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道路財源で職員宿舎建設

2008-01-25 22:35:25 | その他(国内)
さて、ここのところ芸能ネタなどの軟派なネタが続いたので、そろそろこのあたりで引き締めよう。

道路財源で職員宿舎=「法に基づき提供」-冬柴国交相
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 冬柴鉄三国土交通相は25日の閣議後記者会見で、揮発油税など道路特定財源の一部が道路整備に従事する同省職員用の宿舎建設費に充てられていたことを明らかにした。その上で、「国家公務員宿舎法に基づいて宿舎を提供している」と述べ、問題はないとの認識を示した。同省によると、2007年度で道路特定財源から約25億円が宿舎建設費に充てられていたという。
 同相はまた、道路特定財源から卓球のラケットといった職員のレクリエーション用具購入などに年間で約10万円が充てられていたことも明らかにし、「レクリエーションは国家公務員法に規定がある。同法に基づいていて過大なものではない」と理解を求めた。
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このニュース、実は元を質せばあの「年金ピンハネ」と同じ構造である。といっても、これだけでは(??)な方がほとんどだろう。

現在、国の予算制度は一般会計と特別会計からなる(この他、特殊法人や独立行政法人の予算などの「政府関係機関予算」というものもあるが、これはとりあえず除外して考える)。特別会計には、

(1)いわゆる「国営企業会計」(国有林野事業特別会計)
(2)巨額の資金が必要な公共事業を別枠で実施するための会計

の大きく分けて2つあり、このうち、現在「霞ヶ関埋蔵金」「年金ピンハネ」「道路特定財源・暫定税率問題」等で問題になっているのは後者である。この公共事業特別会計は、現在20ほどあると思うが、このうち、扱う予算額が巨額なため特に世間の関心を引きやすいのが道路整備特別会計、空港整備特別会計、港湾整備特別会計などの公共工事関係特会である。

一般会計では、歳入は財務省が所管(主管)し、歳出は各省庁が所管するが、特別会計はその事業を担当する省庁(道路整備なら国土交通省)が歳入・歳出とも所管する〔注1〕。このことが、予算制度の面で各公共事業が「聖域」化し、独立王国化するひとつの要因になっている。

さらに問題なのは、特別会計制度の下での予算の配分のされ方が、国民感情と全くかけ離れていることである。公共事業費とは直接その事業の執行に充てられる経費(工事費等)だけを指し、人件費、事務管理費などの一般経費は一般会計で手当てするべきだというのが国民感情であると思うが、驚くことに現在、国の特別会計制度はそうなっておらず、職員の人件費から会議費、出張旅費、果てはレクリエーションのための遊具購入費なども特別会計扱いとなっている。つまり、直接、公共事業を執行するための経費だけでなく、その公共事業を行う役所自体の維持までがすべて特別会計でまかなわれるようになっているのである。

ここから先の記述はやや専門的になるが、例えば職員の給与であれば「(所管)国土交通省所管 (組織)○○国道整備事務所 (会計)道路整備特別会計 (項)○○整備費 (目)職員基本給」…というふうに整理される(○○の部分はイメージ)。そして、「(会計)道路整備特別会計」の項目に該当する予算であれば、たとえ職員の人件費であっても特別会計から支出される…というからくりになっているのだ。

国民の納めた年金の掛金が、年金支払いに充当されないで保養施設の建設に使われたり、「道路建設や補修のための大切な経費は、みなさまのガソリン税からまかなわれています」などと国民向けに説明しながら、そのガソリン税が国土交通省職員の遊具購入費に使われていたりする問題の根源はここにある。特別会計予算が単に公共事業執行のための直接経費のみならず、およそ公共事業執行に伴って発生する諸々の間接費、果ては公共事業を担当する役所自体の維持費までをすべて含むという構造が、国民感情からあまりにもかけ離れているのだ。

それに、特別会計から給与をもらっていた事業所の官僚が、一般会計で予算が付いている本省に転勤したら、そのとたんに「一般会計」から給与をもらう立場になる、というのはどう考えても国民からは理解できないだろう。

予算を執行する国にしてみれば、このような制度にしておいた方が便利には違いない。1つの事業所には1つの予算体系という運用ができるからである。しかし、国民の立場から見て、このような運用のやり方は「予算の目的外使用」に見えてしまうし、受け入れがたいものだと思う。

「官僚の隠し財布」「霞ヶ関埋蔵金」「母屋でおかゆ、離れですき焼き」〔注2〕と評されるような、こうした特別会計制度は見直しする以外にない。少なくとも、一般管理経費を特別会計から切り離し、一般会計とするだけでも国民への予算の見え方は、かなり改善されるし、ピンハネなどと称される無駄遣いの解消にもつながっていくことだろう。

〔注1〕やや専門的になるが、予算制度上、「主管」「所管」という用語は厳密に使い分けがされている。「所管」とは、その予算の執行に関する事務を行うことはもとより、予算執行に関する事後の責任まですべてをその省庁が負うという場合に使われる用語である。これに対し、「主管」とはその予算の執行に関する事務はその省庁が行うが、予算執行に関する事後の責任は他の省庁が負うという場合に使われる。

〔注2〕「母屋でおかゆ、離れですき焼き」とは、誰が言い出したのか知らないが的確な表現だと思う。一般会計(母屋)ではお金がないないと言いながら節約しておかゆをすすっているのに、特別会計(離れ)では使い切れないほどの予算を抱え、すき焼きを食べて贅沢をしている、と言う意味である。予算過剰と予算不足が同居する現在の国の予算制度の矛盾をよく突いた言い回しである。

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