●今日の一枚 290●
Beegie Adair
My Piano Romance
話題のピアニスト、ビージー・アデール。私はその名前すら知らなかったが、数ヶ月前だったろうか、購読している毎日新聞が文化欄で絶賛していたので、ちょっと興味があった。その後、宮城・利府ジャスコのCDショップでたまたま見かけて手に取ったが、帯の宣伝文句に購入すべきか考え込んでしまった。曰く、「うっとりJAZZYなエレガント・ピアノで甦る名曲たち」、「ロマンティック・ピアノの最高峰」である。……危険な作品だ。
ビージー・アデールという人は、72歳で日本デビューして話題の、1937年生まれの女性ベテランピアニストだ。「心地よい上質な音楽で人気の」アメリカのレーベル・グリーンヒルを代表するアーティストであり、ナッシュビルを拠点にセッションミュージシャンとして活動してきたのだそうだ。
かなりの時間迷った末、結局、私はこのアルバムを購入したのだが、アルバム帯の宣伝文句は真実だった。それはあくまで「うっとりJAZZY」な音楽であり、決してJAZZではない。エレガントという名の人畜無害な音楽だった。まあ、はっきりと悪口をいってしまえば、ただきれいなだけの音楽である。
とまあ否定的なことをいっているが、私がこのアルバムをそんなに嫌いかというとそうでもない。そもそも私は、身銭を切って購入したものを嫌いになどならないのだ。きれいなだけの人畜無害な音楽ではあるが、曲によってはなかなかにスウィングするし、曲の崩し方もけっして悪くはない。人生観を変えてしまうような、あるいは魂を揺さぶるような作品ではもちろんないが、あってこまるようなアルバムではない。④ In My Life を聴いた時だ。何かすごく懐かしい気がして、一緒に歌ってしまった。ビートルズの演奏を無性に聴きたい気がした。ビートルズの演奏とは全然違うのだけれど、何というか、曲の芯とでもいうべきものをしっかりとらえており、曲の本当の良さが抽出されているような気がした。
人畜無害ではあるが、決して毛嫌いすべき作品ではない。