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JR不採用問題、ついに決着

2010-04-09 22:07:46 | 鉄道・公共交通/交通政策
JR不採用問題、23年ぶり決着 原告側、解決案を了承(北海道新聞)

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 1987年の国鉄分割・民営化に伴う、道内の国労組合員らのJR不採用問題で、与党3党と公明党の代表者は9日午前、政府と合意した解決案を組合員らに提示した。組合員らはおおむね了承し、午後に正式決定する。前原誠司国土交通相は同日夕、解決案を発表、JR不採用問題は23年ぶりに解決する。

 解決案のうち解決金は、旧国鉄や旧国鉄清算事業団の債権、債務を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)が、損害賠償などを求めて係争中の組合員ら原告約910人に対して、1人当たり平均2200万円、総額約200億円を支払う内容。

 組合員らが解決金とともに重視していた、JR北海道、九州などJR各社への200人程度の雇用については「政府がJRへの雇用に努力する」としたが、政府がJRによる採用を強制できないことから「人数が希望通り採用されることは保証できない」とした。

 4党が政府に提出した解決案に盛り込まれた雇用に際してのJRへの雇用助成金については、JRだけ優遇することになるとの考えから、削除された。組合員らに対しては現在、係争中の裁判を取り下げることを求めた。

 解決案をめぐって組合員らは、JR各社への雇用についてさらに踏み込んだ表現を求めていた。しかし、厳しい雇用情勢に加え、民主党政権下の今回を逃すと解決が難しくなるなどの判断から、受け入れに踏み切ったとみられる。
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JR不採用、組合側が解決案を受諾 23年ぶり決着へ(朝日新聞)

 1987年の国鉄分割・民営化に反対した国鉄労働組合(国労)の組合員ら1047人がJRに不採用となった問題で、与党3党と公明党の実務者は9日午前、組合員側に政治解決案を提示した。1人平均約2200万円の和解金などを支払うとともに、JR各社に雇用への協力を要請することが柱で、組合員側は受け入れることを決めた。

 和解金などの総額は約200億円。組合員側は同日、関係団体の代表者が集まり、解決案を受け入れるかどうか協議した。所属組合による「採用差別」が問われた長年の懸案が、23年ぶりに解決することになった。

 4党は3月18日、和解金を平均約2400万円とする解決案を政府に提出。その際、前原誠司国土交通相は前向きな姿勢を示していたが、政府内から異論が出て200万円減額された。和解金などは、旧国鉄職員の年金支払いなどに充てられている独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の特別会計「特例業務勘定」から支出する。

 雇用について当初の4党案は、JR北海道、九州を中心に200人程度の採用を要請するとしていた。この日示された解決案では「政府はJRへの雇用について努力する。ただし、JRによる採用を強制することはできない」として、人数を明示しなかった。雇用について、JR各社は拒否する姿勢を変えていない。

 この問題では、国鉄清算事業団が90年に1047人を解雇し、業務を引き継いだ支援機構を相手に、組合員側が損害賠償などを求めて訴訟を続けている。
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1987年以来、未解決のまま続いてきたこの問題に、ついに解決の時が来た。国鉄分割・民営化以来、片時も忘れることなくこの問題をウォッチしてきた私としては、感慨無量である。

ただ、JRの強い抵抗で、雇用に関する表現が後退したことは懸念材料といえる。この点について、被解雇者を取りまとめる当事者団体のひとつ、国鉄闘争に勝利する共闘会議は、「引き続き雇用の確保を強く求めていく」としているが、当然だろう。

北海道新聞の記事は、厳しい雇用情勢に触れている。確かに北海道・九州など、被解雇者が多くいる地域は雇用情勢が厳しい地域である(というより、もともと雇用情勢が厳しい地域だからこそ再就職あっせんがうまくいかなかったという言い方もできる)。だがJR本州3社は数年連続で千人規模の新規採用を行っている。要はやる気の問題だけだ。

当ブログ管理人が関係筋から入手した情報によれば、九州では被解雇者の雇用を模索する動きがあるという。またJR西日本も和解協議に応じると表明しており、この協議の中で再雇用の動きが出てくる可能性もないではない。ただ、厳しいのは北海道の被解雇者で、北海道、東日本、貨物が揃って「採用拒否」を表明している。ここをどう突破するかが今後の課題だ。

当ブログは、JR西日本・九州の両社に対し、被解雇者を雇用するよう要求する。特に、JR西日本は、JR連合の調査によれば、旧国鉄最終年度と比べ42%もの人員削減を行っている。もちろんこの数字はJR6社で最大である。そして、これだけ大きな人員削減を行ったJR西日本で、信楽高原鉄道事故(1991年)、尼崎事故(2005年)と2度も大きな事故が発生していることは偶然ではない。

安全対策の意味からも、行き過ぎた合理化を修正するために要員増強が必要である。23年間も現場を離れていた者を今さら戻してどうする、という声があることを当ブログは承知しているが、鉄道のようなインフラ型産業の現場の姿は他産業ほど大きくは変わらないのであり、彼らが力になれる部分はそれなりにあるのではないだろうか。

2000年、自民・保守・公明・社民4党が国労に対して国鉄改革の承認を迫る「4党合意」を突きつけ、この受け入れを巡って国労全国大会が厳しい内部対立の末、流会になるなどの激動があった。この時、4党合意の受け入れに反対し、国労全国大会を流会させた勢力が中心となって起こした訴訟が、朝日新聞の記事にある「支援機構を相手取った訴訟」というわけなのだが、仮にこの訴訟が起きず、国労が内部対立もないまま粛々と4党合意を受け入れていたら、今頃彼らは路頭に迷っていただろう。何しろこの時、4党合意で示されていた解決金の額は、1人あたりたったの80万円だったのだ。

それから10年の時を経て、鉄道・運輸機構を相手取った裁判では、1審・2審ともに1人あたり550万円が認められ、さらに今回の政治解決で1人あたり2200万円になったことは特筆すべきことだ。もちろん、解雇されなければ彼らの生涯賃金は2億~3億にはなったであろうから、たったの1割という見方もあり得るだろう。しかし、80万円からよくぞ2200万円までたどり着いたとも思うのである。

もし、今回、1027名の被解雇者が訴訟を取り下げ和解に応じた場合、鉄道・運輸機構を相手取った裁判は動労千葉関係が残るのみとなる。彼らには彼らのやり方があるから、それぞれの立場で信じる道を進んでいったらいいと思う。当ブログとしては、引き続き残る訴訟を注視していきたい。

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