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尼崎JR脱線事故 死亡運転士の遺族が労災申請

2010-04-14 21:12:15 | 鉄道・公共交通/安全問題
尼崎JR脱線事故 死亡運転士の遺族が労災申請(神戸新聞)

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 尼崎JR脱線事故で、脱線した快速電車の高見隆二郎運転士=当時(23)=の遺族が、大阪市の天満労働基準監督署に労災を申請したことが関係者への取材で分かった。申請は5年が期限で、失効寸前での申請となる。これを受けて労基署は、認定の判断に向けて審査を始めた。


 審査では、運転士側と会社側の双方の過失を調べる。職場環境や安全対策に重大な過失が認められれば、JR西日本に給付額の30%を徴収するペナルティーが課せられる。運転士への懲罰的な日勤教育や、事故現場のカーブに自動列車停止装置(ATS)を設置しなかったことなどについて、労基署がどう判断するか注目される。

 関係者によると、遺族が申請したのは今年3月上旬で、遺族給付の支給を求めているという。

 労災認定には、勤務中の事故であることを認める会社側の証明書が必要で、JR西日本は「既に提出に応じた」としている。

 高見運転士をめぐっては、運転中に駅の停車位置を誤るオーバーランをしたため、車掌の無線報告に聞き入り、ブレーキ操作が遅れて事故を起こしたとして、兵庫県警が2008年9月、業務上過失致死傷容疑で書類送検した。神戸地検は09年7月、死亡により不起訴としている。
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高見運転士のご遺族にとっては、心中穏やかでない5年間、そして加害意識にさいなまれながら喪失感にも苦しみ続ける5年間だったに違いない。権利失効寸前でようやく申請を行った背景には、加害企業の社員がそんな権利の主張をして良いのかという葛藤もあったと想像する。そのような中で遺族が申請に踏み切ったのは、運転士がやはり加害企業社員の立場にありながらも被害者である事実は変わらない、と判断したのだ。当ブログはこれまで、運転士は被害者のひとりであり、その責任を問われるべき立場にないと主張してきたが、その思いは今も変わらない。

JR西日本はこれまで、尼崎事故の死者を「106人」とする立場、すなわち運転士を被害者に含めない立場を取ってきたが、それに若干の変化の兆しは見えるのではないか。なぜなら労働基準監督署への労災申請は、労災発生に至る経過と発生原因を申請書に記載した上で、事業主、つまりこの場合はJR西日本の署名・押印を必要とするからである。JR西日本が遺族から提出された申請書に捺印したということは、事実上その主張を認めたということに等しい。

(とはいえ、悪質な「労災隠し」企業の中には、従業員・遺族からの労災申請を握りつぶして申請させないケースもある。このような場合、労災申請は被災労働者の権利だから事業主(会社)の押印がないまま労基署に提出して、受理されることもままある。)

JR西日本に給付額の30%の課徴金が課せられるかどうかは、今後の労働局・労基署の判断を待たねばならないが、労災保険は、労働者を雇用する企業からの保険料により保険給付をまかなっているだけに、安全対策を怠っていた企業に対して甘い姿勢を取ることは、安全対策をきちんと講じ、災害を起こさずに保険料を負担している優良事業者から見れば到底理解は得られない。そういうわけで、安全対策を怠っている企業に対する「一罰百戒」の意味を込めた制裁措置が、倒産の恐れのないJRを見せしめにして発動される可能性は、それなりにあるといわなければならないだろう。

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