その辺の橋に立って道頓堀をながめてると、人間にとって何が大望で、何が小望かがわかってくるなァ。」
近いうちに道頓堀川へ行ってながめてみたくなった。
それにしても、映画化したときには、松坂慶子がヌードになるで話題になったけど、小説には、最後の方にそれと思わせる場面はあるけど、そんなに重要なシーンではなかったのだがなあ。(まあ、松坂慶子の起用じたい、ちょっとイメージにあわない気がするんだけどね。)
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