王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

国家の品格論 第七章 下

2006-05-11 07:42:10 | 国家の品格論
 ようこそお越し下さいました 第七章 上 の続きです

先生が快気炎なので解説がまたまた長くなりました 何を語っていましたっけ?
そう 天才を生む条件でした
それでは天才を生む条件について日本はどうであろうか?
日本はこの三つの条件を見事に満たしている(爺の補足:20年後には尊敬に足る国であるかの指標)

まず、日本には美しい自然がある 第二に神仏や自然に跪く心がある 第三に役立つものや金銭を低く見る風土がある 武士道は正にそうである だから(金銭を低く見るから?の意であろう)「武士は食わねど高楊枝」で我慢していたわけだ
貧富と貴賎は無関係、とは今も日本に残る美風だ この様に「天才を生む土壌」の伝統は残っている
又江戸時代は漢字の識字率は世界最高であった 江戸の末期でだいたい50% 同時期ロンドンで20%程度だ 識字率が高いということは読書文化が発達していること 金儲けにはまったく役立たない読書に国民は楽しみを見出していた

(爺の疑問:江戸も初期を終われば読み書きソロバンは町人(職人でも)が10歳過ぎて世に立つ(親元離れて自立する)大切な教育であったはず 何も役に立たない読書と貶める必要は無い 徳川政権が古今東西の書物を発刊させなかっただけなのだから  まあ それを先生は役に立たないから良いと強調されている) 

明治維新後の日本の驚異的発展は(江戸期の)驚異的底力によるものだ
数学・文学・芸術活動をみればその国の底力が分かってしまう 「ここ10年経済発展が著しいからこれからはこの国が凄い」なんて言葉を聞かされても眉唾ものだ

「国際貢献」を考える
(爺の補足:ここでは先生が自衛隊のイラク派兵、対米追随姿勢、対応策等を語っています 論評するに耐えませんので割愛します) 
結論は国家の品格はそれ自体防衛力であり他国の侵略を回避するとの主旨でしょう
明治の開国で植民地にならなかったのは「品格ある国家」であったからである

そして先生は(今日本は)異常な国家であれと主張します
政治家が日本は「普通の国」になれというがそれは大抵「アメリカ見たいな国」に過ぎない 

先生の主張は日本は有史以来「異常な国」なのだからこれからもそれを続けるべきだちゅー事です
その異常さは五世紀から十五世紀に掛けて千年間に日本の文学がヨーロッパ文学を凌駕したり江戸期260年にわたり平和を実現し文化芸術の華を咲かせた 恐らく識字率も断然世界一であったろう 明治になると開国後近代化に乗り出し37年で世界第一のロシア陸軍をやっつけてしまい第二次大戦前には世界最大の海軍国になっていた

戦後は廃墟の中から立ち上がりあっという間に世界第二位の経済大国にのし上がった 最近では不況だが世界第二位の地位を保ち世界最大の債権国だ
十年以上不況が続いてもヨーロッパやアジアのどの一国と比べても比較にならないほど経済大国として存在している この資源も何も無い小さな島国で何故これほどの実績を残したのか、つまりこれほど異常であったのか考えないといけない
(その理由は)日本人が持っていた「国柄」が素晴らしいものだったからだ
世界に冠たる国柄を持っていたのである
この独自性をどうして守り続けるか我々の義務である


爺の感想:この「異常な国であれ」は今まで先生が否定し続けた金銭を卑しみ武士は食わねど高楊枝と全く異なる経済大国の話を褒め称える言葉でないのであろうか???
つまり江戸末期まで維持された「武士道精神」を犠牲にして「富国強兵」そしてその結果 大東亜戦争に敗北した後「産業立国」に狂奔した結果 表向き達成した美点だ

その裏で(先生の否定する)拝金主義・卑怯なふるまい・弱いものいじめ等などが(明治維新以来)138年にも渉って続いた結果ではないのか??

戦後国の防衛を米国に依存し軍事費の負担が軽い分、経済活動に集中し農村から集団就職で農業後継者を産業に狩り出しそれでも足らず安い給料で女性を職場に投入しついに子育ての基盤である「妻と母親の尊い立場」を壊してしまった 先生の称える美しい自然と武士道精神を叩き込む事が必要ならGDPや対外債権などは半分になってもかまわないと主張して先生の主旨が生きる筈なのですが「たかが経済」と批判するだけで具体的提言はありません

先生は最後の大事な纏めの章で言葉足らずかまたまた考え違いした 先生が褒め称える「情緒と形」を失う代償に非難して止まない金銭を手に入れたのですから まづ明治以降失った「情緒と形」を江戸末期まで戻しそのあとで「維持」し続けなければならない 大変な文化と社会改革と政治の変革を要する大作業であります


このあと先生は第一章で述べた欧米の論理に付きもう一度滅多切りします
その1:「神の見えざる手」は問題を解決しない
その2:新自由主義経済学の「異端性」による間違えた論理の出発点
その3:キリスト教原理主義の時代遅れであると
そして論理に代わるものとして「情緒と形」を述べた 具体的にはもののあわれなどの美しい情緒、そして武士道精神から来る慈愛、誠意、惻隠、名誉、卑怯を憎む等の形だ そして現代を荒廃に追い込んでいる自由と平等よりこれ等の日本固有のものの方が上位にあることを示さねばならない
世界に示すには口角泡を飛ばすのでなくまず日本人がそれを身に付けることである
それが「国家の品格」になる


品格ある国家の指標
「品格ある国家」の特徴とはどんなものであろうか? 「情緒と形」では具体的に目に見えにくい 指標を明示する
その1:独立不羈
国家の独立不羈 (つまり)自分の意思に従って行動のできる独立国という事だ
現代はアメリカの植民地状態でこの条件を満たさない
自給率を高めることも独立国として大切だ 又自分の国は自分で守るとの覚悟が必要である そして確固たる防衛力は隣国への侵略力にも転じかねないので(それを阻止する為にも)一層美しい情緒と形が必要なのだ

その2:高い道徳性
二番目は「高い道徳性」(を持つこと)である
日本人は戦国の昔から外国人により称えられている 昭和の初めの頃まで外国人が同様のことを記している
この高い道徳心のDNAが戦後(金銭市場主義により)傷つけられ痛められているこの高い道徳という国柄を保つ事(が必要で)その為に情緒と形を取り戻す事だ

その3:美しい田園
三番目は美しい田園(を保っている事)です 美しい田園が保たれている事は金銭至上主義に冒されていない(その様な情景があるのは)、美しい情緒がその国に存在する証拠だ イギリスでは誰でも田園の美しさに心を打たれる これでイギリス人が金銭至上主義に染まっていない事が分かる 実は彼らもかつてはそれに染まっていたが金銭が幸せをもたらさない事を知り一世紀前に卒業してしまった

美しい田園が保たれているという事は農民が泣いていないという事である 農民が安心して働いている証拠である 経済原理だけでなく祖国愛や惻隠の情が生きていることだ
欧米人にまで誉めそやされた田園は市場原理によりここ十数年ほどですっかり荒らされてしまった

その4:天才の輩出
学問、文化、芸術などの分野で連載が排出している事(が指標の4)である
役に立たない物や精神性を尊ぶ土壌、美の存在、跪く心などが必要である
しかし市場原理主義はこれらをずたずたにしている
日本は天才を生む土壌を失ってしまった
以上が品格ある国家の指標ですが先生はもう一度繰り返して田園があれ、役に立つことばかり追い求め、跪くのは金銭の前ばかり、田園が荒れれば情緒も危殆に瀕すると(嘆きます)
  
(爺の与太話:先生のお説に従って考えれば日本の現状は“国家の品格”を体現できる様な状態で無いと繰り返し記されております)


世界を救うのは日本人
(さあ先生のご主張の締めの部分になります)
日本は金銭至上主義を何とも思わぬ野卑な国とは、一線を画せ 国家の品格をひたすら守れ 経済的斜陽が一世紀続こうとたかが経済ではないか

(爺の与太話:先生はイギリスと日本を比べています かの国は400年にわたり7っの海を征服し世界中の富を国家に溜め込みました それと比べてはイギリスに失礼でしょう わが国はここ十年の不況で国債残高は200兆円以上増え、所得格差が問題になり、生活保護者数、就学補助児童の数などはうなぎ登りです 

たかが経済でなく庶民は衣食足りて礼節を知るのですからこの現象に心を痛めなければ武士道精神のある大学者と思えません 庶民は先生の「檄」ではお腹が一杯にならないのです)

さて先生は続けます 日本人が「情緒と型」を身につけ、品格ある国家を保つことは、(日本人の)人類に対する責務です ここ四世紀ほど世界を支配した欧米の教義はようやく破綻を見せ始めた 世界は途方にくれている この世界を本格的に救えるのは日本人しかいない
 

(爺の後知恵:以上が先生の主張の要約です 品格ある国家の指標を思い出せますか その4っはいずれも痛めつけられ他国の人に教えられるような余裕はありません 昭和20年8月の敗戦時に戻るのさえ至難でありましょう しかし「情緒と形」「形」の核である「武士道精神」に基づく教育 日本人による欧米人の救済 なんて聞いていると現状に不満、不安、閉塞感、無力感を感じてる方々に先生の提言は耳に快い事でしょう

しかし爺は考える 議論を尽くさず(或いは論理的に思考せず)♪俺の目を見ろ何にも言うなとか ♪義理と人情を秤に掛けりゃ義理が重たい男の世界 或いは桜の様に潔く散るとか言っても--欧米人に通じると思えない 又日本人が(先生の提言通り行動したとして)それを世界の人々が「品格のある国家」であると思ってくれるか否かは分からない
先生の提言は「藤原の断言ワールド」であるから)

さらに「国家の品格」総集編 に続く


写真は(武士は食わねど高)楊枝
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